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悩み多き現代人のスーパーヒーローたる徳重

第1話は、患者と医師、それぞれの主張から始まった。待合室にいる女性患者・黒岩百々(仲里依紗)が抱える、たった10分の診察に対する苛立ちを、彼女は視聴者に訴えかけるように話す。一方で滝野とともに診察を担当した成海(津田寛治)もまた、カメラに向かって「医者の言い分」を主張する。2人の「こんな話、お医者さん / 患者さんには分かってもらえないだろうけど」という思いが重なり合う。この、視聴者に向かって自身の思いや状況、あるいは他者から見た各話の主要登場人物の印象を語る形式は第5話まで毎話、登場してきた。
例えば第2話において、小児科長である有松が、職場における中堅として担わなければいけない役割と、自分自身の本音との葛藤を吐露する場面。そして、第4話の鹿山(清水尋也)が得意とする「何事も合理的に器用にこなしていく手法」に基づいた働き方を明かす場面。誰もが会社、家族、社会においてそれぞれの役割を担っている中で、自身の理想と現実の間で葛藤しているが、それを実際に口に出すことは難しい。そんな彼らの、時に本人すら自覚していなかったような思いまで解き明かし、傷ついた心にスルリと寄り添い、「あなたの声を聞かせて」と語りかける徳重は、悩み多き現代人にとってスーパーヒーローと言えるかもしれない。
医師同士がぶつかるのは、第3話で院長の北野(生瀬勝久)が言う通り「正しさって、人の数だけある」からであり、赤池の言う通り「同じ助けたいという思いがあるから」だ。だから、最初は反発し合っていた医師たちが、次第に本音でぶつかり合い、認め合っていく姿は見ていて心地よい。主だった「敵役」が存在しない医療ドラマと言う点は、昨年放送の『アンメット ある脳外科医の日記』(フジテレビ、カンテレ系)と共通している。