メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

SWALLOWインタビュー 挫折を乗り越えたからこそ、聴く人に寄り添える

2023.5.15

SWALLOW『温室育ち』

#PR #MUSIC

青森県三沢市出身の3ピースバンド、SWALLOWから届けられた1stフルアルバム『温室育ち』は、中学時代からバンド活動をはじめた彼らの変化と進化の歴史を瑞々しく刻んだ現時点での集大成的な一作である。振り返れば、彼らは2016年にバンド「No title」を結成し、2017年にLINE社主催のオーディションでグランプリを獲得すると、デビューするやいなや大型タイアップや大型フェスへの参加などの華々しい活動を展開したが、2020年、より自分たちの表現欲求に忠実な作品作りを目指すべくバンド名を「SWALLOW」に改名。心機一転のスタートを切った。

アルバム『温室育ち』には、工藤帆乃佳(Vo&Gt)の内省的な詩情がより激しさと深さを増していった改名以降のシングル10曲に加え、No title時代の2曲、そして、新曲2曲を加えた全14曲が収録されている。繊細に躍動するボサノバ調の“午睡”や、流麗なバラード“涙雨”という新曲たちが素晴らしい出来栄えであることが、その音楽世界を豊潤なものへと発展させるバンドの現在進行形の成長を感じさせる。

工藤帆乃佳、安部遥音(Gt)、種市悠人(Key)の3人に、本作『温室育ち』についてはもちろん、上京以降の苦悩や3人の関係性など、様々なことを語ってもらった。

「自分の曲が、聴く人の辛かった記憶とか、乗り越えた経験に寄り添うものであってほしい」

―1stフルアルバム『温室育ち』はNo title時代の楽曲も収録した集大成的な1作となりましたが、聴かせていただいて改めて、SWALLOWはその時々の感情を実直に音楽にしてきたバンドなのだと感じました。こうして初のアルバムを完成させて、どのような思いがありますか?

工藤:私たちは一貫して、今しか書けないこと、今思っていることをリアルタイムで曲に書いてきたと思うんですけど、それは世の中や他人に対してというより、自分自身に対して書いてきたという意味合いが強かったと思うんです。でも、こうして1曲1曲の楽曲が繋がってアルバムという形になった時に、この数年間私たちが生きてきたことが「歴史」としてひとつの物語になった気がして。そうなった時に初めて、曲が自分のためのものじゃなくて、他人や世の中に届けるためのものになったような気がするんですよね。なので、こうしてアルバムにすること、CDにすることにはとても大きな意味があったなと思います。

SWALLOW(スワロー)
工藤 帆乃佳(Vo&G)、安部 遥音(Gt)、種市 悠人(Key)からなる3ピースバンド。2016年9月、青森県でバンド「No title」を結成。2017年7⽉から始まった「LINEオーディション2017」で総合グランプリを獲得し、翌年2018年1月にデビュー。その後、映画主題歌や高校野球テーマソングを担当、ARABAKI ROCK FESTなど出演。2020年6月1日、バンド名を「SWALLOW」に改名。同年11月8日、改名後初となる新曲「SWALLOW」をリリースし、全国高校バスケットボール選手権「ウィンターカップ2020」テーマソングに大抜擢。2022年4月から、地元青森でレギュラーラジオ番組「SWALLOW’s nest radio」もスタート。2023年1stアルバム『温室育ち』がデジタル(3月26日 LINE MUSIC先行)、そしてCD(4月26日)リリース!
https://swallow-official.com/

―自分のために書いてきた曲たちが、連なり、歴史となり、アルバムという形になることで他人に向けたものになる。それは、アルバムを想定した段階から意識されていたことなのでしょうか?

工藤:SWALLOWとして曲が溜まり始めた頃に、初めてその可能性を意識し始めました。もっと前はアルバムというイメージも漠然としていたし、ここまで納得のいくひとつの作品になるとは思っていなかったので、嬉しい発見でしたね。過去の自分に伝えたら喜ぶだろうなと思います。

―作品が他者に届くものであってほしいという気持ちは、工藤さんの中にはどのような形で根付いているものなのでしょうか。

工藤:正直、「バズりたい」とか「売れたい」とか、そういう気持ちが強くあるわけではなくて。でも、自分の人生のリアルタイムの歴史を刻んだアルバムだし、自分と似たような思いをしている人にこそ聴いてほしいという気持ちがあるんです。自分の曲が、聴く人の辛かった記憶とか、乗り越えた経験に寄り添うものであってほしいし、そうなれば、自分の痛みに向き合って素直に曲を書いてきた意味があるなと思うので。だからこそ、今回のアルバムは配信だけじゃなくてCDで出したかったんですよね。モノとして、聴く人の人生の傍にあった方が、このアルバムに込めた気持ちに対して筋が通っているかなと思うので。

工藤帆乃佳(くどう ほのか)

―裏を返せば、自分たちが作る音楽が寄り添うべき相手がこの世界にいるということを、工藤さんは確信されているということでもありますよね。

工藤:No titleからSWALLOWに改名したタイミングって、私たちが地元の青森を出て東京でひとり暮らしを始めたタイミングでもあるんですけど、東京でできた友達を見たりする中で、そういうことを実感するようになりました。東京には本当にとんでもない生まれ育ちの人がいたり、人間関係で凄く大変な思いをしているのに明るく生きている人がいたりして(笑)。大学で知り合った人たちを見ただけでも「世の中にはいろんな人がいるんだ」と感じたんだから、もっと外の世界に目を向けたら、もっといろんな人間がいるんだろうなと思う。こういうことって、地元にいた頃も理屈ではわかっていたけど、実感としてわかったのは東京に出てきてからですね。

―『温室育ち』というタイトルは、広い視点からSWALLOWという存在を見たうえでつけられた言葉のように感じますし、内省的なニュアンスも含んだタイトルでもあるように感じます。このタイトルにはどのような思いを込めましたか?

工藤:上京してひとりで生きていると、家族をはじめとした地元の人間関係って、凄く恵まれていたんだなと改めて感じることが多くて。メンバー3人の家族はバンド活動に協力的だし、地元の人たちも応援してくれたし。それに、大学の友達も応援してくれるんです。そういう環境にいることができるのは凄く貴重だし、恵まれているなと思う。それはもちろんいいことだけど、言い換えれば、温室育ち。箱入りと言いますか(笑)。自分たちがそういう恵まれたバンドなんだということに上京してから気づいたんです。

あと、上京したタイミングが最初の緊急事態宣言の頃で、ライブも思っていたよりできなかったし、いわゆる下積みと言える経験が私たちにはあまりないんです。そもそもデビューの経緯も、オーディションで思いがけずグランプリをいただいたことがきっかけなので。そういう部分を厳しい目で見た時に、「私たちって、温室育ちだな」と思ったんです。このアルバムの曲たちは、そういう環境だからこそできた曲たちでもあると思います。変化を受け止めながら、自分たちに対して厳しい目を向けて書いた曲がこのアルバムには多いなと思います。

バンドの改名や活動休止。「温室育ち」が挫折を乗り越えるまで

―上京されて、2021年の5月に“青く短い春”を配信リリースされてから2022年1月に“常葉”を配信リリースされるまでの間、SWALLOWは活動休止期間ということになっているんですよね。この期間は、皆さんにとってどのような期間だったのでしょうか?

工藤:バンドとしての活動は完全に停止していましたね。どんなことを曲にすればいいのかわからなくなったんです。そういう私の精神状態を鑑みて、1回休もうと。その期間で私が傷を癒して、乗り越えた先にひねり出したのが、“常葉”でした。“常葉”は今回のアルバムの中でも大事な曲になったなと思うし、結果的に、いい経験になったなと思います。1回ここまで落ちてしまえば、この先の人生、大したことで辛いとは思わなくなるかなって(笑)。そのくらい、強くなれた期間だったと思います。今までは温室育ちだったので、初めての挫折というか、乗り越えるべき壁だったのだと思います。

―差し支えなければでいいのですが、何が工藤さんを苦しめることになったのか、思い当たることはあるのでしょうか?

工藤:“常葉”の前までは、私たちのやりたいことをサポートを受けながら音楽を作っていたのですが、途中から、デモ制作の段階からもサポートを受ける形になりかけたんですよね。自分たちでやりたいことをできるようになるためにSWALLOWになった経緯もあって、一度立ち止まってみようと思ったんです。

あと私個人の精神的な面で、作ることが苦痛になってしまった時期だったと思います。人前に自分の人生を晒していくことに対して疑問に思うことがあったので、休止期間中は1回実家に帰って、「自分が本当に書きたいものってなんなんだろう?」ということを考え直したりしていました。そんなにかっこつけたことではないんですけどね。でも、音楽というジャンルの中で自分の表現をしていくために、もっと適切なやり方があるのかなということを探していく模索の期間でもありました。

―この休止期間を、種市さんと安部さんはどのようなことを感じながら過ごされていましたか?

種市:単純に、活動が止まっている間に何もしないのが僕は嫌だったんです。なので、休止期間は、デモの作り方を研究する期間に僕は当てていました。それまではアレンジャーさんにデモを投げて、アレンジャーさんの力をしっかりと借りて曲にするという工程を経ていたんですけど、ある程度自分たちで作りこめるようになりたいなと思って。例えば“常葉”は僕が編曲を担当したんですけど、これまでで初めて、デモの色を残したまま形にできた実感がありました。

種市悠人(たねいち ゆうと)

―安部さんは?

安部:僕は、ただダラダラとギターを弾いていました。

一同:(笑)

安部:僕は作ることに苦痛を覚えたりはしていないけど、こういう期間があってもいいのかなと思って。自分のバンドが止まっているのは悲しかったですけど、「いつかは戻るだろう」とも思っていたので、ひたすら練習していました。

―「いつかは戻る」ということは、信じられていましたか?

安部:そうですね……正直、当時はそこまで危機感を感じていなかったんですよ(笑)。また音楽を作る未来は想像できていたんです……根拠はないですけど(笑)。

安部遥音(あんべ はると)

「人と人の価値観の違いに『裏切られた』と感じてしまうか、『そういう人なんだ』と受け止められるかが、愛の正体というか」

―振り返ると、改名があり、休止期間があり、SWALLOWというバンドは様々な経験を経てここまで辿り着いていますよね。中学生の頃に結成されたバンドであるがゆえに、簡単に破綻してしまう可能性もあったと思うし、SWALLOWという存在を10代の輝かしい記憶にして終わらせてしまうことも可能だったと思うんですけど、むしろ泥臭いと言えるような過程を経ながら、SWALLOWは3人でここまで歩んできている。

工藤:そっか……。言われてみればそんな気もするけど、お金がないからバイトをしまくってライブをするみたいな、そういう形の下積みは経験していないし、自分が想像する泥臭さとはやっぱり違うんですよね。私は大学で絵を描いているんですけど、中には絵以外のことにまったく興味がなくて、絵という専門分野以外の美的感覚が欠けている友達とかもいるんですよ(笑)。でも、その子は絵がめちゃくちゃうまいし、絵で生きていきていくために、なりふり構わない。そういう人をいっぱい見てきたし、そういう人たちに憧れている自分もいるんです。だから、「泥臭い」って言ってもらえると嬉しいです(笑)。思いがけない言葉でした。

https://www.youtube.com/watch?v=kBhTu72Q4M0

―種市さんと安部さんは、ここまでSWALLOWを続けてこられたことに対してどのような思いがありますか?

種市:僕は正直なところ、ここまで長く続けてこれるとは思わなかったんですよ。

工藤:へえ。

種市:オーディションに受かって、『ARABAKI ROCK FEST.』に出て……って、よくできすぎているなと思っていたので。ただ、僕はとにかく曲を作ることが好きなんです。それが一番の原動力になってきたなと思います。そもそも、ピアノを弾くのが好きで、家にいればずっとピアノを弾いているような人間だから。

―安部さんはどうですか? No title結成のきっかけは安部さんが工藤さんと種市さんに声をかけたことなんですよね。

安部:そうですね。このバンドをはじめて6、7年くらい経ちますけど、3人のバランスがいいから続いてきたのかなと思います。それぞれお互いにやりたいことや表現したいことはあると思うけど、あくまでもSWALLOWは帆乃佳が表現したいことを表現していくバンドだと思うし、それを僕とポチ(種市)が支えていく、その構図が合っているんだと思う。そこに僕はストレスを感じないんですよね。もちろん帆乃佳が感じていることや歌詞に書いていることは、普段一緒に活動しているので当然わかる部分もあるけど、僕とポチはそこにあまり近寄りすぎない部分もあるし。他のバンドはメンバーチェンジの話があったりしますけど、そういうのを見ると、「なんで、そうなるのかな?」と不思議に感じるくらいなんですよね(笑)。

工藤:うん(笑)。

安部:僕らもこの先どうなるかはわからないけど、とりあえず今は、そんなふうに感じます。

―休止期間を経て、工藤さんにとって曲を作ることはどういうことなのか、改めて見えたことはありましたか?

工藤:自分の考えていることや自分の気持ちって、思っているだけだとふんわりしているけど、それを作品にすることで、自分の中で整理がつくような感覚があるんです。“常葉”は特に、自分自身に処方した薬だと思っていて。曲を作ることは単純に楽しいだけのことではないけれど、でも、そういうものを作っている自分の方が好きだから、曲を作っているような感じがします。それに、音楽でも、絵でも、芸術を作ることのメリットって、辛いことや悲しいこと、自分の狂気じみた部分……そういうところが全部、作品の材料なるところだと思うんですよ。そういう意味では、どんどんと自分のことを肯定できるようになってきている気がしますね。元々、私はそんなに自己肯定感が高いタイプではないけど、段々と「そんな自分が好きだから芸術を作っている」ということを悪いことじゃないと思えるようになってきました。

―“青く短い春”は、フランソワーズ・サガンの小説『悲しみよ こんにちは』にインスピレーションを受けて作られたそうですね。あの作品のどのような点に工藤さんは魅力を感じたのでしょうか?

工藤:たまたまロングセラーと呼ばれるものを読み漁っていた時に、しっくりきたんですよね。私はフランスに行ったことがないので本当のところはわからないですけど、文体から滲み出るフランスの空気感に凄く憧れて。物語自体が思春期の心の変化に付いていけない、手に余っている主人公だったことも大きかったと思います。この曲を書いていたのは、私が17歳の頃だったので。知らないはずなのに知っている、そんな感覚があったんですよね。

―あの作品と自分自身が重なる感覚があったんですね。

工藤:例えば、私たち3人は仲がいいですけど、どれだけ仲が良くても、結局は他人なんですよ。人生は別々だし、自分と全く同じ価値観の人間なんて、この世にただのひとりもいない。そういうことをわかったうえで、人と人の価値観の違いに「裏切られた」と感じてしまうか、「そういう人なんだ」と受け止められるかが、愛の正体というか。愛があるかないかは、そこに出るような気がするんですよね。別にサガンはそういうことを知ったように書いているわけではないけど、染みわたるというか、「似たようなことを、この人は考えているんだろうな」と思うんです、読んでいると。

―ありがとうございます。5月26日にはNiEW主催の無料イベント『exPoP!!!!!』への出演も控えていますが、ライブに対してはどのような思いがありますか?

工藤:コロナなどで中々そういう機会がなかったので、この前ライブハウスで初めて有観客のライブをやらせていただいたんですけど、その1回で、成長に繋がった感じがしたんです。「これがライブね!」って、掴んだ実感があって。ライブをやっていて、初めて水を飲みたいと思ったんですよ(笑)。

『exPoP!!!!! vol.151』は5月26日(金)に入場無料で開催(予約はこちらから

―そっか、本格的な有観客ライブが初めてだったんですね。

工藤:配信ライブで歌ったことはあったんですけど、その時はあまり疲れた感じはしなくて。でも、この間のライブは疲れました。会場にわざわざお金を払って観に来てくれる人は、ただ音楽を聴きに来てくれているだけじゃなくて、会場に私たちの姿を観に来ているし、コミュニケーションを取りに来ているし、その空間のためにお金を払っているということを初めて実感を伴って理解できた感じがして。『exPoP!!!!!』も前に出た時は、お客さんは声が出せなかったですけど、いよいよ本当の姿が戻ってきていると思うので、楽しみにしています。初めての有観客ライブが地元の青森だったので、地元のお客さんと東京のお客さんは違うだろうなという不安もあるんですけど(笑)、でも、できる限りお客さんに楽しんでもらえるよう頑張ります!

SWALLOW『温室育ち』

2023年4月26日(水)発売
LINE RECORDS
[CD] 税込3000円 / LINECD-0001

1.THE ORCHID GREENHOUSE
2.紛い者の万年筆
3.ねがいごと
4.アオゾラ
5.AUREOLIN
6.常葉
7.嵐の女王
8.午睡
9.涙雨
10.⻘く短い春
11.蒼昏
12.ULTRA MARINE
13.田舎者
14.SWALLOW

Amazonで見る
LINE MUSICで聴く

NiEW presents 『exPoP!!!!! vol.151』

『exPoP!!!!! vol.151』は5月26日(金)に入場無料で開催

2023年5月26日(金)
会場:Spotify O-nest
時間:OPEN 18:30 / START 19:00
料金:入場無料 (must buy 2Drinks)
配信:https://www.youtube.com/@NiEWJP

出演:幽体コミュニケーションズ、SWALLOW、Wuinguin、Deep Sea Diving Club、天国姑娘

■チケット予約フォーム
※ご予約の無い方は入場できない場合がございます
https://expop.jp/tickets/151

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS