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多様なアイデンティティを持つ女性たちが、心を許しあい機能している「ジェーン」という団体について
ジェーンを構成するメンバーは実に多様で、団体のリーダーでありフェミニストであるバージニア(シガニー・ウィーバー)をはじめ、様々な年齢の女性たちが集う。さらに、カトリック教徒のシスターや作品の中で妊娠・出産をしたであろうと推測できる女性も登場し、誰がどの女性の中絶の案内を担当するかを決める会議においては、似たような境遇にあるメンバーが選定される。

さらに重要なのは、メンバー同士の関わりが非常に和やかであるということである。例えばジョイが初めてジェーンの会議に訪れるシーンにおいては、ジョイが部屋に足を踏み入れると、談笑している人だけでなくダンスをしている人、ギターを弾いている人などが映し出される。彼女たちは同じ志を持った仲間であると同時に、気心の知れた友人でもあるのだ。
ジェーンの女性たちが登場するシーンでは、カメラは手持ちカメラで撮っているようにユラユラと動き、思い思いに声を発するメンバーたちの顔を追うように引きの位置で動く。だからこそ、話をしている当人だけでなくその話に耳を傾けて思わず笑ってしまう背後の人の表情もフレームに映り込み、彼らがただ理念の下に集い機械的に連携しているわけではなく、心を許しあっていて信頼関係が醸成されているのが伝わってくる。さらに、ジェーンの女性たちの表情や動きを仔細に映そうとするカメラの動きは、彼女たち皆が運動の主体であり、一人一人に活動を推し進める力があることをも示唆するだろう。