INDEX
繰り返し登場する不穏なフィードバック音の役割
中田ヤスタカさん、網守将平さんのサウンドトラックも非常に素晴らしかったです。
まず印象的だったのは、シーンの変わり目で流れるギターフィードバックのようなサウンド。サンドトラック1曲目の“Growl”の冒頭に現れるこのフィードバックのようなサウンドは、全体を通してひとつの主題(テーマ)として機能しているように思いました。“Yellow”“Sprout”“Darkness”(ともに中田ヤスタカ作曲)にもにパラフレーズ的に引用されています。
所々で繰り返し出現するこの音は、ループ感、あるいは何か異質な物を暗示させるようなサブリミナル的な効果、あるいは「次に何かが起きるのでは?」という予感を醸成するトリガーのような役割を果たしているように感じます。付け加えると、観客をより映画世界に引き込む効果も見出せます。何気ないサウンドひとつとっても意味や役割を持っているというのが、映画音楽の興味深いところです。
このフィードバック音は、和声的にはF#→Dの長3度の関係性にあります。長三度は世のなかの大抵の音楽に存在するありふれた音程関係で、現代の観客にとって耳馴染みのあるもの。だからこそ映画を観る人の意識が向きやすく、印象に残るように作用したところもあったはずです。