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1990年代サブカルの功罪
オカヤ:私は2000年前後に小劇場の演劇を手伝っていたので、男の人が全裸になるような「とがった」笑いや前衛を、女でも普通に観ている私かっこいい、みたいな価値観の渦中にいたんですよ。
柴崎:1990年代のサブカルは、どのジャンルでもそういうことがけっこうあった。いまから見ると「うーん」て思うけど、そのときはそのときで、ある別の価値観からの脱出であったわけです。
オカヤ:はい。ブスですが? タバコも吸うしお酒も飲みますが? みたいな振る舞いが、「おとなしくかわいい女じゃないんですよ」という表現でもありましたね。もっとアングラな、死体写真とかが流行ったり。それも、何かを壊そうとしていたことはたしかで。
柴崎:でもいま、そこの表面だけを見ると「うーん」ってなる。そこをどういうふうに捉えたらいいのか、そのときはどういう感じだったのかというのは、もう少し書きたいなと思っていることですね。個人的な断片ではあるものの、渦中にいた感覚みたいなのを書いておきたいなと。
オカヤ:上の世代にも下の世代にもわかりづらいですよね。反体制の態度の違いというか。
柴崎:そうそう。社会のあり方もいまと違ったからね。
オカヤ:そういう意味では、これでもまだちょっといまの方がいいのかなと思いますよね。この10年でもだいぶ違う感じがします。
柴崎:はい。自分自身もこの10年くらいで見え方が変わった部分もあるし、よくなってきたこともたくさんある。