メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

長田育恵と岡室美奈子が語る、演劇の未来に必要な「保存」と「創造」

2026.1.29

舞台芸術アーカイブ講座 2025

#PR #STAGE

記録やデータの長期的保存を意味する「アーカイブ」。舞台芸術においてはコロナ禍以降、舞台映像の配信が増えるなど、記録の活用はますます多様になっている。公演映像や、戯曲、ポスターやフライヤー、チケット、衣装、舞台装置図、舞台写真、劇評……。その舞台がどんなものであったか、記憶や想像を「知」に換える資料は実に多岐に渡る。それらは、まだ観ぬ新たな舞台作品の創作のきっかけになることもあれば、時にはジャンルやメディアを横断し、映画やドラマに活用されることも。かくいう私も戯曲や公演映像など多くのアーカイブに支えられながら、新たな舞台作品にまつわる取材 / 執筆活動を行なっている一人である。

単なる過去の記録 / 保存ではなく、未来の想像 / 創造のタネにもなり得るアーカイブ。その意義や可能性を紐解き、実践と活用に繋げていくための講座『舞台芸術アーカイブ講座 2025』がリアルタイムとオンデマンドで展開されるという。オンデマンド受講募集に際して、「戯曲デジタルアーカイブ」の立ち上げに携わり、劇作家 / 脚本家としても幅広く活躍している長田育恵と、一般社団法人EPAD(舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業)理事で早稲田大学教授の岡室美奈子の対談を実施。アーカイブがなぜ必要なのか、どのように役に立つのか、実践者としての感触も踏まえて話を聞いた。

朝ドラ『らんまん』はアーカイブを巡る物語?

―長きにわたって舞台芸術を中心とした作品に携わる中でお2人が「アーカイブ」の重要さを感じるのはどんな時でしょうか? 

長田:これまで多くの評伝劇(※)を書いてきたのですが、どの作品も沢山の資料に当たって執筆を進めました。演劇の戯曲でもドラマの脚本でも重要なのは、「その時代を生きている人たちの生活を描く」ということなんですよね。だから、登場人物にまつわる資料だけでなく、当時の作家が残した日記や手記、芝居の台本などにも当たり、やりとりや空気感を通じて時代や生活の様相を見ます。少し極端な例ですが、第1作目の『ゴジラ』(1954年)には電車に乗っている市民がゴジラを噂しながら「(せっかく長崎から逃げてきたのに)やーね。原子マグロだ放射能雨だ。その上今度はゴジラと来たわ」と言うシーンがあって……。私はそこにすごく衝撃を受けたんですよね。

※井上ひさしなどに代表される、歴史上の人物や、実在する人物をモデルとして脚色する演劇のジャンル。

長田育恵(おさだ いくえ)
劇作家・脚本家。東京生まれ。早稲田大学第一文学部文芸専修卒。2007年に日本劇作家協会・戯曲セミナーに参加し、翌年より井上ひさし氏に師事。09年、劇団「てがみ座」を旗揚げ。15 年、てがみ座『地を渡る舟』にて文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞。16年に演劇ユニット「る・ばる」の『蜜柑とユウウツ~茨木のり子異聞~』にて鶴屋南北戯曲賞、18年に劇団青年座『砂塵のニケ』、てがみ座『海越えの花たち』、PARCO PRODUCE『豊饒の海』にて紀伊國屋演劇賞個人賞、2020年に世田谷パブリックシアター『現代能楽集X『幸福論』̃能「道成寺」「隅田川」より』にて読売演劇大賞選考委員特別賞を受賞。近年はテレビドラマなど映像作品の脚本も執筆しており、23年には NHK 連続テレビ小説「らんまん」の脚本にて令和5年度文化庁芸術選奨新人賞、第32回橋田賞(作品賞)を受賞。

岡室:最初の『ゴジラ』には戦後当時の記憶や感触が込められていますよね。

長田:1950年代の人々の肉体や言葉の捉え方は今の私たちのそれとは全く違うし、あの台詞は今の時代には絶対書けないものですよね。映画やドラマや舞台芸術の作品にはそんな風に「その時代の人々がどんな皮膚感覚で生きていたか」がアーカイブされていて、私が脚本を担当したNHK朝ドラ『らんまん』(2023年)にも同じことが言えると思っています。

―『らんまん』は神木隆之介さん演じる主人公・槙野万太郎が生きた幕末から昭和初期までを描いたドラマですが、そこには、令和という現代を生きる私たちの皮膚感覚もアーカイブされている、と。

長田:『らんまん』は長引いたコロナ禍が明けた最初の春に放送が開始したんですよ。だから、奇想天外な外連味よりも「足もとの自然や目の前の四季を慈しむ」とか「もう一度誰かとささやかに繋がりあうところからネットワークを広げていこう」というメッセージ性を込めています。穏やかな印象が挙げられる作品ですが、言うなれば、コロナ禍へのカウンターでもあって。作品が生まれるまでには、前段にどんな時代があり、それを受けて何が求められ、作られているか、そういった背景があります。だから、その時代の人々を捉える上でも当時の作品が手がかりになるし、自分の作品もまた後世にそのように残ったらいいなと思います。

岡室:長田さん、早速興味深いお話をありがとうございます。私がかねてより考えてきた「ドーナツとしての舞台芸術アーカイブ」はまさにそういうことなんですよ。

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS