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分かり合えなくても、まずは相手の言葉を120%の気持ちで聞くことが繋がりへの一歩
ー作品を拝見する中で、香里と健流が知り合った当初、細やかに相手を気遣い合う様子が印象的だったのですが、お2人の役の中での関係性は、どのようにつくっていかれたのでしょう?
福地:事前に本読みをしました。自分とは別の役の台詞を読んでみたり、ときには竹馬さんも混ざって読んでみたりと、いろんなやり方での本読みでした。
寛一郎:物語としては健流が死んだあとの話じゃないですか。だからすごく安心感はあるけど、お互いあんまりよく知らないという、なんとも言えない関係性のままいた気はしますね。僕より福地さんと中川さんが会話することの方が多かっただろうし、僕は最初からどこかもういない人のような感覚だったかもしれない。

福地:そうですね。香里が一つひとつのコミュニケーションにすごく慎重だということを、健流との寄り添い合いの中でも感じます。本読みのときに、香里を表すキーワードの1つとして「慎重さ」みたいなものを感じていて。それが一歩一歩地面をしっかり踏んでいくような香里の喋り方に繋がっている気がして、そういう温度感が、2人の間にもあったと思います。大切だからこそ慎重に寄り添い合っていた2人だから、近くにいるけどよく知らないという感じがするのかなと、話を聞いていて思いました。

ー香里と健流は「わからなさ」を通じて繋がっていたのではないかというお話が先ほど寛一郎さんからありましたが、お2人自身は、身近な人のわからなさに対して、どのように向き合っていきたいと思われていますか。
福地:人の話はひとまず120%の気持ちで聞いてみると決めておくと、喋っている途中に跳ね返すようなことはしなくなるのかなと思います。
寛一郎:僕はそもそも人は違うものだから、いい意味でも悪い意味でも期待しない。違う考え方だなと思っても、「そうなんだ」という感じで、「一緒だと思ってたのにどうして」とはならないんです。
福地:私にもきっとそういう部分があって、やっぱり怖さがあるから、信じることにすごく慎重にもなるんです。120%の気持ちで聞くということは、「全部信じるよ」ということではなくて、一旦聞いてみないと、人が本当に言いたいことが入って来ない。今はそれが理解できなくても、一度聞いたことはきっと体のどこかには残っているから、いつかわかるかもしれないという希望を持って、120%の気持ちで聞くという感じがあります。信じたい気持ちはあるけど、信じられるかどうかは別ということのような気もする。

寛一郎:僕の場合は、臆病なんだと思うんです。どこか予防線を張っているというか、120%で体当たりできないんですよ。裏切られるかもしれないという前提でいれば、そこまで傷を負わなくて済むじゃないですか。だからあんまり期待もしていないし、裏切られても、「ああ、やっぱり俺の予想当たってたでしょ」って言えちゃう状況をつくっているなとは思います。福地さんにもそういう部分があるということは、今会話をしていて初めて知ったけど、共通している部分がありそうだなという感覚は、節々であった気がします。
福地:自分のことを認めるには、相手のことを認めてからじゃないと、あんまり進んでいかない気がしています。それは自分の実生活でも感じるし、今回の脚本を読んでいても、そういうことが前に出てきた感覚があって。人を認めてあげることで自分も救われていて、だから香里も立っていることができたんだと思います。
『そこにきみはいて』

出演:福地桃⼦
寛⼀郎 中川⿓太郎
兒⽟遥 遊屋慎太郎 緒形敦 ⻑友郁真
川島鈴遥 諫早幸作 ⽥中奈⽉ 拾⽊健太 久藤今⽇⼦
朝倉あき/筒井真理⼦
脚本・監督:⽵⾺靖具
エグゼクティブ・プロデューサー:本間憲、河野正⼈
企画・プロデュース:菊地陽介 ラインプロデューサー:本⽥七海
原案:中川⿓太郎
⾳楽:冥丁
撮影:⼤内泰 録⾳・整⾳:伊⾖⽥廉明 美術:畠智哉 助監督:平波亘
ヘアメイク:藤原玲⼦ スタイリスト:⽯橋万⾥ 制作担当:中島正志
⾳響効果:内⽥雅⺒ 編集:⼭崎梓 スチール:⽔津惣⼀郎
宣伝プロデューサー:伊藤敦⼦ 宣伝美術:⽯井勇⼀ 予告編制作:松⽥朋⼦
制作プロダクション:レプロエンタテインメント 宣伝:ミラクルヴォイス
配給:⽇活
©「そこにきみはいて」製作委員会