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「豪華ゲストが今回のアレンジをポジティブに捉えて、信頼してくれた」。
―実は攻めているバンドなんだということですね。次は豪華すぎる出演者について聞きたいです。まず、アイナ・ジ・エンドからお願いします。彼女は2年連続での出演ですよね。
石若:皆さん観ての通りだと思いますけど、彼女は会場ごと空気をわしづかみにして持っていくそのパワーがすごくて。この間、去年の『Jazz Not Only Jazz』でのライブも映画館で観ましたけど、なぜか涙が溢れてきました。そういうことって最近なかったなと思って。彼女は歳も近いし、歌声もすごく好きだから、今年も出演してくれて本当に嬉しかったです。
去年と同じく”私の真心”を演奏しましたが、去年とは違う感覚がありました。それは彼女の音楽的な成長だったり、音楽の表現の変化や、いろんな影響があると思いますけど、そういうのを感じられたのもよかったですね。

―アイナ・ジ・エンドのパートで、特に印象的だったメンバーはいますか?
石若:マーティのベースがよかったですね。”革命道中”の最初のベースイントロがかっこよかった。このイベントのためにリハをしていたときに、サウンドチェックでマーティが”革命道中”のイントロの部分をアルペジオで弾いていて。何気なく弾いていたと思うんですけど、実際に本番でもやってみたらすごくいいアレンジになりました。あと、翔太がところどころで差し込んでくる難解なボイシングも際立っていましたね。
―なるほど。次は岡村靖幸ですね。
石若:僕らの周りのスタッフやミュージシャンにも、岡村さんのことが好きな人が多くて、「岡村さんゲストでやるの!?」みたいな周りからの反響はすごかったです。最初に岡村さんと出会ったのは、アイナ・ジ・エンドのレコーディングだったんですけど、そのときは一緒に演奏できていなくて、今回やっと岡村さんと共演できたんですよ。
岡村さんは、ステージに立ったときの「バンドを担いでる」「引き連れていく」ような強さを感じました。まさに「バンドを鼓舞するレジェンド」みたいな感じですよね。

―特にベースを煽りまくっていたのは印象的でした。
石若:「ベース! ベース! 」って言ってましたもんね。ああいうの最近感じてなかったので、すごく嬉しかったです。自分はそういう煽られる瞬間が好きなんでしょうね。日野皓正さんと一緒に演奏するときも「うわー、ついていきます!」っていう気持ちになるんです。今回もお客さんがそれを感じ取ってくれただろうし、岡村さんのキャラも引き出せたのかなと思いました。岡村さんとはまた何かやりたいですね。
―岡村さんのステージでは、バンドで印象に残った演奏はありましたか?
石若:松丸契のサックスソロがよかったです。ファンキーなビートの上で契のサックスが炸裂する、ああいうシーンってこれまであまりなかったんじゃないですかね。

―よく共演している仲間って感じだと思いますけども、KID FRESINOについても聞かせてください。
石若:FRESINOはこの数年、ライブに対する向き合い方が変化してきているなと感じます。僕は彼のサポートをやっていて、たまにANSWER TO REMEMBERに来てラップしてくれたりもするけど、今回は彼の楽曲を中心に、彼の時間で演奏するという形でした。その中で、「背負ってるな」というのを強く感じました。ヒップポップの世界についていろいろ考えたうえでこの場に来て、一緒にやってくれてるんだろうなというのも一緒にやってて伝わってきましたし、すごく濃厚な時間でしたね。

―KID FRESINOが出る場面があると、スリリングな空気になって、バンドにもいい緊張感が生まれてましたよね。
石若:そうだと思います。
―中村佳穂はどうでしたか? こちらも「石若ファミリー」って感じがしますけど。
石若:佳穂、すごかったですね。佳穂は同い年なんですけど、10年前ぐらいに知り合ってからずっと刺激をもらっています。最近は世界中のミュージシャンと積極的にコラボしていると思うんですけど、そこで培ったものが今回特に感じられたと思います。どんどんオープンな音楽になっていて、こちらがやっていることに対する耳も変化しているのかなと感じましたね。

石若:彼女自身、どんどんストロングなミュージシャンになっているし、これから先どんな風になっちゃうんだろうとか考えたりしますね。ああいう人って他にいないですよね。世界中見ても唯一無二のアーティストだと思います。
―そして、近年一緒にやっている椎名林檎はどうでしたか?
石若:林檎さんのライブでサポートをすることになって3年目になります。普段の林檎さんのライブはショーアップされたステージなので、ジャズのバンドにゲストでパッと来て、何曲か演奏するというのは初めてでした。だからリハもちゃんとやったんですけど、やっぱり一緒に楽しめたことがすごく嬉しかったです。
普段はステージ上でも距離があって、離れた場所で演奏してて、林檎さんがあそこにいるなとか、こっちにいるなって感じですけど、今回はドラムを叩いている目の前に林檎さんがいて、たまにちらっと目が合ったりするので、一緒にやっているなっていうのが特に感じられました。
あと、この企画自体を林檎さんが面白がってくれてたのがすごく嬉しかったです。それに加えて、もう、音が良すぎて……いつもはイヤモニで歌声を聴いて演奏をしてますけど、今回は転がし(モニタースピーカー)から聴こえる林檎さんの声が圧倒的すぎました。後で本人にLINEしちゃったんですけど、それくらいすごかったなと。

―椎名林檎のパートで印象的な部分はありますか?
石若:東京事変の”能動的3分間”を、僕らなりのアレンジにしてみたんです。ああいうビートとサウンドの中で林檎さんが歌うっていうのをずっとやってみたいなと思っていたんです。だから、今回それが実現できて良かったし、もっと詰めたらもっと面白いことになるかなとか、次なる可能性も感じましたね。

石若:岡村さんもそうですけど、林檎さんも僕らの演奏やアレンジをポジティブに捉えてくれたなと思います。「ここはこうです」「ここはこうしますね」って僕らが提案したことに対して、すごく信頼してくれたのを感じました。