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シンプルなのに、なぜその言葉は情感豊かに響くのか
―詩人としての曽我部恵一の特徴とはどういうところにあると思われますか。
桜井:まず、叙情というか情感ですよね。圧倒的な情感。しかも、牧歌的でもなく、どこかヒリヒリもしている。もうひとつは意味を限定させない豊かさ。言葉って本来、意味を限定していくものじゃないですか。けれど、限定することをはぐらかしていく深みというか、豊かさみたいなものを感じます。
世界には簡単に言い切れないことがたくさんあるわけですよね。曽我部くんは「世界にはたやすく限定できない奥深さがある」ということを、世界や意味を限定するための「言葉」というものを使いながら言ってるような気がする。



―曽我部さんの言葉はシンプルですけど、そこに多様なイメージと意味が含まれている感じがしますよね。
桜井:あとは、何とも言えない叙情ですね。でも、叙情を感じるのは、曽我部くんの声と音楽があるからかもしれない。
音楽の話から少し離れるけど、「この人、苦手だな」っていう人が言うことと、尊敬してる親戚のおじさんが言う言葉がたとえ同じだったとしても、まったく違って聞こえるじゃないですか。音楽はそういう部分を担っていると僕は思っているんです。音楽がすごく気持ちよくて、声が好きだと、その人のことを信用しちゃうし、ちょっとしたワンフレーズがめっちゃ心に響くんですよね。
―曽我部さんのあの声で歌われるからこそ、こちらの心に入ってくるというか。
桜井:そうそう。曽我部くんの声で歌われるからこそ、その言葉がすごく情感豊かに聞こえてくる。今回の展示では音楽から切り離して言葉だけに向き合ったわけで、そこが面白かったですね。