『ゴダール展』(ジャン=リュック・ゴダール《感情、表徴、情念 ゴダールの『イメージの本』について》展)が東京・新宿歌舞伎町の王城ビルにて7月4日(金)から8月31日(日)まで開催される。
2018年に発表されたジャン=リュック・ゴダール(Jean-Luc Godard)監督最後の長編作品である映画『イメージの本』(英題:The Image Book)を映像インスタレーションとして再構成した同展。『イメージの本』は、1世紀以上にわたる歴史、戦争、宗教、芸術などの変遷を様々な映画の引用でコラージュし振り返る5章立ての作品で、『第71回カンヌ国際映画祭』でパルムドールを超越する賞として初めて設けられたスペシャル・パルムドールを受賞している。
同展では映画の各章をさらに断片化し、引用されていた映画の順序が変化する映像を、会場内に多数設置されたスクリーンに投影、展示。来場者は、映画上映の時系列的な束縛を打ち破った映像や音の断片を通じてゴダールの思考に入り、ゴダールの眼で世界を見つめる体験ができる。
アーティスト兼キュレーターは、2010年の映画『ゴダール・ソシアリスム』(原題:FILM SOCIALISME)から撮影、音響、編集を手掛け、晩年のゴダールの右腕であったスイスの映画作家のファブリス・アラーニョ(Fabrice Aragno)が務める。映画『イメージの本』のプロデューサーでもあるアラーニョは同展について、「『イメージの本』の編集室を拡大し、映画のなかの世界のように拡張させたもの。観客は自分で映画のプロセスを選択し、観客自身が時間のカーソルとなって、まるで森のような映画空間を散策できる」と語っている。

海外で開催された同展を観覧した著名人が、その体験や空間の特徴について語ったメッセージも寄せられている。
堀 潤之(映画研究者)
ゴダール最後の長篇『イメージの本』が空間に放たれ、
映画・絵画・書物の断片が交錯する映像インスタレーションとして立ち上がる。
迷宮のような展示空間を歩くその体験は、
彼の思考の森を彷徨う、またとない時間になるだろう。
濱口竜介(映画監督)
一昨年秋にリスボンで、ジャン=リュック・ゴダールが遺した映像音響素材を、ファブリス・アラーニョが構成する本展示を見る機会を得た。
幾重にも重なる映像のただなか、音声が複数の空間を浸透させ合う。それはSon-Image(音-映像)の海に潜るような体験だった。
これがゴダールの頭の中? それは誰にもわからない。ただ、今も時折そのダイバーズ・ハイのような感覚を反芻している。
またあそこに行きたい。
渋谷慶一郎(音楽家)
「物凄い精度の適当さーこの世界が失われる前に」
2023年の11月、僕はリスボン映画祭のクロージングイベントでコンサートを行い、その翌朝、ファブリス・アラーニョに彼がキュレーションした「イメージの本」についてのインスタレーションを案内してもらった。それは後期ゴダールの作品と同様に、部分と全体という二項対立を無化し、物凄い精度の適当さというこの世界から失われつつある幻のように美しく凶暴な空間だった。
僕はこの作品はもう観れないと思っていた。だから断言しよう、この展示は絶対に見逃さない方がいい。
杉田協士(映画監督)
そこに永遠に座っていたかった。
ドイツ、スイス等でも開催され、各会場の特徴をいかした空間を作り上げてきた同展。城を模した独特のデザインで知られ、歌舞伎町の歴史を1964年の竣工以来見守ってきた王城ビルでの開催となる今回も、会場の魅力とゴダールの芸術性を引き出す展示空間が構築される予定となっている。


同展では開催を支援するクラウドファンディングを5月31日(土)まで実施中。リターンには、1500部限定で印刷後の工程(紙の裁断からスタンプを押すまで)を全てファブリス・アラーニョが手作業で制作した『イメージの本』脚本ノートのレプリカブックなどが用意されている。
会期中の8月には、ゴダールの死の前日に完成した映画『シナリオ』が公開予定。コラージュ技法による18分の本編と、ゴダール自身が制作ビジョンを語るドキュメンタリー映像の2部で構成される同作のキャストには、ファブリス・アラーニョも名を連ねている。
ジャン=リュック・ゴダール《感情、表徴、情念 ゴダールの『イメージの本』について》展 Sentiments Signes Passions, à propos du Livre d’image, J.L. Godard
会期|2025年7月4日(金)~8月31日(日)
会場|王城ビル(新宿区歌舞伎町1-13-2)
主催|《感情、表徴、情念 ゴダールの『イメージの本』について》展 実行委員会
チケット料金|一般2,200円(税込)
企画|カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社、パラダイス商事株式会社
後援|在日スイス大使館、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ、新宿区
アーティスト / キュレーター|ファブリス・アラーニョ(Fabrice Aragno)
アシスタント&コキュレーター|槻舘南菜子
キービジュアルデザイン|北山雅和
一般チケット|ART PASSにて6月より販売
公式Instagram|https://www.instagram.com/godardtokyo
『シナリオ』
監督
ジャン=リュック・ゴダール
キャスト
ジャン=リュック・ゴダール
ジャン=ポール・バッタジア
ファブリス・アラーニョ
54分|カラー|フランス語|日本語字幕(英語字幕なし)|2024年|フランス/日本|ねこじゃらし