オアシスの再結成ツアー『oasis Live ’25』が、イギリス、アイルランド、カナダ、アメリカ、メキシコ、韓国での29公演を終え、30公演目にして日本に上陸。通算12回目、16年ぶりとなる来日公演が東京ドームにて10月25日(土)、26日(日)に開催された。
去る7月4日にイギリス・カーディフで行われた再結成ツアー初日公演のオフィシャルレポートも担当した妹沢奈美による、東京ドーム初日公演のオフィシャルライブレポートが到着した。あわせて、公演セットリストのプレイリストも公開されている。
『oasis live ‘25』10月25日(土)東京ドーム ライブレポート TEXT:妹沢奈美
祝祭空間、ついに日本上陸だ。7月4日にイギリス・カーディフで幕を開けたoasisの再結成ワールドツアーが、とうとう日本にやってきた。10月25日(土)、東京ドーム。数日前から東京は急に寒くなり上着が必要になっただけなく、この日は冷たい雨がしとしと降っていた。ライブの帰り道にSNSを開くと、傘を刺しながら東京ドームの外でoasisのライブを味わう大勢の皆さんの映像や写真が掲載されていた。今回は東京公演のみ、かつ抽選のため、それぞれの事情で来場できなかった人も多いだろう。そういう方たちに、ちゃんと本ライブ評が届けばと願いながら書いている。oasisがoasis自身を更新した非の打ち所のないライブだったことが、伝わればと思う。

予定されていた18時30分ちょうど、今回の全てのツアーの幕開けに使われているスピードメーターの映像と、This is not a drill(これは訓練ではない)の文字が映し出される。ついに、その時がきた! SEとして使用される“Fuckin’ in the Bushes”が流れ始め、ギャラガー兄弟が出てくるのはもうすぐ。海外のライブの模様を見ていると、手を繋いで出てきて互いにハグをするのがこの3ヶ月半で定番になっているのが気になった。この日、筆者は幸いにもVIPチケットが取れ、かなり前方で見ている。つまり、私が最初にやることはただ一つ。その手繋ぎとハグの際に漂うギャラガー兄弟の温度感の確認だ。
思えば、再結成が実際にスタートしてからこのかた、SNSや各国のライヴレポートをチェックしても、実際にライブを見た人が否定的なコメントや文章を記載しているのを見たことがない。私もカーディフでのツアー初日と2日目を目撃し感動したが、あれから3ヶ月半も経っている。そもそも 『Don’t Believe The Truth』 というタイトルのアルバムをoasisは出している。「事実」とされているものを信じるな – 今のギャラガー兄弟の気分とバンドの演奏と、この祝祭感がフェイクかどうか、我々の判断力が麻痺していないかは、東京公演で改めて自分自身の耳と目で確認したいと思っていた。
さあ、会場からの拍手と歓声が最高潮になりリアムがステージに登場! 右手にマラカス、そして左手には兄ノエルの右手を繋いで高く掲げて歩いている。ノエル自身は両手を上げ、その表情に目を映すと、笑顔だ。混じりっ気のない、純粋な喜びの笑顔。肉眼ではっきり目撃し、こちらまで嬉しくなる。そしてリアムはマラカスをパッと落とし、両手でアニキを抱きしめた。実感する – フェイクなんてとんでもない、見せかけの仲の良さでもない。このハグは、「よし、やるぞ」 という兄弟たちの気合い注入の儀式だ。この夜が素晴らしいものになる予感のみ、そこにはあった。

実際のところ、この日の会場の期待値はoasis登場前から最高潮に高まっていた。なにしろ、オープニングアクトのASIAN KUNG-FU GENERATIONがとてもよかった。重低音を丁寧に響かせつつギターや歌声が予想以上にきれいに聞こえる彼らの今のライブサウンドに、東京ドームだろうと今回のoasisの出音はきっと大丈夫と安心させてもらった。
前に後藤さんに、彼がいかにoasisと出会い人生が変わったか、の話を聞かせてもらったことがある。この日の彼のMCの「oasisと初めて出会って30年、名古屋でオープニングアクトをしてから20年」 や 「どうか皆さんも素敵な夜にしてください、ありがとう」 という言葉の温かさは、そこに嘘がないからだ。喜多さんや伊地知さん、山田さんも全員が横並びのステージで、こちらが嬉しくなるほど笑顔で楽しそうに演奏していた。大学で出会ったこの4人。原点回帰を思わせるすっきりした演奏と歌声は、会場の空気をこの時点でとても清々しいものにしてくれた。
アジカンからのステージ転換時、ボーンヘッドのバストアップの写真が目を引いた。普段なら彼の定位置であるノエルとリアムの間の場所にちゃんといて、いつものように場を和ませてくれる。今回のAPACツアーへの欠席の理由として前立腺がんの治療中であることを公表したボーンヘッド。快癒を祈りつつ、再結成という形で皆で再び音を鳴らせた事実が、そもそも奇跡的なのだと改めて感じ入る。
さあ、“Fuckin’ in the Bushes”でメンバーそれぞれが定位置に着いた。待ちに待った“Hello”だ。Hello, hello, it’s good to be back, it’s good to be backと歌われるたびに、ここ日本とオアシスとの長く濃厚で楽しい歴史が際限なく脳裏に去来する。昔からのファンの皆さんは、きっと誰もが「おかえり!」 と心の中で叫んでいたことだろう。曲が終わると、リアムは 「アリガト!」 と日本語で会場に呼びかけた。そして“Acquiesce”の後には、リアムは食べていたタンバリンを優しく会場に投げ入れる。

そして 「ここってマジでいい感じのドームだよな」 と彼が語った後、ヘリコプターの音が流れてきてゲム・アーチャーがおもむろに弾き始めたのは“Morning Glory”のイントロ! 一方で、この曲のギターソロやアウトロの部分はノエルが気持ちよさそうに演奏していた。5曲目は“Some Might Say”、リアムの歌声が絶好調だ。調子がいいことも影響してか、この曲でリアムは会場に向けて投げキッスをし、曲の終わりには片腕で心臓を叩きながら「アリガト!」 と声をかけるなど、ロックンロールスター健在の堂々とした立ち居振る舞いがいい。

そうなのだ、この5曲目あたりで予感が確信に変わったのだが、なんとoasisのライヴ自体が私がカーディフで見た3ヶ月半前よりパワーアップしているのだ! さらに仕上がっている、という言葉の方が正確かもしれない。カーディフで見た際、自分でも疑心暗鬼ながら「もしかしたらこれは私が人生で見た中で最もいいoasisライブかもしれない」 と感じた。現役時のoasisのライブは、時に波があり(たいていリアムの気分と、それに伴うアニキのモードが理由)、プレイリストの精度が期待とは違うなど、好きなライヴの記憶は数多くあるものの「これぞ完璧」 と呼べるものはなかったように思う。
だが、今回の再結成ツアーはそもそもセットリストが最強だ。そのセットリストを固定してツアーを回り、取材を全く受けず、都市を移動する場合は十分に時間をとっている。その配慮こそ、今回の再結成ツアーを成功に導いた秘訣だ。つまり、同じセットリストでライブを重ね、それぞれの土地に行くたび待っていた(もしくは初めて彼らのライヴを体験する)ファンの顔を目にすることで、プロ中のプロであるメンバーたちの演奏はより良くなっていくしかない。年齢を重ねると、若い頃とは注意力のあり方が違ってくる。一点集中で同じセットリストを続けるのは、本当に良い判断だったと思う。

一方で演奏者とは異なり、ライヴを重ねるごとに喉を酷使するのがヴォーカリスト。ソロ活動を始めてからは体調管理などにも気を遣うようになったリアム・ギャラガーではあるものの、喉の調子がツアーを重ねてこれほど上り調子になっていくのは、まさしく管理の賜物だろう。また、続く“Bring It on Down”では改めて、リアムの歌う際の体勢がいかに完璧なものであるかに感銘を受けた。アニキが作った曲に、魂を込める声を発するための最高の姿勢。それゆえに、再結成ツアーのライブ会場がどこも特別な空間になり、皆が満足して帰っていく。
そして驚くことに、再結成oasisではリアムの存在感そのものがとても頼もしい。昔のoasisでも彼の予測不能なヤンチャさと不思議な虚無感は魅力であり、しかし場合によっては弱点にもなった。その後、ビーディ・アイやソロで16年間バンドの中心としての責任を果たしてきた経験と、再結成オアシスでは隣に兄がいる安心感とが双輪となって、リアムのフロントマン感が他に類をみないものになった。

そもそも、今のリアムが醸し出す 「絶対にこのライブをいいものにする」 という覚悟は、彼が野生の人であることを考えると、昔のoasis時代にはあまりなかったように思う。一方で、予測不能な危うさもまた、彼を形作る素晴らしい要素としてちゃんと残っていることを東京ドームでしばしば目にした。たとえばこの夜、マイクから離れて自分の喉の辺りを手で叩き、袖かどこかのスタッフに合図をする姿が2,3回見られた。音響の調子が悪いのか(そんな風には感じなかったが)、他に気になることがあるのか(たとえば今回のツアーで初のアリーナ座席の会場のため、人々が前方に押し寄せてきた他会場とは雰囲気が異なる)、リアムにしかわからない何かが起こっているようでドキドキした。また、アンコールのノエル編が終わった後にリアムがステージに出てくるまで少し時間がかかった(この時「お前、何やってたんだ」 と言いながらアニキが会場にリアムを紹介するという素敵なハプニングも)。この、バンドも自分も破格の成長を遂げつつ、一方で今も予測不能なリアムのあり方こそが、再結成oasisを予定調和ににしない大きな理由だろう。予定調和で予測できるoasisではなく、見ているとドキドキするoasis。全世界の俺たちのキッズたちに、俺たちの名曲を届けにきたoasis。素晴らしいライブにならないわけがない。

同じセットリストを続けているからこその楽しさは他にもあった。たとえば“Cigarettes & Alcohol”の開始時は全員が後ろを向いてポズナン(マンチェスター・シティのサポーターたちが後ろを向いて肩を組むお約束の儀式)をするのが初日からの常で、リアムも今回「椅子があるけど後ろ向いて肩を組んで」と呼びかけた。私の右隣に一人で来ていた10代後半くらいの日本人男性は全てのライブの流れを理解していたようで、左隣で少し戸惑っていた男性にも彼が声をかけて一緒にポズナンができた。そう、こういう祝祭空間はみんなで楽しんだほうがいい。
また、“Live Forever”では普段は途中から亡くなった方の映像が流れることが多いが、25日の東京ドーム公演では無し。一方で、「ここに来れない人たちに捧げる」 というリアムの言葉でこの曲が始まったからこそ、日本の“Live Forever”は特別なものになったように思う。その土地ならではのこういう 「違い」 が、素敵な記憶として残っていく。

実際、今回の日本公演はoasisがやってくるまでの期待感が美しく積み上がっていった様子も記憶に残る。ことにoasisの公式ショップが開かれたMIYASHITAパークは、他にもoasisに関連したショップ群や、セカンドアルバム 『モーニング・グローリー』 のジャケット写真を模したフォトスポットなどがあり、デジタル広告ではひっきりなしにoasisの映像が流れ、モール全体がoasisの聖地となった。SNSでは #lookback25 企画をはじめ多くの人がoasisへの想いを綴り、彼らの来日への期待感がさらに高まった。また、事前に公式ショップなどでTシャツなどを購入できたことから、東京ドームに足を運んだほとんどの人々が何らかのoasisグッズを身につけていた。本当に美しかった。
来日の日程が発表された一年前から、誰もがoasisと共にあった自分の人生や、oasisを彼ら不在の期間に発見したからこその期待感などを思い出すことで、oasisにまつわるそれぞれの物語が円環状になっていった。その想いがピークに達したのが、今回の東京ドーム公演だ。
アンディ・ベルやゲム・アーチャーはすでに我々が知っている通りこの夜も素晴らしく、リアムのソロにも参加していたキーボードのクリスチャン・マッデン、およびボーンヘッド代役であるマイク・ムーアもごく自然に馴染んでいた。また今回のツアー・ドラマーのジョーイ・ワロンカー(アトモス・フォー・ピースなど)が曲に合わせて着実に、それでいて笑顔で力強く演奏している姿も印象的だった。何一つ損なわれていない音楽空間で、期待以上のリアムの歌声が響く。その結果、彼らの曲たちがまるで命そのものを祝福する音楽になっていく。
誰もが知っている“Whatever”、“Live Forever”、“Rock ‘n’ Roll Star”で本編が終わり、アンコールに入ると“The Masterplan”、“Don’t Look Back in Anger”、そして“Wonderwall”。よくぞこれほどの曲たちが生まれてきたなとつくづく思う。最後、まさしく祝祭感に満ちた“Champagne Supernova”でリアムは、右手にマラカス、左手にタンバリンでそれぞれを打ち鳴らしながらリズムを取っていた。そんなことをする人を見たことがない。しかも曲の後でリアムは、マラカスもタンバリンも同時に頭に乗せようと挑戦し始めた。感動した。私たちの予測をいつも超えていく、ロックンロールスターはこの通り健在だ。

リアムは無事に二つの楽器を頭に乗せた後、両手を広げて観客を抱きしめるような仕草をした。そして頭に乗せたままノエルの方に歩み寄っていき、途中で楽器は落ちたが気にせず兄にハグをした。絶対に終わってほしくないライヴが終わる瞬間が、これほど笑えて明るく楽しいとは。まごうことなくoasis。さすがoasis。この夜ずっと、oasisはあの頃の自分たちを自分たち自身で更新し続けた。本当に凄まじいバンドである。

<oasis live ‘25> 10.25 TOKYO DOME セットリスト

SE Fuckin in the Bushes (4th Standing on the Shoulder of Giants)
1. Hello (2nd (What’s the Story) Moring Glory?)
2. Acquiesce (Some Might Say: B side, 1995)
3. Morning Glory (2nd (What’s the Story) Moring Glory?)
4. Some Might Say (2nd (What’s the Story) Moring Glory?)
5. Bring it on Down (1st Definitely Maybe)
6. Cigarettes & Alcohol (1st Definitely Maybe)
7. Fade Away (Cigarettes & Alcohol: B side, 1994)
8. Supersonic (1st Definitely Maybe)
9. Roll With It (2nd (What’s the Story) Moring Glory?)
10. Talk Tonight (Some Might Say: B side, 1995)
11. Half The World Away (Whatever: B side, 1994)
12. Little by Little (5th Heathen Chemistry)
13. D’you Know What I Mean? (3rd Be Here Now)
14. Stand By Me (3rd Be Here Now)
15. Cast No Shadow (2nd (What’s the Story) Moring Glory?)
16. Slide Away (1st Definitely Maybe)
17. Whatever (Non album, single 1994)
18. Live Forever (1st Definitely Maybe)
19. Rock ’n’ Roll Star (1st Definitely Maybe)
Encore
20. The Masterplan (Wonderwall: B side, 1995)
21. Don’t Look Back in Anger (2nd (What’s the Story) Moring Glory?)
22. Wonderwall (2nd (What’s the Story) Moring Glory?)
23. Champagne Supernova (2nd (What’s the Story) Moring Glory?)
【劇場公開中作品情報】
<キャリア絶頂期、伝説の25万人ライヴが、最新技術で圧倒的な臨場感と共にによみがえる!>
『オアシス|ネブワース1996:DAY2 Sunday 11th August(読み:ネブワースいちきゅうきゅうろくデイツー)』
【劇場用4Kデジタルリマスター版】
全国劇場にて絶賛公開中
配給:カルチャヴィル 協力:ソニー・ミュージックレーベルズ
公開劇場他詳細はこちら ⇒ https://www.culture-ville.jp/oasisknebworth0811
『モーニング・グローリー:30周年記念デラックス・エディション』

<2ndアルバムにしてUKロックの金字塔に “新“ 曲 5曲を追加した豪華新装記念盤> NOW ON SALE
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CD1 『モーニング・グローリー』オリジナル・アルバム(全12曲)
CD2 アディショナル・トラックス(全5曲)
■豪華ハードカヴァー・デジブック×三方背スリーブケース仕様
■日本盤のみの仕様
高品質Blu-SpecCD2仕様|英文ライナー訳|歌詞対訳(全曲いしわたり淳治による新対訳)|2025年新規解説:妹沢奈美/田中亮太3LP 1000セット完全生産限定盤(輸入盤国内仕様):SIJP223~225 ¥16,000(税込)
■日本盤のみの仕様
2025来日公演日程入り帯付き|英文ライナー訳|歌詞対訳(全曲いしわたり淳治による新対訳)|2025年新規解説:妹沢奈美/田中亮太
【ポップアップ・ショップ<Oasis Live ‘25 Tokyo Fan Store>情報】
開催期間:2025年11月2日(日)まで開催中
営業時間:11時~21時
開催場所:MIYASHITA PARK内 1階「Park in Park」
住所:東京都渋谷区神宮前六丁目20番10号 他
入場料:無料
※入場は基本的に予約制:https://reservation-system.jp/s/oasis25
ポップアップ・ストア開催期間中は、MIYASHITA PARK内がOasis一色に!アルバム 『モーニング・グローリー』 のジャケット再現や、「リヴ・フォーエヴァー」 MVいち場面再現のフォトスポット等に加え、1階遊歩道にはオアシスの名曲の歌詞がアート化した<リリック・ワンダーウォール>も登場。日本語対訳はいしわたり淳治氏が手掛けている。