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NEWS EVENT SPECIAL SERIES
maya ongakuの米国西域記

全部自費。ヨーロッパツアーの内情を振り返る

2025.4.14

#MUSIC

まず航空券はバンドが自腹で購入する。誰も払ってはくれない。そうなると乗るのは自動的にエコノミークラス一択だ。また、節約のため乗り継ぎは必須で、航空券サイトに張り付いて、できるだけ安い便を血眼になって探すことになる。ちなみに前回のヨーロッパツアーでは、羽田発中国経由オランダ行きの激安チケットを手に入れたが、中国の乗り継ぎで中国国内空港間を移動しなければならないという、とんでもない行程のものであった。空港間で中国人のタクシー運転手にぼったくられ、高野は複雑すぎる移動行程中にクレジットカードを紛失した。あんな思いは2度としたくない。

続けよう。当たり前だが、海外に関しては日本のマネジメントなど、大人のサポートは皆無だ。じゃあ全て自分たちでツアーを組み、現地もバンドのみで動いているかというと、そうではない。

maya ongakuは、オランダに拠点をもつレーベル(Guruguru Brain)に所属し、ツアーの企画などは、レーベルのボスであるゴーちゃんと、彼に紹介してもらったエージェント会社のブッキングマネージャーと共同で行っているが、これはかなり運がいいほうで、基本的には現地のブッキングマネージャーとバンドのみで組み立てる。企画から単独でツアーを組み立てているバンドも中にはいるが、かなりの仕事量と英語力、社会的なアビリティが要求される。バンドマンの本業は音楽を作ることなので、これらを両立することは至難の業だろう。

ブッキングマネージャーという職業はあまり耳にしたことがないだろう。彼らはツアー全体の組み立てや、オファーの窓口など、海外公演に関わることを全てやってくれるマネージャーで、その仕事は多岐にわたる。ツアーを企画するとなると、バンドとミーティングしながら意見を聞き、ツアーの企画を立て、ライブハウスを押さえ、ギャラ交渉をし、旅程を組み立てる。

現地ではまた別に、ツアーマネージャーという人を雇い、運転やライブハウスとのやりとり、ホテルの予約や移動するレンタルバンの用意などを任せる。バンドが慣れない海外で運転をして事故をしたり、トラブルが起きてライブを飛ばしたりしたら大変なことなので、ツアーマネージャーを雇うことは必須となる。ツアーマネージャーとは長期間生活を共にするので、関係性は深くなっていく。それも海外ツアーの醍醐味のひとつと言えるだろう。

楽器などの機材は、旅行の荷物と同じように飛行機に載せて海外へと持っていく。大体のチケットが23kgまでの荷物を2つ預けることができ、そのほかに手荷物を一つ機内に持ち込めるので、その制限中で上手いことやりくりをしなくてはならない。僕らのように機材の多いバンドは、自分たちの衣服や生活用品は持ち込みの手荷物としてできるだけ小規模に纏め、楽器類を預け荷物とすることが多い。重量やサイズの超過で追加料金が掛からぬように、機材を整理して軽量化したり、複数の楽器をビニールテープで一体化させて個数を節約したり、さまざまな努力をする必要がある。

ツアーの前日か2日前に空港に着くと、もちろん誰の迎えもない。ツアー初日の会場に近いホテルを自分たちで(またはツアーマネージャーが)予約し、大量の機材と共にチェックインすると、移動で疲れ切っている僕らはホテルのベッドに沈む。いや、安宿のベッドなので硬くて沈まないかもしれない。

ライブ当日の朝、ツアーマネージャーが馬鹿でかいバンで迎えにきて、そこで彼とは初対面となる。そこから初日のライブ会場へ向かうのだ。ここでやっとツアーが始まったと言える(ツアーの計画を始めた頃からは1年近く経っている。実に長い道のりだ)。

会場に着くとすぐさまリハーサルが始まる。もちろん楽器のセッティングは自分たちで行う。拙い英語を駆使しながら、現地ライブハウスのPAと音を作っていく作業は、難しいがなかなかやり甲斐がある。国によっては電圧の違いもあり、その影響で去年のヨーロッパツアーでは、多くの機材が破損し、限られた機材で乗り切らなくてはならないショーもあった。ただそういう時は、いつもよりいい演奏ができたりするものだ。

無事ショーが終わると、僕らは休む間もなくグッズコーナーへと走る。海外ツアーにおいて(これは国内も同様だが)グッズ販売は大きな資金源となる。また、海外のお客さんとコミュニケーションがとれる唯一の機会でもある。

ショーのある日は基本的にライブハウス側が宿と食事を用意してくれる。これはかなりありがたい。だから海外ツアーはできるだけ休みを作らない。海外ツアーのポスターをみると、30日で25ショーみたいなスケジュールがザラにある。それは休めば休むほど、金がかかるからだ。ショーをしておけば、とりあえずその日の食住は保証されるから、海外ツアーではとにかく休みなくショーをするのだ(僕らみたいな小規模なバンドだと宿はもちろん小さく、ベッドを共有することも多い。食事も日本のようなクオリティのものが出てくることはまずありえない)。

そんなふうにして、大量のショーをこなして、スケジュールが終わると、節約のためすぐに祖国へと戻る。ほとんどの場合、最後のショーの翌日の飛行機で戻る。もちろんエコノミークラス。へとへとの体に、さらに十数時間の苦痛を味わうことになる。

そろそろ海外ツアーが怖くなってきたところだろうか?
そしてここから先にはもっと怖い話が続く。
しかしそれは最も重要な、収支の話である。

maya ongaku US TOUR dates 2025

Apr 08 Seattle, WA, US|Neumos
Apr 09 Bellingham, WA, US|The Shakedown
Apr 10 Victoria, BC, Canada|Wicket Hall
Apr 11 Vancouver, BC, Canada|The Pearl
Apr 12 Portland, OR, US|Wonder Ballroom
Apr 14 Chico, CA, US|Argus Bar + Patio
Apr 15 Oakland, CA, US|The New Parish
Apr 17 San Luis Obispo, CA, US|SLO Brew Rock
Apr 18 Jacumba Hot Springs CA, US|Jacumba Hot Springs Hotel
Apr 19 Los Angeles (LA), CA, US|Teragram Ballroom
Apr 20 Flagstaff, AZ, US|Coconino Center for the Arts
Apr 22 Santa Fe, NM, US|Tumbleroot Brewery & Distillery
Apr 23 Oklahoma City, OK, US|Resonant Head
Apr 24 Austin, TX, US|APF 25: Kickoff Party

maya ongaku(マヤ オンガク)

2021年、江ノ島の海辺の集落から生まれた園田努、高野諒大、池田抄英による3人組バンドmaya ongaku。魂のルーツを超えたアーシーなサイケデリアを奏でる地元ミュージシャンの有象無象の集合体。その名の由来は、古代文明からではなく、視野の外にある想像上の景色を意味する新造語。「自然発生」と表現する、非生物から生物が生まれるとされる現象の集大成が<maya ongaku>の原点である。2023年5月に1st album『Approach to Anima』をGuruguru BrainとBayon Productionよりリリースし11月にEU/UK TOUR、12月に国内TOURを行い成功をおさめる。2024年8月にNew EP『Electronic Phantoms』を発表。8月にWWWとの共同企画 “rhythm echo noise”ではオランダからFelbmを招聘し開催。TOKYOから世界へ発信する新たな音楽アワード「TOKYO ALTER MUSIC AWARD 2024」の”Best Breakthrough Artists”を受賞する。これまで森道市場、FFKT、FUJI ROCK、朝霧JAM、FUJI&SUNなど多くの国内フェス、また韓国や中国のASIAフェスにも出演。

maya ongaku | linktr.ee/maya_ongaku
Instagram | https://www.instagram.com/maya_ongaku/?hl=ja
Twitter | https://twitter.com/maya_ongaku

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