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あの人と巡る、東京アートスポット

アオイヤマダは自分事としてアートを楽しむ「自分と同じ、生身の人間が作ったもの」

2024.10.29

アートウィーク東京

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高校進学を機に上京し、国際的な舞台からインディペンデントな気鋭の作家の作品まで、幅広い場所と表現方法で活躍する表現者、アオイヤマダ。言葉を使って表現することが得意ではなかったという幼少期の頃に出会ったダンスという身体表現を軸に、他でもない自分自身の表現を探求し続ける彼女の姿は、必ずしもその魅力や経験を言葉では表しきれない「アート」とも響き合うのではないでしょうか。

『アートウィーク東京(AWT)』の中で彼女が気になったという作品も、自ら歩んできた道と重なるような「未知の体験に出会える」もの。毎朝作るという自作のおべんとうをプリントした衣装に身を包み、現代アートギャラリーが集結する天王洲・TERRADA ART COMPLEX内のKOSAKU KANECHIKAに現れたアオイヤマダが語ってくれたのは、肩肘張らずに一人の「生身の人間」として作品や作家に向き合う、アートの楽しみ方でした。

【アートとの出会い】とにかく色が好き。カラフルで楽しい時間が今日まで続いている

―アオイさんがアートに惹かれるようになったきっかけを教えてください。

アオイヤマダ:子供の頃はアートに触れる機会は少なかったですが、手の届くところに絵具やクレヨンなどの画材がたくさんありました。恥ずかしがり屋だったこともあり、人と話すよりも、一人で黙々と絵を描いたり、色を使って遊んだりするほうが好きでした。

水に絵具を溶かして色をつけてみたり、その色水(いろみず)の中に石を落としてみたり……。とにかく色が好きなんです。今も、自分が作った色とりどりのおべんとうを洋服にして毎日のように着ていますし、子供の頃からのカラフルで楽しい時間が、今日まで続いているという感覚です。

アオイヤマダ(あおいやまだ)
ダンサー / 俳優。東京2020オリンピック閉会式ソロパフォーマンス、ダムタイプ『2020』パフォーマンス、Netflixドラマ『First Love初恋』やヴィム・ヴェンダース 作品『PERFECT DAYS』に俳優としての出演や、宇多田ヒカル「何色でもない花」のMVを振付。NHK『ドキュメント72時間』のナレーションなどに携わるなど、身体と声で活動を広げている。生き様パフォーマンス集団『東京QQQ』としても活動中。日々、夫にお弁当を作っている。
KOSAKU KANECHIKAのグループ展『GROUP SHOW: 4 ARTISTS』にて(会期:2024年8月31日〜9月28日)。自作のおべんとうをプリントした服に身を包んで。
屋内, 男, 女性, 立つ が含まれている画像

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―今日一緒に観たKOSAKU KANECHIKA(天王洲)のグループ展も、絵画や刺繍など、色を使った素敵な作品が多かったですね。印象に残った作品はありますか?

アオイヤマダ:沖潤子さんの作品でしょうか。一般的によく知られるような刺繍とはまた違う、布に針目が重ねられた緻密な作品でした。作品の素材や技術が気になる人も多いと思いますが、作品の技術面よりも、作品の背景にどのような物語があるのかを想像しながら観ました。その想像や解釈が正解かどうかは気にせず、自由に想像を膨らませて自分の体験に落とし込み、自分事のように考えながら、普段からアートを楽しんでいます。

沖さんの作品は、観た瞬間からすごく温かな気持ちになり、「この温かさはどこからやってくるんだろう?」と思いながらじっくり観させていただきました。お母さんが残したものを使った作品も展開されていると知り、沖さんの一縫い一縫いに込められた愛の力と、時間の積み重なりを感じました。

布に針目を重ねて生み出される、沖潤⼦の作品。下絵を描く事なしに、独自の文様を直接布に刺していく。

潜在意識を掘り起こすアートからインスピレーションを得て作品に

―アオイさんはビデオアートへの出演やアートイベントなどでのパフォーマンスが続き、年々現代美術との関わりが増えていると思います。アートから受け取ったインスピレーションを、どのようにパフォーマンスに落とし込んでいますか?

アオイヤマダ:最近は、自分が普段生活していて無意識のうちに感じてきたものを、もう一度呼び起こしてパフォーマンスに落とし込むという作業をしています。意識の外から内に戻す感覚です。沖さんの作品も、心の中のすごく深いところにある時間や風景を掘り起こした作品なのかもしれません。潜在意識にあるものたちを認識する作業にはつらさも伴いますが、表現者として大切なプロセスだと思っています。

―心の中に深く潜るんですね。

アオイヤマダ:加えて、もちろん視覚や聴覚を研ぎ澄ませることも心がけています。今回の展覧会で観た画家の青木豊さんは、絵画制作において⼀貫して光にアプローチしていると聞きました。ギャラリーの真っ白な壁の中に、青木さんのメタリックで物質的な作品がかけられることで、一気に光に対して意識のスイッチが押された感じがしました。

絵画の視野を広げ、世界と絵画の関係とその新しい可能性を追究する⻘⽊豊の作品。光を多⾯的な物質として観察し、デジタル化する⽇常環境のなかで、⼈間としての様々な感性が呼び覚まされるような視覚体験を提供する。

【アートスポットめぐりが好きな理由】アートを楽しんだ後は銭湯へ。そして、ごはんを食べながら感想を話し合う

―普段から美術館やギャラリーなど、アートスポットを回ることはありますか?

アオイヤマダ:休みの日は、午前中から夫と美術館やギャラリーに出かけて、途中で大好きな銭湯を挟んで、夜にごはんを食べながら展示の感想を話し合うことが多いです。

銭湯でゆっくりお湯に浸かると、頭の中がリセットされて情報が整理される。お互いその状態で話すととても盛り上がって楽しいです。最近は忙しくてなかなかそういう時間を作れていませんが、大好きな休日の過ごし方です。

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アオイヤマダ(Aoi Yamada)(@aoiyamada0624)がシェアした投稿

―アオイさんのようにのびのびと現代アートを楽しめる人が増えたらいいなと思います。

アオイヤマダ:現代アートには難しいイメージがつきまとうけれど、結局自分と同じ生身の人間が作ったものなんですよね。私はアートを観るときに、それを作ったアーティストのことを考えながら観ます。たとえば「このアーティストはどんな恋をしているんだろう?」と想像しながらアートを観ると楽しいし、アートが近く感じられます。

私が「これは青」「これは光」と認識しているものも、他の人にとっては違う可能性がある。私はその違いを想像することが楽しいんです。

アートを観て答えを探すのではなく、まずはちゃんと聞き取りたい

―現代アートに対してハードルの高さを感じ、「わかりたいけどわからない」状態にモヤモヤを感じる人は少なくないようです。アオイさんは「わからない」という感覚とどのように付き合っていますか?

アオイヤマダ:「わからなくて当たり前」と割り切っています。だって、アーティストがこの作品を作るために何十時間、何百時間と向き合ってきたかもしれないテーマやバックグラウンドを、初見の私たちがわかるわけがないんです。

ただ受け身ではわからないままなので、迎えに行くような気持ちでアートを観ています。それは気軽なことではないし、観て感じてリラックスできるかと言えばそうではなく、たくさんエネルギーを使って向き合う体験になると思います。

それでも、アーティストが私たち一人ひとりに言葉で説明できない代わりに、作品が語りかけてくれている。答えを探すのではなく、まずはその言葉をちゃんと聞き取りたいんです。

10代の下積み時代に出会った、思い入れのあるアート作品

―「迎えに行く」「作品が発する言葉を聞く」という言葉に、アオイさんの優しさや温かさを感じます。そういう感覚が芽生えたのは、アオイさん自身も誰かから迎えに来てもらったような経験があるからなんでしょうか。

アオイヤマダ:そうかもしれません。私も人間なので、エネルギーが足りずフルでアートと向き合えない時もあるし、逆に創作意欲が高すぎて他の人のアートを弾き飛ばしてしまうような時もあります。そういう時は、別のタイミングでもう一度観に行くこともあります。

それでもファンの皆さんは、私の表現を迎えに来てくれるし、自分なりの楽しみ方を見つけ出してくれる人が多いです。あと私は、作品のほうから自分を迎えに来てくれたような感覚になることもあって。大好きなコスチュームアーティストのひびのこづえさんが衣装を用意して、おとぎ話をテーマに「UP AND DOWN」というダンスパフォーマンスをシリーズ展開しているのですが、最近それを観に行った時にすごく元気をもらいました。

―16歳で一人上京したアオイさんですが、10代の下積み時代の中で思い入れのある作品はありますか?

アオイヤマダ:音楽家の曽我大穂さんが主宰となって、ガンジー(CINEMA dub MONKS)さんや服飾家のスズキタカユキ(suzuki takayuki)さんと展開している「仕立て屋のサーカス」を観た時の感動は今も覚えています。

「仕立て屋のサーカス」はほとんど言葉がない作品なのですが、言葉では作り出せないような尖りや叫び、温かさを目の当たりにして、当時抱えていた悩みが晴れて世界がひらけるような感覚がありました。

青木豊、沖潤子、武田龍、水上愛美『GROUP SHOW: 4 ARTISTS』会場:KOSAKU KANECHIKA

青木豊、沖潤子、武田龍、水上愛美のグループ展『GROUP SHOW: 4 ARTISTS』。絵画の視野を広げ、世界と絵画の関係とその新しい可能性を追究する制作活動を行う⻘⽊豊。⽣命の痕跡を刻み込む作業として布に針⽬を重ねた作品を制作する沖潤⼦。偶発的にできたシミや傷から喚起されるイメージを拾いながら絵画を制作する武田龍。時間的な行為の集積であるオブジェクトとして絵画を制作する水上愛美。本展は、この4人の作品から構成される。

会期:2024年8月31日(土)〜9月28日(土)
住所:東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 5F
URL:https://kosakukanechika.com/exhibition/4_artists_2024_02/
※沖潤子は、『アートウィーク東京』の「AWT FOCUS」に出展。また、「ミートアップ」で藤倉麻子とのトークセッションを開催。

詳細はこちら:
https://www.artweektokyo.com/focus/
https://www.artweektokyo.com/awt-talks/meetup/

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