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全部を自分でやり切ろうとした『YOUR NAME』だったのに、到底無理だった。
ー加藤さん考案によるイベント『FAHDAY2024』(ファーデイ)の開催が発表されました。本イベントを「表現の交換市」と位置づけるステイトメントも同時に発信されていたわけですが、そういった精神性、このイベントに至るまでの経緯を教えていただいてもいいですか。
加藤:2019年に苫小牧のELLCUBEで開催した『YOUR NAME』以降、「何かをやらないといけない」っていう気持ちだけがあって。今回の『FAHDAY』は地元の仲間やお店に力を借りながら開催するものですけど、振り返ってみると、2019年の『YOUR NAME』はそれと真逆のものを志していたんですよね。全部自分でやります、全部を自分で制作しますっていう。チケットもNOT WONKの3人の手刷りで、クロークも僕がやって、チケットのもぎりもやって。何しろ3人でやり切りますっていう気持ちで、2019年の7月から半年で準備したものだったんです。

加藤:で、262人のお客さんと24組のオープンバンド(※)、スタッフを合わせた、368人。その一人ひとりの楽しみ方が繋がっていくことによって、本当に素晴らしい1日になったと思うんです。ただ、全部を自分でやり切りますと言って始めたイベントだったのに、そこが到底無理だったっていうのがあって。「一人ひとりに向き合いたい、だからDIYでやる」というイメージだったのに、フタを開けてみたら、ストーブに全然灯油が入ってないとか、そういうことに全然手が回らなかった。そういう一つひとつを、誰かに手伝ってもらうことばかりだったんですよ。
※『YOUR NAME』のオープンステージ企画に出演したバンドのこと。2019年7月5日11:00から7月6日10:30までの期間に応募した全アーティストが出演。出演者には、Gotch、Discharming man、突然少年、やっほー、TIMELY ERROR、The Triops、SUP、インディーガール、まえだゆりな、BANGLANG、INViSBL、ザ・ジラフス、脱兎、Hue’s、SEAPOOL、And Summer Club、LADALES、JEEP、The Big Mouth、cult grass stars、zo-sun park、Dr.NY、MAPPY、大久保光涼が名を連ねた。
ーひとりで頑張ろうとしたことでむしろ、誰かの力を借りていいということに気づかされた?
加藤:そうなんですよ。全部ひとりでやろうなんて考えていたのは俺だけだったのかもしれないっていうことに気づけて。オープンバンドとして出演してくれた人も、お客さんも、「これは私が手伝わないといけないな」って思ってくれていたんだなって痛感したんですよ。なので、全部自分でやると言いながらもたくさんの人に手伝ってもらう結果になった『YOUR NAME』は、到底DIYと呼べるものじゃないっていう着地をしたんですよね。それに、DIYが最も意味を持つのって、DIYでやることが最大のクオリティを生む時だと思うんですよ。そうじゃない限りDIYのイベントなんてやらないほうがいいとすら思っていて。

ーひとりでやること自体が目的になって、その結果クオリティが低いんだったら本末転倒ですからね。もちろん『YOUR NAME』は素晴らしい1日だったし、素晴らしいライブの連続だったわけですけど。
加藤:DIYでやると言い張りながら人の助けをどこかで待っている状態だったとしたら、慈善の搾取でもありますからね。だったらフェアな形でみんなに力添えをお願いして、ひとつの場所を作ろうと思った。それが今回の『FAHDAY』に至る考え方の出発点でしたね。