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日常ドラマ『ひらやすみ』が描く「変わること」の奇跡

2025.12.3

#MOVIE

©NHK
©NHK

視聴者に日々の癒やしと感動を届けて来た人気の夜ドラ『ひらやすみ』がいよいよ最終週を迎えた。

関連イベント『夜ドラひらやすみを一緒に見ようの会』や『ファン・フェスティバルin阿佐ヶ谷』も大盛況となるなど、ドラマの舞台となった阿佐ヶ谷という街自体も盛り上げている『ひらやすみ』。

あっという間の5週間に、続編も期待される本作の第3~4週について、前半を振り返った記事に続いて、ドラマ・映画とジャンルを横断して執筆するライター・藤原奈緒がレビューする。

※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

自分を残して変わってしまった世界に感じる「寂しさ」

親からの電話で実家の猫・ミーちゃんの訃報を聞いたよもぎ(吉岡里帆)©NHK
親からの電話で実家の猫・ミーちゃんの訃報を聞いたよもぎ(吉岡里帆)©NHK

夜ドラ『ひらやすみ』(NHK総合)には、たくさんの言葉にならない「寂しさ」が転がっている。例えば第9回では、車で1人家に帰るヒデキ(吉村界人)の思いを、学生時代にヒデキとヒロト(岡山天音)が作った自主製作映画の最後の画面の「Fin」という文字が代弁する。結婚し子供が間もなく産まれようとしている彼は、ヒロトのように「あの頃と変わらない」ままではいられない。もしくは、第10回で実家の猫・ミーちゃんの訃報を聞いた後、ハリボテの家の窓の描きかけの猫の絵を見つめるよもぎ(吉岡里帆)の背中。あるいは、第12回で、釣り堀にいる誰もがなつみ(森七菜)の投稿漫画の受賞を祝う中、祝福するのに少しだけ時間がかかるあかり(光嶌なづな)がちらりと眺めるバケツの中で1匹だけの金魚。

それらはどれも、変わらない、あるいは変われない人が、変わってしまった世界に対して感じた「寂しさ」である。その、あまりにもリアルな手触りに、思わずハッとさせられる。その寂しさや切なさを私たち視聴者は身をもって知っているから、『ひらやすみ』が描くささやかな奇跡に、心動かされずにはいられないのだ。

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