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クライマックスやオチのない「面白さ」
オカヤ:文章が美しすぎますよね。描写が美しいところに重きがあるから、どこを読んでもいい。
カラスヤ:はい。ひとつひとつの描写がめちゃめちゃ良い。小説の神様みたいに言われていたのが、わかるようになってきましたね。若い頃って、もっと派手な作家に目がいくじゃないですか。志賀直哉は、齢を取るにつれて面白さがわかるというか、あと、自分がものを描いているとすごさがわかるところがありますよね。
オカヤ:そうですね。でも、展開がすごいとかではないから、人に勧めづらいですよね。私はここのところずっと「面白すぎないのがいい」って思っていて。Netflixのドラマとか、すごく面白いし見ちゃうんだけど、ちょっと「面白疲れ」みたいになってくるんです。
カラスヤ:わかります。この連載でも以前その話をされてましたよね。志賀直哉はもちろん面白いんですけど、アンチクライマックスというかね。谷崎とか芥川はNetflix系ですよね(笑)。太宰治もそうやな。やっぱり昔から強いのはNetflix系なんやな(笑)。
オカヤ:あはは。私は歳を取ってから、なぜかそれまで興味なかったのに、気づいたら花の写真を撮っててびっくりしたんですけど、そういうのに近いかもしれないですね。それこそこういう会話でも、「面白くなければだめ」という感じがあるじゃないですか。飲み会とかでも。
カラスヤ:あります、あります。そういうの良くないですよね。僕は大阪出身だから、よく「やっぱり『で、オチは?』って聞くの?」と言われたりするけど、大阪の人でもそんなにオチ無いですし、芸人みたいな人ばっかりじゃないですからね。鬱病の大阪人だっていますし。
オカヤ:そうですよね。私、面白くない話しかしないPodcastをやりたいんですよ。……いや、やらないですけど(笑)。この連載もそういうところがありますね。
カラスヤ:いいですね。面白くない話はいっぱいありますよ(笑)。
オカヤ:でも、ちょっとズレた趣味とか、気づかなかった意外な違いとか、そういう一見どうでもいい誰かのすごく個人的なことこそ「面白い」とも思ってます。

書籍情報

カラスヤサトシ
『カラスヤサトシの新びっくりカレー(1)』
発売中
価格:946円(税込)
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