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コミュニケーションの線引きは100回やってみるしかない
ーこういった人生相談のメソッドを実生活に落とし込んでいくと、どれくらい他人の悩みに関わるのかが重要になると思うんです。『無痛恋愛』でも、登場人物たちが他人の人生に干渉することを躊躇しつつ、グッと踏み込むことでストーリーが進んでいきます。瀧波さんご自身は関わる / 関わらないという一線をどこでジャッジしていますか?
瀧波:トライアンドエラーを繰り返すしかないですね。お年寄りに席を譲るとか、階段の下で立ち往生してるベビーカーのお母さんに声をかけるとか、とりあえずやってみないと。「けっこうです」と言われてすぐに心折れる人いるじゃないですか。それでも100回やるんだよって思うんですよね。
ー恥かいたっていいじゃないかと。
瀧波:そうそうそう。どんなことも経験がないと上手くいかないわけで。こっちの声が小さくて聞こえなかったのかもしれないし。相手にもいろいろな要因があるだろうし。上手くいかなくても、100回やれば忘れると思うんですよ。100回のうち75回は失敗だろうけど、そこから学んでいくしかない。

顔のいいクズ=星屑男子に雑に扱われたり、街中で見知らぬ人にわざとぶつかられたり、「女」の役割を押し付けられたり……この世界ってなんなの? と思いながらも、鍵垢でしか本音を吐露できない主人公・みなみ。苦しくない=無痛の人間関係を築きたいと考えるみなみは、ひとりの年上男性に出会う。彼は、“フェミおじさん”だった――!(&Sofaサイトより)
ー『無痛恋愛』の栗山由仁さんは、どんなに言ってもクズ男との関係を断ち切らない星置みなみさんに疲れて距離を置きますよね。自分が搾取されてると思うなら関わらなくていい、ということだと思うんですが、そのタイミングの見極めも難しいなと。
瀧波:パートナーからモラハラとかDVを受けている人の話を聞いて、「別れなよ」って言っても素直に別れる子はほとんどいないですよね。そこで「ダメだ、あの子は」とイライラしちゃうなら、もう心を離すときなんだと思います。「自分がこんなに一生懸命聞いてアドバイスしてあげてるのに」という執着になっているので。そういう気持ちになっていないか常に自分に問いかけて、なっていないなら関わる、というのが私のやり方です。

瀧波:たまに耐えきれなくて言っちゃうこともあるんですけど、そしたらもう連絡が来なくなったりするし。相手にとどめを刺すようなことを言わないように、危険信号を自分で察知できるようにしてます。
悩み続けたまま、あまり本意でない人生を送ったとしても、それはしょうがないんですよね。「全然変わらないよね」と関係を完全に切ってしまうか、いつでも連絡できる状態をキープしておくか。後者の方がいいと思うんです。行動を変えない人を見てもイライラしないぞ、ということは自分で決められるので。
ー自分と相手をドライに切り離すことが必要そうですね。
瀧波:「なんで言った通りにやらないんだろう」と思うこと自体が、友達のそのままの状態を否定していることでもありますよね。ストレートに言うと、見下してる。「私の言う通りにすればもっといい人生が送れるのに」っていう目線。でも、その人にはそうできない理由があるんだから。