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「バンドも明確な目標があってやってるものじゃない。だから、走っているのか走らされているのか、よくわからないみたいな世界観がとても合ってる」(西川)
ーアルバムの最後に収録されているのが“追憶のビュイック”。“片側一車線の夢”や“吹曝しのシェヴィ”をはじめ、アメ車をモチーフとして、自分たちの進んできた道と照らし合わせて歌うことは、田中さんの1つのスタイルになっていますね。
田中:いわゆるアメリカンムービー、古き良き時代のロードムービーみたいな映画って、その人の人生なり半生みたいなものを置き換えたテーマのものが多かったと思うんですよね。で、若い頃にそういうものを見て、あの乾いた空気感と、どこまでも続く道、そこに人の生きざまを重ねていくみたいな描き方というものには、憧れを抱いてましたね。それに、日本にはそういう表現が少ないなと感じるんです。

ー<どの道を選んだって どのみちこのとおりさハニー ビュイックがいざなう 永遠に降りられないフリーウェイ>という歌詞が印象的で、アルバムタイトルにもつながるなと。
田中:正直そうなんですけど、気がついたらその曲以外にもですね、わりと「道」っていう言葉を使ってまして。そういうものを潜在的に意識しながら、今回歌詞を書いてたのかなという気は自分でもしました。なので、こういうアルバムタイトルになりましたね。
ー『あのみちから遠くはなれて』という言葉には両面性があるというか、「ここまで来てしまった、このまま走り続けるしかない」というある種の諦念のような感覚と、「ずっとやってきたからこそ今があるし、こうやって走り続けられるのは今の自分だからだ」というある種の自負のような感覚と、どちらも感じられるなと。
田中:まさにその通りで、だてに長くやってないなというか、そういう矜持みたいな、自負みたいなものは表したいなと思いました。
ー今回こういう言葉が出てきたのは、何か理由や背景があったと思いますか?
田中:いやまあ、事実ほんまに長いことやってるなと思いますし、そういう年頃なんじゃないですかね。同じような時代を過ごしていたバンドが解散したり、休止したりする人もたくさんいますし、ずっと見てた人がお亡くなりになったりとかっていうのもちょいちょいありますし。そういうものも見てきて、でも僕らはまだ、古くなってしまったビュイックかもしれないが、中身をレストアしながらなんとか走り続ける、みたいな感じを書きたかったんじゃないですかね。

西川:こういう世界観は今まで何度もやってると思いますし、すごく好きなんです。このバンド自体も明確な目標があってやってるものじゃないので。だから、走っているのか走らされているのか、よくわからないみたいな世界観がとても合ってる。人生観でもそうだと思うんですけど、さしたる目的地がないというか、ずっとエンディングみたいな感じ。ちょっとポンコツ感もあっていいかなと。
ー長尺のアウトロが素晴らしく、まさに追憶の感覚を刺激されます。
田中:僕が作ったデモの時点で長いアウトロがあったというか、2部構成みたいなイメージでした。どちらかというとアウトロ主軸で考えてたんですよ。やっぱりエンドロールっぽいイメージで、あのアウトロをつけたかったんじゃないかなと思います。
