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君島大空『音のする部屋』全曲解説——J-POPの共感性、歌詞表現への苛立ちとともに語る

2025.6.2

#MUSIC

「幽霊」や「天使」という言葉を使って、何を表現しているのか

―「幽霊」という言葉は『袖の汀』(2021年)から明確に使われていますが、この言葉を使うのは音楽の「動機」との関係性から?

君島:そうですね。僕は、亡くなった人が幽霊になっていたらいいとは思っているし、辞書には載ってない、もっと知らないもの、でもすごく身近なものかもしれない曖昧なものとして「幽霊」の定義をしたい。

でもその「幽霊」が何かは聴いた人が選べるようになっていたらいいなと考えました。人によっては念とかトラウマみたいなものかもしれないし、2曲目の“WEYK”で出てくる「幽霊」と、“白い花”(『袖の汀』収録曲)のはまた違うものだと思いますし。“Lover”で使った「天使」はもっと曖昧なものだなと思います。

―“除”には、“Lover”と対応するように<天使になんかしないぜ>という歌詞があります。そうやってこのEPでは、解釈可能な幅を残しながらも「天使とは何か」を曖昧にしない態度を示していますね。

君島:そういう作りにしました。「君は天使だ」みたいな歌詞が俺は許せないんです。かわいいものを見ても天使って言うし、死を美化するときも天使って言うし、崇高なもののイメージとしても天使は使われるけど、一度考え直そうよと思う。例えば西洋の文化だと、天使と悪魔ってシームレスに繋がっているじゃないですか。

―そうですね。大天使ミカエルと堕天使ルシファー(悪魔の王・サタンの別名)はどっちも天使だけど、殺し合っています(笑)。

君島:そんなJ-POP聴いたことない(笑)。

―<天使になんかしないぜ>というのは、あなたがあなたであることをありのまま受け入れる、ということでもあるわけですよね。

君島:そうそう。例えば、亡くなった共通の知人の話をするとき、生きている僕らがその人を「人として扱ってない」と感じることが多いんですよ。「あの人、ああだったからね」って過去形になりがちだけど、僕は「あの人、ああだよね」って同じラインに置きたいし、そうじゃないとフェアじゃないと思う。

そうやってもう会えなくなった人を無闇に美化せず、ちゃんと対等に目を見て向き合い続けることは、自分の音楽の持ち場を守ることに繋がる姿勢だなと最近思います。

―そのこと自体、君島さんが『午後の反射光』からずっとやってきたことですよね。

君島:うん。ずっとやっていることだし、変わらない。

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