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クラブミュージックの2020年代インディ的要素が詰まった2作
松島:僕はearという2人組の『The Most Dear and The Future』というアルバムにハマって。いっぱい聴いたし、DJの現場でもかけたりしていましたね。インディートロニカとかフォークトロニカとまとめられそうな、ローファイな宅録なんですけど、そこにサブベースがしっかり入ってたり、コラージュ的にジャングルのパーツが使われていたり、でも歌モノに関してはエモ感があって。2020年代的な要素の集合体みたいな作品だし、ゾッとするぐらい自分の個人的な好みを正確に射抜かれた作品でした。
風間:僕もearはめちゃくちゃ感銘を受けました。ちょっとDijonのアルバムにも近いというか、パンニングとかを多用するんだけど歌モノとして聴けて、いわゆる歌モノとしての聴きやすさのラインが変わったような感じを受けました。メカトック(Mechatok)の『Wide Awake』もそうで。
松島:メカトックは僕も聴いていたんですけど、クラブというよりは「クラブからの帰り」だったり、ちょっと疲れて家で聴くような感覚でしたね。ブリアル(Burial)とかもそうですけど、クラブの狂乱を抜けたあとの、どよんとしているムードみたいな。
風間:そうなんですね。僕はけっこうテンションMAXのときの感じでした……。
松島:最後にシンプルなアンビエントトランスが入ってたりする感じも、めちゃめちゃクラブ明けに合うと思いました。メカトック本人もインタビューで「ワールドツアーをガンガンやりながら、それ以外は家で携帯見てます」みたいな、その双極的なところを投影したアルバムだというようなことを言っていましたね。
ラップ関連で言うと、Surf Gang Recordsというレーベルから出た、jackzebraというクラウドラップのアーティストの『Hunched Jack Mixtape』がすごく良かったです。中国語でラップをしている郊外の青年で、世界に発見されて逆輸入的にデビューを飾ったんですけど、そこにvaporwave的な背景を持つジェームズ・フェラーロが参加していたり、mentalとblxtyというSoundCloudで活動する人たちが共作で入っていたり。それらが交差して、その軸にエクスペリメントラップとかアンダーグランドラップがあるというのは、2010年代から続く「インターネット的なもの」の結実だなと思いました。単純に作品としての完成度も素晴らしかったです。
松島:あと、下半期のリリースではないんですけど、Karavi Roushiというラッパーがいて、その人がビートメーカーのAquadabと組んで出した『BLADE N』というアルバムがあって、これはスルメというか、聴けば聴くほどヤバいことが分かってきて、国内リリースだと僕の今年ベストはこのアルバムだったかなと思います。