日曜劇場の叡智が詰まった競馬ドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』が描く大人の夢に涙する

重厚な芝居の中で際立つ妻夫木聡のピュアな表情

佐藤浩市や尾美としのり、木場勝己、黒木瞳など、百戦錬磨のベテラン俳優が揃う『ザ・ロイヤルファミリー』。そんな作品の中心にいるのが、40代半ばとなった妻夫木聡だ。NHK連続テレビ小説『あんぱん』（NHK総合）での、戦争の悲しみを背負い続けた八木信之介役が記憶に新しい妻夫木だが、栗須役は逆に、人の思いを掬い集めて背負う存在だ。八木とは正反対とも言える役柄だろう。

栗須がレースを見届けるときの表情は、そのレースに勝っていても負けていても、誰かに影響されて泣いているのではなく、自分の中から溢れてきた思いが止まらなくて、涙が流れてしまっているように見える。馬に関わる人たちの思いを受け止めて、抑えきれずに涙しているのだろう。人々がかける馬への思いに共鳴してしまう素直で情が深い人間だ。

妻夫木が栗須として泣くときの、眉根を寄せ、口を引き結び、耐えきれずに涙する表情はどこか子どものようだ。そんな子どものような泣き顔に理屈はなく、ただ勝って欲しい、誰かの気持ちが報われて欲しいという無垢な感情が見える。ベテラン俳優たちの重厚な芝居の後に、妻夫木のピュアな表情が映し出されるからこそ、大人が見る夢の高潔さに説得力が出ているのだろう。