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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

OGRE YOU ASSHOLE×Cornelius対談 近そうで遠い、両者を繋ぐもの

2025.6.4

#MUSIC

音楽制作へのAI導入、積極派の小山田圭吾、慎重派の出戸学

―シンセのことやステージの作り方にもそれぞれの違いが浮かび上がってくるように、テクノロジーとの対峙の仕方に両者の間で微妙な差異があるのがわかりますね。

出戸:たしかに。

―不思議と、年下の出戸さんのほうがアナログ指向が強めで、片や小山田さんはもっと前進志向なところがあるというか。

小山田:そうかもしれない。

―ずばり伺いますが、お二方は音楽制作におけるAIの技術の導入についてはどう考えていますか?

出戸:例えば、The Beatlesが最近の再発盤でやっているような、ステレオミックスからAIを使って特定のパートの音だけで取り出す、みたいなもの(デミックス)ならひとつのツールとして有効なのかなと思います。

でも、コード進行から歌詞、アレンジまで全部をプロンプトひとつで生成できてしまうような方法には、さすがに手を出せないなという気持ちがあります。

デミックス技術が活用されたThe Beatles『Revolver』スペシャルエディション(2022年)収録音源

小山田:そんなことを聞いた手前ちょっと言いづらいんだけど……僕は今めちゃくちゃハマってます(笑)。個人的にいろいろ試している最中で。

出戸:どう使っているんですか?

小山田:無数に生成して、それをパラデータにして、リミックスして、さらにそれを自分で演奏し直して、もう一度打ち込んで……みたいな。

―なるほど、AIの出してきたものをひとつの素材として考えて……。

小山田:そうじゃないと本当に何の創造も加わってないことになってしまうから。リミックスの機能も面白いですよ。元素材をどれくらい残すかをパーセンテージで指示できたり、ジャンルを変えられたり。手持ちの2ミックス音源で無限に遊べるし、自分の過去の音源をいじってみたり。ここ数か月でそのあたりの技術もめちゃくちゃ進化しています。

出戸:そういう使い方の場合は、あくまで小山田さんが創造の主体だから面白さを理解できます。

小山田:でも、そのうち「AIがやるようなことを避けて、あえてこうしてみた」みたいな、「創造的」なやり方すらも完璧にこなしちゃうAIができるかもしれないよね。

―そもそも、人間の「創造」のメカニズムも、多くの部分は、AIがやっているような大量学習と、それを元にしたアウトプットの構造と似通ったものだという考え方もありますね。

小山田:そうそう。プロセスはそんなに変わらない可能性があるわけで。

―実際、テキスト生成の分野では、「文脈の裏切り」とか「誤配」みたいなものが実装されつつある気配を感じます。

小山田:音楽の場合、まだまだ本当にビックリするようなものは出てきてない印象だけど、この先どうなるやらわからないですよ。映像系が顕著だと思うけど、妙なエラーが逆に面白いみたいなのはありますからね。

でも、そういうノイズみたいなものですら、最初から緻密に狙った上で生成できるようになるかもしれない。逆に言うと、あと何年かしたら、「2025年頃のあの天然のエラーの感じが絶妙だったんだよな」みたいに「ビンテージAI」みたいな概念が出てきたりとか(笑)。

―グリッチにノスタルジーを感じるみたいな感性の進化系として。

小山田:そうそう。だから、今はまだ過渡期という感じがします。単純に、音楽生成の場合、音質の問題もまだまだ残っていますしね。リミックスができるAIも、帯域の被りがすごくて。それを補正するための人間の作業がまだ必要。

―ライブで活用する可能性もありますか?

小山田:どうだろう。生成に時間がかかるからその間待たなきゃいけないし。

出戸:たしかに。

小山田:インプロヴィゼーションに取り入れるとかは面白いかもしれないよね。どんどん変わっていく音に合わせて即興をしていく、とか。

出戸:でも、小山田さんがそんなに積極的にAIをいじっているとは知りませんでした。

小山田:最近ミュージシャン同士で集まるとこういう話題になることが多いんだけど、みんな割と消極的で。僕の周りだと面白がっているのはテイ(・トウワ)さんくらいかも。やっぱり、根本のところでAIを使うということに罪悪感を抱いちゃうんですよね。それは少なからず僕も同じなんだけど。

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