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ポーラ美術館ライアン・ガンダー展レポート 箱根で世界への「問い」をムニムニする

2025.6.30

#ART

琵琶法師のように小鳥は語る

1階(アトリウム ギャラリー)展示風景

1階のアトリウム ギャラリーに入ると、ワクワクするような空間が広がっている。まず左手の壁に掛かった灰色の鳩時計に注目したい。こちらは『生産と反復を繰り返しながらも君は自由を夢見ている』という作品だ。定められた時刻になると、時計の中からアニマトロニクスの色鮮やかな小鳥(ゴシキノジコ)が現れて、鑑賞者に向けて語りを始める。

『生産と反復を繰り返しながらも君は自由を夢見ている』(2025年)

その内容は、ハリウッドの大作映画になりそうな人々と神の「時」に関する寓話である。感覚のままにその時・その場所を生きていた人間たちが、貯め込むことを覚え、数と時間に支配されるようになり、存在の不安に怯えるようになった……自己修復のためにニュータイプの人類が送り込まれ、既存の世界は終わりを迎えようとしている……と、琵琶法師のように小鳥は語る。ものすごく壮大である。

タイトルになっている「あなたたちは繰り返し生み出し続けながらも、自由を夢見ている」は賢者然とした小鳥が鑑賞者に向かって言うセリフだが、作者は先ほどのカエルに「機械は反復し、効率的です。でも、自由を夢見ている(中略)それって、まるで今のあなたたちみたい」とも言わせている。つまり、生活や仕事のルーティンをなぞりながら「なんだかなぁ〜」とぼんやり自由を夢見ているのは、私たちであり、この鳩時計に囚われた機械の小鳥でもあり、鑑賞者と作品の間に線引きは無いのである。そう考えると、「こんなにきれいな羽があるんだから、ぐだぐだ言ってないで飛んでいけばいいのに」という小鳥への感想がそのままブーメランになって返ってくるようだ。

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