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荘子itが見た『メガロポリス』 フランシス・フォード・コッポラの怪作からの自由連想

2025.6.20

#MOVIE

『ゴッドファーザー』『地獄の黙示録』など数々の作品で知られる巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督が、40年の構想の末、私財を投じて制作した最新作『メガロポリス』が、6月20日(金)に日本公開となる。

SF、政治劇、家族の物語、古代ローマをモチーフにした現代社会批判——様々な表情を持ち、キッチュなエンターテイメント作品のようでも芸術映画のようでもある風変わりな本作は、『カンヌ国際映画祭』でスタンディングオベーションを起こした一方、『ゴールデンラズベリー賞』で最低監督賞と最低助演男優賞の2冠を獲得。鑑賞した映画ファンからは困惑の声が聞こえる。

コッポラ作品のファンを公言するラッパー / トラックメイカーの荘子itは、本作をどう見たのか。この怪作について、コッポラについて、自由に綴ってもらった。

※本記事には映画本編の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

鳩時計のような冒頭と、閑古鳥の故事

時計の秒針を思わせるサウンドトラックと共に、あたかも巨大都市の中心にそびえ立つカッコー時計(日本ではカッコー=閑古鳥が鳴くのは不吉とされ、鳩時計として普及した)のように、細長く巨大な建造物からカエサル・カティリナが身を投げ出す。「時よ止まれ」この映画の中で繰り返される最も印象的な台詞をカエサルが口にすると、その言葉通り、周囲の時間の流れが止まり、文字通り閑古鳥が鳴くような静寂が訪れる——

これは『メガロポリス』の冒頭のシーンを記したものだが、閑古鳥の比喩が通じるのは日本だけで、しかし日本で普及しているのは前述の通り鳩時計なのだから、この文章が成立していること自体がある意味では異様なことである。また、中国の伝説には、君主・尭の治世があまりに善すぎて、民が不満を知らせるための太鼓が無用の長物となり、鳥が住み着いた=閑古鳥が鳴いた、という話もあり、この映画においてカエサルがニューローマ市を善き方へ導くこととも響き合う。これらは全て監督のフランシス・フォード・コッポラ自身が意図したことではないだろうが、いずれにせよ、この特異な状況(映画と、それについて書く僕自身の出会いも含めた全て)を祝福したい。

僕の名前は荘子itで、荘子にitをつけてソーシットと読むという、英語圏でも中国語圏でも通じない(中国では荘子を庄子と書くし、そもそも「そうし」と読まない)日本だけで通じるジョークを名前にして仕事をしているくらいだから、このような無為な言葉の戯れが織りなす不思議な状況の成立に、単なる面白さを越えた高揚感を覚えてしまう。

カエサル・カティリナ(アダム・ドライバー) © 2024 CAESAR FILM LLC ALL RIGHTS RESERVED

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