6月6日(金)より映画『MaXXXine マキシーン』が公開中だ。本作は、タイ・ウェスト脚本・監督によるホラーシリーズで、2022年の『X エックス』と『Pearl パール』に続く3部作の完結編となる。
『MaXXXine マキシーン』の物語は単体でも楽しめるようにはなっているが、それでも『X エックス』『Pearl パール』を事前に見ておくことを強くおすすめする。なぜなら、3部作を通じてアメリカの映画、特に「ポルノ映画史」「ホラー映画史」を振り返る構図があり、今回の『MaXXXine マキシーン』は、その「総括」とも言える位置付けだからだ。
何より、各作品でミア・ゴスが演じてきた主人公の姿を追ってこそ、本作の物語はより深く、感慨深いものとなる。ここでは『MaXXXine マキシーン』を最大限に楽しむために、まずは『X エックス』と『Pearl パール』の内容を振り返り、今回の魅力にも触れておこう。なお、いずれも刺激的なゴア表現および性描写があるため、R15+指定がされていることにはご注意いただきたい。
※本記事には『MaXXXine マキシーン』『X エックス』『Pearl パール』の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
INDEX
『X エックス』ーー70年代風ホラー映画のオマージュとエイジズムの呪い
舞台は1979年のテキサス。女優志望のマキシーンを含む6人の若者たちがポルノ映画の自主制作のため、農場を訪れる。そこにはなにやら不気味な老婆がいた。やがて彼らは、また1人また1人と姿を消していく——。『X エックス』はそんな、『悪魔のいけにえ』(1974年)をはじめとした1970年代風ホラー映画へのオマージュが随所に施された作品だ。殺人鬼との一進一退の攻防など、クラシックなホラーの快楽をシンプルに楽しめるだろう。
老婆は確かに殺人鬼ではあるが、「エイジズム」を体現する、哀れな人物に見える。ミア・ゴスが特殊メイクで老婆に扮し、主人公のマキシーンと「1人2役」になっていることも、その残酷な「対比」にも思える。歳を取ることを安易に揶揄しているというよりは、その「呪い」に老婆が囚われているようでもあり、その切実な心情の掘り下げはとても悲しい……と同時に、かなり露悪的な描写で見せていくので、同情すればいいのか、おぞましく思えばいいのかわからなくなり、困惑する。ここは賛否が分かれる描写ではあるだろう。
また、登場人物たちが撮影している「映画内映画」と現実の惨劇が交差する編集や演出も面白い。「この作品自体が映画だ」とあえて観客に示すような、メタフィクション的な構造を備えているともいえるだろう。
なお、タイトルの『X エックス』はアメリカ映画の1990年までのレーティング「X指定(日本の18禁相当)」の他、劇中でも言及がある通り不確定要素の「Xファクター」、性描写や暴力性を強く描写する低俗な作品群を指す「エクスプロイテーション映画」を意味していると思われる。完結編となる『MaXXXine マキシーン』の「XXX(トリプルX)」はポルノビデオの意味だろう。それを意識して、「キレ味抜群」のラストシーンを見届ければ、より味わい深いタイトルと思えるかもしれない。