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「変わってしまった世界」をどう生きていくか

生きていく上で、私たちは変わらずにいられない。あるいは、自分自身が変わらないつもりでいても、私たちを取り巻く世界は常に大きく変化している。冒頭に述べたように、本作の根底にはそんな世界に対する「寂しさ」の認識がある。考えてみれば平屋が舞台である本作において、平屋の本来の主であった「ばーちゃん」ことはなえ(根岸季衣)の死から始まるこの物語は、最初から喪失と共にあるのだ。
第11回冒頭では、ヒロトがはなえの家に初めて泊まった「台風がやってきた夜」の出来事が描かれる。台風が過ぎ去った翌日の朝、はなえの日課であるラジオ体操に、ヒロトも並んで参加する。その後の『ひらやすみ』というタイトルが呈示された後のショット=現在では、同じ位置でラジオ体操をするヒロトの隣に、当然ながら、はなえはいない。ここにもまた「変わってしまった世界」に対する寂しさがある。そんな世界をどうやって生きていくか。例えばよもぎが、ハリボテの家の窓に、描きかけていた猫の続きを描くように。第10回でそれを見たヒロトが「おかえりーって言ってるみたい」と笑うことで、よもぎが微笑むように。失ってしまった大切な存在の記憶と共に、人々は今日を生きていくのだ。