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気ままに自炊できることの貴重さを意識されられた
オカヤ:あと、私が行ったインドのスーパーでは出来合いのお惣菜の類がぜんぜん売ってなくて、毎食をイチから作らないといけないのは大変だなと思った。
小林:たしかに、全部の食事を毎回作るのはそれだけで大変だよね。私はインドでまだ幼いうちに結婚させられたサンギータ・ヨギさんとタラブックスが一緒につくった絵本の翻訳をさせてもらったんだけど、彼女は小学校も二年生までしか行けなかったし、結婚してからも家事が忙しくて、ずっと働きどおしだって、言ってた。家族連れが外食することはあまりないのかな。
オカヤ:ちゃんとしたレストランでたまに、というのはあっても、ふだんの食事はお家が多いのかもね。
小林:彼女は肉体労働をしていて、お昼ご飯を食べにみんな家に帰る休憩中に絵を描いていたって言ってて。くたくただよね。そういうのって、女性が無償で食事作ったり家事労働することのうえに成り立っているってことだもんね。
オカヤ:そういえば軽食のお店に行ってもおじさんしかいなかった感じはしたな。
小林:女性が一食をちょっと買ったり外で済ますことができないっていうのは、ハードルが高いね。
オカヤ:インド料理って、作るのに時間がかかるものが多いしね。そういう、家事が大変という話を聞くと、簡単に「料理が楽しい」とか言ってすいません、とも思う。

小林:好きなときに好きなものを作ったり食べられたりするのは、貴重なことなんだよね。
オカヤ:一週間いたくらいでわかった気になってもいけないと思うけど、インドは物乞いの人も多いし、カーストが残っている部分もあるし、自分の特権性を意識することはたくさんあったな。あとやっぱり、植民地についてもいろいろ思わされた。
小林:うん。バンガロールの街で見た本屋さんは、本が横積みなのが面白いと思ったけど、売られていた本はほとんどが英語の本で。
オカヤ:英語だから、横向きに置いた方が背表紙のタイトルが読みやすいんだよね。
小林:多言語の国だから、もちろんいろんな言語の出版社もあって、タミル語専門の出版社の人に会えたのは面白かったけど、基本イギリスの出版社の本が主に入ってくる、というのを聞いて、ああ、そうか植民地だったってことがこんな風に続いているのだな、って。