メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

精神科医、ラッパー、怪談作家。Dr.マキダシの「分人的」人生相談論

2025.12.25

#MUSIC

老化とメンタルヘルス

この連載に登場していただいた宇多丸さんや清田隆之さんは、他人に人生相談することはほとんどないとおっしゃってました。相談に乗るのも難しいですが、年齢を重ねると気兼ねなく誰かに自分の話をする機会も減ってしまいますよね。

マキダシ:特に地位があったりすると「俺のつらさをわかってくれよ」みたいなムーブに加害性が出てきたりしますからね。すごく難しいですよ。でも、僕は「見えづらい地獄もある」ということを発信していきたくて。みんな何かしらを背負って生きているけど、それはその人にしかわからないものだったりすると思うんですね。本当に今日食べるものがないという人には、医者をやってる僕のつらさは届かないけど、少しゆとりのある人は世の中のバランスを取るためにもお互い想像できるようになった方がいいんじゃないかなと。

ー欧米圏だと、けっこうカジュアルにカウンセリングに行ったりしますよね。日本だとまだ身構えちゃう人が多そうです。

マキダシ:そのハードルは下げたいですね。若い頃は精神のトラブルとは無縁で、仕事もプライベートもバキバキに充実していた人でも、老化することで病むんです。物忘れがひどい、思考力が落ちているというような老いの課題に直面して初めて心が折れちゃう。70代、80代で初めて挫折すると負け慣れてない分バキッといっちゃって、寝たきりになることもあります。

ー若い人の精神的な不調が話題にのぼりがちですが、むしろ高齢になってからの方が切実な問題なんですね。

マキダシ:自分が思い描いた人生を実現できないという負荷はどの世代にもありますけど、特に老年期には無力感とか、「もうこれ以上人生は良くならないんじゃないか」みたいな人生の後半特有の諦めもあるので。

ー中年以降は人生相談に乗るだけでなく、自分をアウトプットする機会を意識的に作っていかないと危ない気がしてきました。

マキダシ:加齢も含めて変化は絶対に起こるので、人に自分のことを話すことでそれを確認できるのはいいですよね。「自分はこうだ」と信じすぎると、つまずくきっかけになることもあると思います。

ーヒップホップはセルフボースティング(※)の文化だから、高齢化したラッパーのメンタルも危ないのでは……?

※ラッパーが自らのスキル、稼ぎ、人気などを誇示すること

マキダシ:日本のヒップホップ第一世代の方々もだんだん年齢を重ねてこられて、今初めてラップおじいちゃん、おばあちゃんが誕生するタイミングですからね。僕もどうなっていくんだろうと注視しています。

連載もくじページへ戻る

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS