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「宗教的ではないがスピリチュアル」なロザリア
風間:あと、『Prema』のCDの帯に「至上の愛」という言葉が入っているのは、ジョン・コルトレーンの同名アルバムからきているのかなと思っていて。あれは特定の宗教ではない「神」に捧げたアルバムですけど、「宗教的ではないがスピリチュアル(Spiritual But Not Religious)」という用語があって、ロザリア(ROSALÍA)の『LUX』でも概念のひとつとして使われていました。対象がいてもいなくても、ある種の「信仰」と結びついたものが評価された年だったなというのは、ビッグリリースを見ていて思いました。
松島:はい、ある種の敬虔さみたいな感じというか。ロザリア『LUX』は、一聴してすごいことが分かるんですけど、あまりのカロリーの高さに「これはいつ聴けばいいんだろう……?」って(笑)。クラシックからスペインのルーツからポピュラー音楽まで、持てるすべてを使って作るとこうなるのか、この「軽さの時代」にこんな重たいアルバムが出るんだ、と思いましたね。
松島:ロザリア以外でも今年は、ポストクラシカル的なものをいろいろなところで耳にしました。Djrumと書いてドラムと読むIDM系のアーティストも、まさに最近のIDMにクラシカルな要素をふんだんに盛り込んだアルバム(『Under Tangled Silence』)を出してて、あれはクラブトラック系だと今年で5本の指に入るぐらい大好きでした。
キムラ:かつてRadioheadがやったこととも重なる気がします。2000年頃にRadioheadが、インターネットのムーブメント / 空気感の中で、ジョニー・グリーンウッドのクラシカルな手捌きとエレクトロニカを融合させた素晴らしい作品を何枚も出していった。僕はロザリアのアルバムを聴いたときも、若干その感じがしたんですよね。いまAIが急速に発達していって、イーロン・マスクがXをめちゃくちゃにして、あの頃と同じようにインターネットの変革期の最中にいるわけですけれども。
松島:なるほど。たしかにロザリアも、器楽的にエレクトロニカにアプローチするところがありましたね。Radioheadはライブを再開しましたし、アルバム出してほしいっすね。来年待ってます!
風間:いやー、どうなるか怖くもありますよ……。