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誰のための公共か? 登壇者たちが語る、音楽と公共支援の理想のカタチ
2組の発表を終え、トークセッションは後半に突入。登壇者たちは、それぞれの事例に対する感想を交わしながら、公共施設のあり方や、音楽や文化を守り育むことについてクロストークを行った。
柳樂は後藤らの活動について、「若手ミュージシャンの資金不足が深刻な中、著名なアーティストがその問題に取り組むのは、社会に大きなインパクトを与える。日本の音楽シーンを盛り上げるには、人が集まり交流が生まれる“場”が必要。滞在型スタジオとして複合的な施設となるMUSIC inn Fujiedaは、今求められる理想的な拠点だと思う」と語った。後藤は柳樂が紹介した海外の事例を受け、「若い世代を支えていくためには資金面の課題は避けて通れず、仲間内の相互扶助だけでは限界がある。子どもたちに“もっと自由でいいんだよ”と伝えて、型にはまらない創造的表現を引き出す音楽教育がこれから重要だと思います」とし、音楽の文化的価値や公共的役割を社会に訴えて、公共支援への理解を広げていく必要性があると語った。

元藤枝市の職員で、公民どちらの立場も経験してきた小林は、「音楽には大きな公共性があり、日本の伝統芸能が国によって保護されているように、より身近なポップミュージックにも支援の土壌が必要だと思います。スタジオをつくることで直接恩恵を受けるのは安く利用できるミュージシャンかもしれませんが、実際の受益者は、そこで生まれた音楽や文化を楽しむリスナーではないでしょうか」と投げかけた。

最後に、トークセッションのテーマでもあった、これからの「新しいハコモノのかたち」について、出口が登壇者3名に意見を求めた。
柳樂は、「子どもたちが自由に音を出したり創作したりできる場が、地域に増えるといいなと思います。そうした場があることで、自然に地域や文化に還元され、新しい価値が生まれる機運が高まるんじゃないでしょうか」と、地域への想いを語った。続いて小林は、「公共施設の役割を短期的な成果だけで測らず、長いスパンで考えたいなと思います。資本主義だけでは支えきれない文化的 / 社会的価値を生み出す活動を、みんなで協力して継続していくことが、僕たちの目指す公共です」と、理想とする公共の姿を示した。後藤は、「新たにハコモノをつくるよりも、いまあるものをどう活用するか、どう新しい魅力を付加できるかを考えることが大事。ちゃんとまちを歩いて足元を見つめ直すことが、斜陽に向かってる日本がもう一度浮上するチャンスじゃないですかね」と、今ある資源を見つめ直すことを強調した。