グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
6月28日はプロダクトデザイナー・アートディレクターの黒野真吾さんの紹介で、映像・写真作家の山根晋さんが出演。映像制作のきっかけやオリジナリティ溢れる映像のアイデアについてお聞きしました。
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友人の展覧会のために初めての映像制作
タカノ(MC):黒野真吾さんが山根さんのことを「哲学的映像作家」とご紹介していましたが。
山根:めちゃくちゃハードル上げるな(笑)。言われたことないですけどね(笑)。
タカノ:独自哲学を持っていらっしゃると思うので、深掘りしていきたいなと思うんですが。
Celeina(MC):山根さんは映像・写真作家としてご活躍されてますが、学生時代は写真や映像の世界を目指したわけではなかったんですか?
山根:全くやっていなかったですね。
タカノ:どういうことをやられていたんですか?
山根:大学は商学部だったんです。アートはずっと気になっていたんですけど、まさか自分が作ることになるとはっていう感じですね。
タカノ:きっかけは何だったんですか?
山根:きっかけは靴を作ってる友達が「展覧会で使う映像を作ってほしいんだよね」ってお願いしてきて。「ちょっとできそうにないけどやるよ」みたいな感じでやってみたら、それが好評だったんです。
タカノ:そのお友達は山根さんのセンスをわかっていたというか、信頼感があったのかなという感じですね。
出版社勤務から大工へ
タカノ:映像制作を始める前にいろいろ経験されてるって聞いたんですが。
山根:まず出版社の営業みたいなことをやっていて。その後は大工の親方の下で1年間働かさせてもらったりとか、林業の現場に入ったりとか。そんな感じで手に職というか、自分の体を使って仕事をやりたいなと思っていて。
タカノ:でも出版社から大工って人生のハンドルの切り方がすごく急で。
山根:でも大工をしていて思ったのが、少なからずお金をもらいながら家を作ることを学べるってすごいラッキーだなと。
タカノ:普通は学校とかにお金を払って何かを学ぶっていうことですけど、学びながらお金ももらえるっていうね。
Celeina:元々建築や家に興味があったんですか?
山根:それよりも職人に興味がありましたね。カッコいいなっていう。だから最初は職人さんの映像とか撮ってましたね。
Celeina:先ほどの靴の映像っていうのは、靴を作るところから追っていくみたいな。
山根:そうです、そうです。
Celeina:映像が作り手さんのバックボーンまで見えるようなところまで深掘りしていると、見てる側も凄く興味が湧きますよね。
タカノ:山根さんご自身もが職人の経験があるから、撮るときも職人目線になれるというか。
山根:撮っていて楽しいからだと思いますね。
光と時間で表現する写真集
Celeina:2021年には写真集を発売されているんですよね。
山根:そうですね。僕の名義じゃないんですけど、陶芸家の黒田泰蔵さんの作品の写真を僕が全部撮らせてもらって作品集を作りました。これは銀座にある森岡書店さんっていうところが企画して。
タカノ:タイトルは?
山根:『A day in February with light – Kuroda Taizo』です。2月の光の中の1日っていうタイトルなんですけど。
Celeina:実際にスタジオに持ってきてくださっているということで。
タカノ:日記のような感じで。
山根:自然光のみで撮影しているんですよ。黒田泰蔵さんのアトリエで日の出から日の入まで、誰も入らず僕と陶器だけで、朝から晩まで過ごして。光が遷移するところを全部写真にしました。
タカノ:定点なんですよ。同じ構図で撮られてるんですけど、横に6時20分とか9時48分とか、時間の経過も書かれていて。ライティングが少しずつ変わっていっていろんな表情が出ていて。
山根:人間の目って今見てるものの変化を補正すると思うんですよ。だけどカメラに記録すると変わる前の姿が記録されてるから、こんなに光の色合いって変わるんだって自分でも気づきましたね。
タカノ:この時間軸があるから、写真集なのに映像的でもあるところも面白いですよね。
山根:そこも僕が撮影させてもらった理由だったりするのかなっていう気はします。
タカノ:コンセプトはどうやって考えて、練り上げていったんですか?
山根:銀座の森岡書店の森岡さんと最初ロケハンに行ったときもう陶器だけでやろうって話をして。森岡さんと2人で「いけますか?」「それが一番いいと思います」みたいに当時決めたと思います。
Celeina:シンプルでありながらも凄くインパクトのあるコンセプトですよね。
タカノ:こちらはどこで手に入るんでしょうか?
山根:森岡書店さんに問い合わせしていただければ。まだ在庫は残っていると思います。
Celeina:ではここで1曲お送りしたいんですが、山根さんに選んで頂いた、この時間にラジオで聴きたい曲はなんでしょうか?
山根:Arab Strap の ”Soaps” です。
Celeina:こちらの選曲理由は?
山根:トラン・アン・ユン監督の『夏至』っていう作品の劇中歌で、めちゃくちゃ遅いんですよ。「こんなにドラムモタつく?」とか「こんなにギター遅い?」みたいな。その遅さが映画の空気感とハマって、遅さっていうのに凄くグッときたんですよね。
Celeina:なるほど。では遅さに注目して聴いてみましょう。
空間に流れる時間を表現する映像作品
Celeina:展示などで山根さんの作品を直接見られる機会はありますか?
山根:鎌倉の建築士の方から、住宅を映像に収めて「建築動画」を作れないかってお話をいただいて。それは何だか凄く良さそうだなと思ってやらせてもらったんですけど。その映像の展示を8月3日から4日間だけなんですけど、鎌倉の鶴岡八幡宮のすぐ裏にあるスペースでやらせてもらいます。
タカノ:建築写真は聞きますけど、建築動画って聞かないですよね。
山根:そうなんですよ。だからめちゃくちゃ難しくて。
タカノ:建築物って静止してるものじゃないですか。それをどうやって動画作品にしたのかなって気になりますね。
山根:さっきの写真集もそうなんですけど、やっぱり映像だと時間っていうものがどうしても気になっちゃうので。その建築の空間に流れてる時間をどうやって映像に持ってこようかなっていうことを考えたんですよね。音楽家の友達に壁のテクスチャーとか色調とかを音楽に変えて作ってもらったり、CGだからできる新しい建材を作ってそれを動画の中で採用したり、ちょっと不思議な映像を作って。あとはお茶を点てるガラス作家の友達がいて、彼に茶道具を全部ガラスで作ってもらって、ティーセレモニーをやったのを映像にしたり。あの手この手で建築を動画にしてやろうっていう感じで。
タカノ:発想が面白いですね。
Celeina:「FIST BUMP」グータッチでつなぐ友達の輪ということでお友達をご紹介してもらっているんですけれども、山根さんがご紹介してくださるのはどんな方でしょうか?
山根:映画監督の川上アチカさんです。実はちゃんと会ったのは1回しかなくて、それもめちゃくちゃ熱い一夜だったんですけど。鎌倉の海で、初対面なのに5、6時間ぐらいずっと映像について喋ってたんですよ。凄く熱い人だな、かっこいい人だなと思って。来月から公開の浪曲ついてのドキュメンタリー映画があるんですけど、題材がめちゃくちゃ面白くてアチカさんの話を聞きたいなと思って紹介しました。
タカノ:一言で表すとどんな方でしょうか?
山根:「カッコいい映画作家」ですね。
Celeina:ストレートでいいですね。明日は映画監督の川上アチカさんに繋ぎます。映像・写真作家の山根さん、今日は本当にありがとうございました。
山根:ありがとうございました。
GRAND MARQUEE
J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann