メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

ポーラ美術館ライアン・ガンダー展レポート 箱根で世界への「問い」をムニムニする

2025.6.30

#ART

世界は問いに満ちている

B2階展示風景

B2階展示室、写真右手の展示ケースの中には、ビリヤードボール大になった先ほどの黒いボールが大量に陳列されている。これらは『おばけには歯があるの?(答えばかり求める世界での問い)』というひとつの作品だ。ボールに書かれた質問や指示はひとつひとつすべてが異なる。

『おばけには歯があるの?(答えばかり求める世界での問い)』(2025年)

例えば、「Does everything have a spirit(全てのものは魂を持っているの)?」「Why has art become so boring and predictable(どうしてアートってクソありきたりで退屈なものになってしまうの)?」……などなど。個人的にグッときたのは「Why do people vote for bad people(なんで人は悪人に投票してしまうの)?」で、思わず吹き出してしまった。どれも、調べたりAIに尋ねたりして正答がわかる種類のものではない。「Can you make pancake pie(パンケーキパイ作れる)?」なんかはその極みで、人によって答えが違う。

便利な社会を否定する気はないけれど、いつでも気楽に答えが手に入るからこそ、知りたいという気持ちが強く練り上げられることは少なくなっているような気がする。このボールのように答えの見えない問いを抱くことは、私たちがこの現実世界に執着する上でとても大切なことなのかもしれない。

『おばけには歯があるの?(答えばかり求める世界での問い)』(2025年)

奥に進むと、さらに膨大な量のボールが! 壁三面を埋め尽くすボールを前に「多っ!」とのけぞったり、苦笑したりしている鑑賞者も多かった。数の多さを畳みかけて驚かせる、作家のユーモアが感じられるような展示構成だ。

問いに対して答えを得るだけでは、同じような問いが無限に浅く増殖し続けていくだろう。数学の解答集を見ても、解き方を理解しなければ何も解決しないのと似ている。きっと、答えの背後に流れるものを見なければいけないのだ。

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS