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直感的で「とっ散らかった」面白さのラップアルバム
—では、つやちゃんさんの1枚はいかがですか?
つやちゃん:はい。私は最近だとエイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)のアルバム『Don’t Be Dumb』を挙げたいです。エイサップ・ロッキーは、セールスだけで言ったらトラヴィス・スコット、ケンドリック・ラマーやプレイボーイ・カーティ(Playboi Carti)とかと名前が並ぶようなラッパーなんですけど、なかなかどういった特徴があって、どういう作風なのかが見えにくいんじゃないかと思うんです。今回もそうなんですけど、いつも、なんかわけわかんないアルバムを作るんですよ(笑)。
つやちゃん:キャリア的にも中堅からベテランになりつつあるので、もっと作風が整頓されたり、洗練に向かってもいいのに、今回のアルバムも雑然としていて、直感的にやりたいことをやりたい放題やったみたいな感じの作品なんですね。そこが自分が好きなポイントでもあるんですけど。今までの過去の作品の要素が詰まった音楽性になっていて、それもあってとっ散らかった感があり、そのとっ散らかった感が好きで、けっこう聴いてますね。
あと、以前からファッションシーンとの結びつきが深くて、去年はRay-Banのクリエイティブディレクターに就任したり、CHANELのハウスアンバサダーをやったりもしています。それで、音楽制作のアプローチの仕方も、どこかファッション的なものを感じるんです。「かっこいいからやってみた」「異質のものを組み合わせたらどうなるかな」という、ファッションスタイリングに近いような手法ですね。以前からそうでしたけど、今作でそれがますます極まったような気もしていて。
セメント:リードシングル、“Punk Rocky”でしたっけ? あれを聴いたときにすごくびっくりしちゃって。ヒップホップというか、ロック曲ですよね。MVが異様に不穏だし、ウィノナ・ライダーとか出てくるし、たしかにいろんなアイディアが詰め込まれているのを感じましたね。断片的なところが逆に現代的でいいのかもしれないです。
つやちゃん:アルバムのアートワークをティム・バートンが手がけていたり、ドーチー(Doechii)とコラボしてたりとか、いろんな人が出てくるんですよね。タイラー・ザ・クリエイターともやってて、ウィル・アイ・アムも客演しています。
セメント:彼は常に次に流行りそうな曲調は押さえていたりするので、彼なりの今のシーンに対する「こういうモードもありなんじゃないか」という提言として考えると、面白いなと思いました。