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カウンターカルチャー隆盛後の西ドイツ
ブランデスが青春時代過ごしていた1970年代、より厳密にいうと、1960年代末から1970年代前半というのは、様々な意味での「若者の反乱」が巻き起こった時代だった。アメリカではベトナム戦争反対運動が大きな盛り上がりを迎え、新たな価値観とライフスタイルを実践するヒッピー文化が栄え、ロックミュージックに象徴される様々な文化的な革新が巻き起こった。ヨーロッパでは、1968年5月のパリにおける「革命」を象徴的な出来事として、北米同様ベビーブーマー世代の若者達による大規模な反乱が吹き荒れた。
そして、当然ながらそれらの運動は、既存の価値観への抵抗と権威への反抗を伴っていた。彼らの親世代が奉じてきた旧弊な価値観や社会常識は真っ向から挑戦を受け、世代間の対立はかつてないほど高まっていった。そのような時代の変革には、当然ながら女性の権利主張やマイノリティのアイデンティティ獲得といったトピックも密接に関係していた。その当時の西ドイツでも、議会外反対派の存在やコミューン運動、アンダーグラウンド出版、実験的ロックミュージックや電子音楽の爆発、家族規範への反抗などが広範なムーブメントとして展開され、様々な実践を生み出していった。

1956年生まれのブランデスは、まさにそうした広義の「カウンターカルチャー」が隆盛した直後にやってきた世代だった。より正確に言うと、上の世代の反抗的精神をはじめから内在し、それをときに自覚的に対象化しながら実践していった世代にあたる。1970年代以降は、反権威主義的な政治運動の沈静化が世界的に観察された時期でもあったが、その一方で、より実践的かつ生活実態に密着した試みが各分野で蓄積されていった時期でもあった。劇中で描かれるように、あからさまに政治的な言説を繰り返す友人のイザや、彼ら周辺の交友関係は、まさにそうした西ドイツ若者文化の一局面を活写したものだといえる。