グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
8月26日は、下北沢のレコードショップ「JET SET TOKYO」店長の石川遼太さんからの紹介で、「ディスクユニオン 新宿ロックレコードストア」の店長の山中明さんが登場。「ソ連ファンク」に魅了されたきっかけや、フィジカルでレコードを買う楽しさなどについて伺いました。
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海外のお客さんから人気なレコードは、シティポップや山下達郎
Celeina(MC):改めて、「ディスクユニオン新宿」には、ロックレコードストア以外にどんな専門エリアがありますか?
山中:結構多岐に渡っていまして、ソウル、ヒップホップ、テクノなど、細かく分かれているのが「ディスクユニオン新宿」の特徴になります。 あと最近だと、平成J-POPとかアニメとか、色々新しいジャンルも取り入れつつやらせていただいています。
Celeina:進化を続けているんですね。ロックレコードストアを担当されることになった経緯は何だったんですか?
山中:もともとロックオタク、レコードオタクなんです。「ディスクユニオン 新宿ロックレコードストア」は、レコードの細かいややこしい要素がいっぱい詰まっているようなものを専門的に扱うお店なので、そういったオタクっぽいところで抜擢されたのかなと思います。
タカノ(MC):どんなレコードを取り扱っていますか?
山中:The BeatlesとかThe Rolling Stonesとか、そういう1960年代〜1970年代のロックを中心に扱っています。
Celeina:海外のお客さんも多かったりしますか?
山中:かなり多いですね。ここ数年は、3分の1くらいは海外のお客様になっています。
Celeina:昨日の石川さんのお話によると、「JET SET TOKYO」では海外のお客様に1番売れているレコードはNujabesというお話があったんですが、「新宿ロックレコードストア」では、海外のお客さんは何を1番を求めてらっしゃいますか。
山中:日本人のアーティストはあまり扱いが多くないんですが、シティポップとか、山下達郎さんのレコードは海外のお客さんから人気です。あとは「日本盤」と呼ばれるようなものの需要がすごく大きいですね。日本だけで作っていて、帯が付いているものがあるんです。
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幼少期にドイツで体験したベルリンの壁の崩壊が、「ソ連ファンク」に惹かれたきっかけ
タカノ:山中さんはDJ活動もされていますよね。レコード自体は昔から集めていらしたんですか?
山中:会社に入ってからですが、20数年集めていますね。
Celeina:今は何枚くらい集めているんですか?
山中:業界的には結構少ないと思うんですが、3000〜4000枚くらいですね。
Celeina:その枚数で少ないんですね……! そして現在、「ソ連ファンク」というジャンルに特化してDJをされているということですが、これはどういうジャンルなんでしょうか?
山中:「ソ連ファンク」は、もともと私が作ったジャンルなんです。正式名称は「RED FUNK」なんですが、それだとちょっとキャッチーじゃないので、「ソ連ファンク」という和名のような名前をつけているんです。ソ連という国自体は1991年まであるんですが、ソ連だけに限定したファンキーでグルーヴのある音楽を抽出しています。
Celeina:なぜ「RED FUNK」に注目されたんですか?
山中:きっかけは本当にたくさんあるんですが、1番大きいのが、今私の手元にあるこの石です。これは、昔ドイツにあったベルリンの壁を、当時小学生の私が自分で叩き割って持ち帰った破片なんです。

タカノ:すごいですね!
山中:私は、1980年代中盤から1990年初頭くらいまでドイツに住んでいたんです。その頃はまだ資本主義の西ドイツと、社会主義の東ドイツという形で西と東に分かれていて。西から東は行けたんですけど、東から西へ行くのはすごく厳しかったので行けなかったんです。そういう状況の中で、西から東に行って見た風景や環境に、幼いながらにすごく衝撃を受けてしまって。 後々「どういう国なんだろう」とか「どういった音楽が流れているんだろう」とか興味が自然と湧いてきて、「ソ連ファンク」に繋がりました。かなり端折りましたが、そういう流れですね。
タカノ:そうだったんですね。ベルリンの壁を触ってみてもいいですか?
山中:どうぞどうぞ。
Celeina:リスナーの皆さんにわかるようにお伝えすると、サイズは結構小さいです。本当に横5cmくらいです。
山中:この大きさなのは、壁がめちゃくちゃ硬かったからなんです。小学生の僕には、この大きさに削り出すのが限界でした。
タカノ:色がちょっと灰色でピンクみがかっていますね。
山中:ベルリンの壁が崩壊したのが1989年の暮れで、僕が行ったのがその2ヶ月後くらいだったので、壁の前にたくさん露店が出ていて。壁を勝手に売っている人とか、ハンマーの貸し出しをやっている人がいたんです。僕もそのハンマーを借りて割ったんですよ。
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「ソ連ファンク」はサブスクにないため、レコードを大量に買って1枚ずつ聴く
Celeina:そんなルーツをお持ちだからこそ、今この「ソ連ファンク」というジャンルに注目してDJをされていると思うのですが、「ソ連ファンク」の音楽性はどんな感じなんですか?
山中:ソ連の音楽はすごく多岐に渡っていて、ジャズ、ソウルファンク、プログレ、サイケとか本当に色々なものがあって、1990年代までの英米の音楽と同じくらいジャンルの数はあるかなと思います。その中で、グルーヴがある音楽を一括りにして「ソ連ファンク」と名乗っちゃっている、という感じですね。
Celeina:「ソ連ファンク」はかなりニッチなジャンルだと思うんですが、曲をディグる時はどうしていらっしゃるんでしょうか……? フィジカルでしか残っていないですもんね。
山中:ほとんどサブスクにもないですし、CDにすらもなっていないので、本当にレコードを集めることしかできないですね。
タカノ:どうやって探し当てているんですか?
山中:レコードを集めてもう10年以上経っているので、本家のレコードの繋がりを活かしたりしつつ、現地の人や友達からたくさん送ってもらいますね。 とにかく大量に買って1枚1枚確認して、余ったものを売ったりしてぐるぐるさせて今に至ります。
Celeina:確かにレコードを手にするまではどんな音楽かもわからないですもんね。インターネットでもチェックできないですし。
山中:僕はロシア語の文字も読めないので、とにかく何千枚も買って聴いてみるしかないですね。
タカノ:音楽的な特徴ってあったりするんですかね?
山中:本当にバラバラなんです。ソ連は世界一大きい国だったので民族性もバラバラだったんですが、当時の音楽は1つだけしかないレーベルからリリースされていたんです。それに加えて、音楽は全て検閲されるので、だんだんバイアスがかかっていって、何となく統一性が生まれていったんですよ。それがすごく面白いんですよね。でも音楽自体はあまり違和感なく聴けるかなと思いますので、そういったものを皆さんにも楽しんでいただければなと思って色々紹介したりしています。