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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

OGRE YOU ASSHOLE×Cornelius対談 近そうで遠い、両者を繋ぐもの

2025.6.4

#MUSIC

「インディーロック」への感覚から浮かび上がる差異

小山田:USインディー以前にも何か洋楽を聴いたりしてたの?

出戸:親父がThe Beatles世代で、ロックは一応聴いてました。でも、割とすぐにNirvanaとかBeckとか、オルタナ系にいったので、ベースにはそういうインディーロックがある感じです。

小山田:そうなんだ。僕はBeckとかカート・コバーン(Nirvana)とかと同じ世代だから、自分が若い頃は、彼らが憧れていたようなもっと上の世代のものを聴いてた。多分、スティーヴン・マルクマス(Pavement)も、僕と同じでEcho & the Bunnymenとか大好きなんじゃないかと思うんだけど。

1980年代から1990年代頭あたりまでは、UKをたくさん聴いてたけど、出戸くんと同じで、1990年代半ば以降はUSが面白くなってきた感じですね。

Cornelius(コーネリアス)
1969年東京都生まれ。1989年、フリッパーズギターのメンバーとしてデビュー。バンド解散後、1993年、Corneliusとして活動開始。2023年6月、7thオリジナルアルバム『夢中夢 -Dream In Dream-』を発表。同年10月より開催された『AMBIENT KYOTO 2023』に参加し、カセット作品『Selected Ambient Works 00-23』をリリースした。2024年に活動30周年を迎え、6月26日に近年発表してきたアンビエント色の強い作品を中心に再構築した作品集『Ethereal Essence』を発表。自身の活動以外にも、国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広く活動中。
Echo & The Bunnymen『Ocean Rain』(1984年)収録曲

―逆に、出戸さんは1980年代当時に小山田さんが聴いていたようなネオアコ、ネオサイケ系は通ってない?

出戸:うーん、あんまり聴いてないかな。

小山田:そのあたりって、僕より下の世代の音楽ファンの関心から抜け落ちている感じがする(笑)。いろんなところで話しているけど、特にEcho & the Bunnymenの今の人気の低さにはビックリするところがあって。The CureとかU2と同格か、もしかするとそれ以上でしたからね、当時の人気は。

出戸:あんまりピンとこないかもです。

―出戸さんはきっと、リアルタイムより前のUSインディーものは後追いで聴いていますよね。例えばHüsker Düとか、Minutemenとか……。

出戸:そこまでたくさん聴いたわけじゃないけど、UKに比べればそうですね。特に好きだったのは、Fugaziかな。

小山田:同じイアン・マッケイでも、僕はその前のMinor Threatに影響を受けている世代。高校の頃、Minor Threatのコピーもやってましたから。

Fugazi『13 Songs』(1989年)収録曲
Minor Threat『First Two Seven Inches』(1984年)収録曲

―そういう世代間の関心の違いって、細かい話と思いきや、個人の音楽観の形成っていう意味でもかなり重要ですよね。例えば、出戸さんとか僕の世代にとっては、スティーヴ・アルビニは既に「名プロデューサー」っていう感じだったけど、小山田さんにとっては……。

小山田:それより先に「Big Blackの人」というイメージ。

―ちなみに、初期のオウガにとって最大のインスピレーション源になっていたのって、どんなアーティストだったんですか?

出戸:Thinking Fellers Union Local 282っていうアメリカ西海岸のローファイ系のバンドですかね。ごく狭い友達の間で、異様に人気が高くて。

小山田:知らないバンドだ。

出戸:ライブを始めてまだ間もない頃にPANICSMILEと対バンしたときに、石橋英子さんに「(Thinking Fellers Union Local 282に)似てるね」って言われたのを覚えてます。

OGRE YOU ASSHOLE(オウガ・ユー・アスホール)
メロウなサイケデリアで多くのフォロワーを生む現代屈指のライブバンドOGRE YOU ASSHOLE。00年代USインディーとシンクロしたギターサウンドを経て、サイケデリックロック、クラウトロック等の要素を取り入れた「homely」「100年後」「ペーパークラフト」のコンセプチュアルな三部作で評価を決定づけた。『FUJI ROCK FESTIVAL』では、WHITE STAGE(2014年)、RED MARQUEE(2022年)のステージにそれぞれ出演。2024年9月、新作『自然とコンピューター』をリリースした。
Thinking Fellers Union Local 282『Strangers from the Universe』(1994年)収録曲、リリースは「Matador」より

―Modest Mouseの存在も大きいですよね? バンド名の由来にもなっているというエピソードがありますが。

小山田:へえ、そうなんだ。

出戸:Modest Mouseが松本に来たとき、当時のドラマーの腕に「Ogre You Asshole」ってサインをもらったんです。なんでそんなことを書いたのかは未だによくわからないんですけど(笑)。ちょうど2週間後にライブが決まっていたので、じゃあこれをバンド名にしちゃおうか、と。

小山田:かっこいいエピソードだな。

―Modest Mouseには、2006年から2009年にかけて、小山田さんのヒーローでもある元The Smithsのジョニー・マーが在籍していましたよね。加入のニュースが流れたときにはかなり驚きました。

小山田:そうそう。ジョニー・マーがModest Mouseに在籍していた当時、彼らが出る『All Tomorrow’s Parties』にCorneliusも出演したことがあって。

出演者みんなで同じコテージエリアに泊まるんだけど、朝、歯を磨いていたらジョニー・マーが目の前を歩いていて、「うわ!」ってなった思い出があります(笑)。その後にもちらっと会ったことあるんですが、兄貴肌のめちゃくちゃいい人でした。

ジョニー・マーが参加したModest Mouse『We Were Dead Before the Ship Even Sank』(2007年)収録曲

出戸:実は僕、前にジョニー・マーと対談(※)したことがあって。初期のオウガのことを気に入ってくれてたみたいで。

小山田:いいな、すごい。

出戸:そのときに、僕らのことを「45回転で再生したCANのようだ」って言ってくれたんです。

小山田:おお、さすが。

出戸:その頃は、CANとかドイツの音楽も一応聴いていたにせよ、そもそも自分たちがやれるタイプの音楽とは思ってなかった時期で。

※2010年に『COOKIE SCENE』のウェブサイトに掲載、現在は閲覧不可

OGRE YOU ASSHOLE『フォグランプ』(2009年)収録曲

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