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君島大空『音のする部屋』全曲解説——J-POPの共感性、歌詞表現への苛立ちとともに語る

2025.6.2

#MUSIC

5. “迎”——初めて書かれた<愛してる>という歌詞の背景

―これまでの4曲はサウンド的に外に開いている気がしますけど、“迎”は内に向いているように感じました。

君島:そうですね。また部屋の感じに戻っている感じがします。これは単純に耳障りのいい甘ったるい曲は作ったことないので作りたいと思いました。

―特殊な曲が続く流れが、ここで切り替わる感じがあります。

君島:口直しできる感じかもしれませんね。このEPは“Lover”だけ切り離されていると思うし、そこが好きなんですけど、その前に急にふわーっとした曲があると面白いかもしれないと思って。

―この曲にも登場人物が2人いる感じがしますが、“Lover”に繋がる景色なんですか?

君島:いや、そういうわけじゃないです。落ち着ける部屋にいるけど、微妙に距離感や価値観が合わないけど許せてしまえる、お互いの気持ちの矛盾の波を、心地よさに変換しながらダラダラしている2人、みたいな。

―共依存的な関係性?

君島:そうそう。行き場がないけど、ここが居場所で、最果て感がある景色ですよね。歌詞の中で「うざい」っていつか言いたくて、この曲で言えました。

―歌詞には<愛してる>とあって、それが「love you」と歌われています。君島さんは「愛してる」と歌うことはできないと過去の取材で語っていて、その「愛してる」とこの曲のものは意味も言葉のありようも違うものですよね。

君島:そうですね。これもちょっと皮肉っぽい。多分、この「愛してる」は軽いものですよね。

―愛の定義が曖昧なまま放たれた「愛してる」というか。

君島:そうそう。この現状を繋ぎとめるための言葉。“迎”は、迎合する、相手に合わせに行くみたいな意味で使っています。心地よくてお互いいやすいんだけど、どこかでずっと気が抜けず、繋ぎとめ合い続けている景色。この曲は自分と人との距離感のバグそのものについて書いていると思います。

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