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xiangyu(シャンユー)インタビュー 核にあるのは「遠慮のかたまり」を面白がる好奇心

2025.4.25

xiangyu『遠慮のかたまり』

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いつからか、注文も支払いも機械で完結できるようになり、居酒屋のメニューを眺めてラインナップを吟味することも、近所のコンビニ店員とちょっとした会話を交わすことも珍しくなってしまった。大きなイベントが必要というわけではないけれど、「生産性」という大義名分のもと、ささいな余白も失った生活はなんだか少し物足りない。

ソロアーティスト・xiangyuの1stアルバム『遠慮のかたまり』は、どうでもいいことを理由もなく愛でる自由を歌う作品だ。テーマは、アルバム名の通り「遠慮のかたまり」。かつてデビューEP『はじめての○○図鑑』で、いつも行ってるコンビニエンストアの見慣れた店員との以心伝心のやりとりを歌った彼女は、またしても、誰もが知っている「食卓に食べ物が一つだけ残っている」光景をテーマに対話を重ね、初のアルバムを完成させた。

自身の音楽は「メッセージを伝えるためのものではない」と笑い飛ばすxiangyuだが、根底には知らないことを一つでも多く知りたいという好奇心と、どうでもいいことが当たり前に存在できる世の中への強い思いがあった。アルバムテーマとの出会いや自身の音楽活動の信念、初めてフィーチャリングゲストを迎えて行われたアルバム制作について伺った。

『遠慮のかたまり』は前作EP『OTO-SHIMONO』が引き寄せた出会いがきっかけで生まれたアルバム

ー改めて1stアルバムのリリースおめでとうございます。セルフタイトルを掲げるアーティストも多いなか、『遠慮のかたまり』というテーマを1stアルバムのタイトルにしたのがxiangyuさんらしいなと思いました。資料によると、現代美術家の光岡幸一さんが教えてくれたようですが、まず、このテーマに出会ったきっかけを教えてください。

xiangyu:そもそものきっかけは、落とし物をテーマにしたEP『OTO-SHIMONO』(2023年11月リリース)をリリースした時でした。EPを通して、現代美術家の光岡幸一さんが私のことを知ってくださったみたいで。光岡さんのファンだったことと、当時J-WAVEのラジオ番組で東京の面白い場所などのイベントを紹介するコーナーを私が担当させてもらっていたので、光岡さんの個展が東京で開催されるタイミングで取材に伺ったら、すごく仲良くなったんです。

その縁で、後日彼が渋谷でやる展示のトークショーに誘ってもらいました。てっきり、展示の話をするんだろうなと思ってたんですけど、全然そんなことなくて(笑)。「落とし物」を音楽に昇華していることが、似たような着眼点で美術作品に落とし込んでる彼に刺さったらしく、「美術作品よりも世の中に届きやすい手法でやってるのがすごい」と褒めてもらったんです。その時に「この人は(感覚が)めっちゃ近い人なんだな」と思いました。

xiangyu(シャンユー)
2018年9月からライブ活動を開始したソロアーティスト。2019年5月に初EP『はじめての○○図鑑』をリリース。2023年11月には、Gimgigamをサウンドプロデュースに迎えてアマピアノやゴムなどのジャンルを取り入れたEP『OTO-SHIMONO』を発表。音楽以外にも、ファッション、アート、映画出演、執筆など多方面で活動の幅を広げ、2022年には映画『ほとぼりメルトサウンズ』で主演と主題歌を担当し、初の書籍となる『ときどき寿』を出版。2025年4月に1stアルバム『遠慮のかたまり』をリリースした。

ー前作のEPのリリースを通して、近い視点を持つ人に出会えたんですね。「似たような着眼点」とは具体的にどんなものだったんでしょう?

xiangyu:「こういう写真を集めてるんですけど」って、食べ物が1つだけ残ったいわゆる遠慮のかたまりの写真を光岡さんが何百枚も集めているのを見せてもらって。「シャンさんだったらこの写真で何をしますか?」と聞かれたんです。食卓の知ってる「あの」光景に遠慮のかたまりという名前があることも知らなかったからすごく衝撃的で、「私だったら音楽にします」とその場で言ったら、「じゃあ、なんか一緒にやります?」という流れに自然となりました。

ーそういう口約束でアルバムが生まれることってあるんですね(笑)。最初からアルバムにするアイデアもあった?

xiangyu:最初は“遠慮のかたまり”っていう名前で1曲だけ作ろうかなとか思ったんですけど、『OTO-SHIMONO』と同じ手法で、収録曲が全部テーマから派生した食べ物関連のまとまった作品になったらおもしろそう、みたいなことをぼんやり思ったことは覚えてます。

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