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ドラマ『フェイクマミー』で薫と茉海恵がニセママのリスクを冒した理由を考える

2025.12.12

#MOVIE

©TBS
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禁断の「ニセママ契約」からはじまったファミリークライムエンターテインメント『フェイクマミー』(TBS系)が最終回を迎える。

最終回直前の第9話は、薫(波瑠)、茉海恵(川栄李奈)ら「チーム・いろは」一丸となって守ってきたニセママの秘密が公となり、警察沙汰にまでなってしまうという急展開が。

竜馬(向井康二)、智也(中村蒼)、慎吾(笠松将)など魅力的な男性キャラクターも印象的な本作について、前半を振り返った記事に続いて、毎クール必ず20本以上は視聴するドラマウォッチャー・明日菜子がレビューする。

※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

最終回直前、「チーム・いろは」で守ってきたニセママの秘密が公に

薫(波瑠)と茉海恵(川栄李奈)で死守してきたいろは(池村碧彩)の穏やかな学園生活©TBS
薫(波瑠)と茉海恵(川栄李奈)で死守してきたいろは(池村碧彩)の穏やかな学園生活©TBS

無職になった元バリキャリの独身女性・薫(波瑠)と、元ヤンでベンチャー企業社長のシングルマザー・茉海恵(川栄李奈)。正反対の人生を歩んできた二人が、茉海恵の娘・いろは(池村碧彩)のために、禁断の「 ニセママ契約」を結ぶドラマ『フェイクマミー』が、いよいよ最終回を迎える。いろはの通う柳和学園小学校のクラス担任である智也(中村蒼)に、ニセママであることがバレてしまうという大ピンチに晒されながらも、彼をも巻き込み、「チーム・いろは」一丸となって(?)彼女の穏やかな学園生活を死守してきた。

しかし、第7話の終盤で、薫にとって唯一のママ友だったさゆり(田中みな実)にもバレ、さらに第8話では、いろはの実の父親が、さゆりの夫・慎吾(笠松将)であることをさゆりと慎吾に知られてしまい、事態は急展開を迎える。さらに、茉海恵といろはの双方に執着のある慎吾は、茉海恵の会社「RAINBOWLAB」の競合「三ツ橋食品」社長という立場を利用し、さまざまな方法で茉海恵たちを脅かし始める。

最終回直前の第9話では、インフルエンサー社長「まみえる」こと茉海恵が名門私立小学校に「隠し子」を入学させるため、ニセママに替え玉受験をさせたという報道が出ててしまう(事実!)。その結果、いろはは通学停止を余儀なくされ、薫は保護者たちが集まる場で説明責任を問われることに——

薫と茉海恵はなぜニセママのリスクを冒したのか

茉海恵からのニセママ契約を最初は断っていた薫©TBS
茉海恵からのニセママ契約を最初は断っていた薫©TBS

思い返せば、すべての始まりは、茉海恵が社長を務める会社「RAINBOWLAB」の入社面接に落ちた薫が、手のつけられない天才児・いろはの家庭教師として採用されたことだった。自分が名門私立・柳和学園小学校が求める母親像に相応しくないと感じた茉海恵は、代わりに親子面接を受けてほしいと薫に持ちかけるのだが、このときの薫はハッキリと断っている。

だが、とある動画をきっかけに「虹汁」の広告塔として顔が知られている茉海恵の元ヤンっぷりが拡散され、いろはの柳和学園への受験を諦めようとしていた茉海恵に、今度は薫自らニセママに名乗りを上げたのだ。もちろん、そのリスクは計り知れない。それでも、彼女たちはなぜ、この危険な契約を交わしたのか。最終回を目前に控えたいま、あらためてその理由を考えたい。

薫を突き動かした2つのもの

ニセママ契約が智也に露見した後、その理由を智也(中村蒼)に答える薫©TBS
ニセママ契約が智也に露見した後、その理由を智也(中村蒼)に答える薫©TBS

「実は、私も仕事を辞めたことを、少し後悔してたんです。会社を辞めたことで、今まで頑張ってきたこと、全部がムダになった気がして。でもそれは、自分が正しいと思っていたキャリアに原因があったのかもって」

「だから、自分に変数を与えてみようかなって」

「ちょっと先の見えかけていた人生にニセママっていう変数を入れたら、どう変わるのかなって試してみたくなって」

ニセママ契約が智也に露見した第5話。四者面談を終えた帰り道、「なぜニセママ契約をしているのか」という智也からの問いに、薫が答える場面だ。いろはと接する中で、苦手としていた子どもの良いところに気づけたこと、突発的に会社を辞めて、立ち行かなくなっていた自分も変われたことなど、彼女はポジティブな変化を口にする。だがこれは、あくまでも、聡明な彼女がリスクしかない契約に加担することに対して 、自分自身を納得させるための大義名分でしかなか ったのではないか。

薫を突き動かした理由の一つは、大手企業・三ツ橋商事を退職したことで、厳格な母・聖子(筒井真理子)の期待に応えられなかったことへの後ろめたさだ。母と娘の関係は一見、良好に思えたからこそ、聖子からの悪気のない「あなたはずっと優秀だったから、就職して結婚して、仕事と子育てを当たり前に両立していくと思ってた」「みんなができていることを、あなたができないのが不思議」といった言葉は重く突き刺さる。それまで薫も自分の考えを母に伝えてはいたが、第6話で、入院中の母にニセママ契約のことを打ち明けるために、必死に言葉を選んでいた姿を見ると、彼女の行動原理の底には、やはり母の期待に応えたいという気持ちが横たわっているようにも感じた。

過ちを自覚しながらも、「RAINBOWLAB」の副社長・竜馬(向井康二)に「今の私を知ってほしかった。ママにわかってほしかった。頑張ってるのねって、言ってほしかったんです」と涙ながらに吐き出した姿は、社会的には自立した大人であるはずの薫が、いまだ母からの承認を得ようとしている幼い「娘」であったことを痛切に示していた。ニセママという選択は、母のまなざしの中に、なんとか自分の居場所を見つけようとした結果なのかもしれない。

薫に感じた、社会に対する「祈り」

勝ち目のない戦いに足掻く理由を竜馬(向井康二)に答える薫©TBS
勝ち目のない戦いに足掻く理由を竜馬(向井康二)に答える薫©TBS

もうひとつ、薫を突き動かしたのは、社会への抵抗である。かつて慎吾の部下として、大手企業「三ツ橋商事」に勤めていた薫は、順調にエリート街道を歩んでいたが、ワーママを支える制度改革の一環として、子育てしながら時短勤務で働く同僚・由実(筧美和子)の補佐を命じられた。「誰かを押し上げるために、別の誰かを犠牲にするような多様性」を受け入れられなかった薫は、衝動的に会社を辞めてしまったのだ。

「私は、いろはさんが宇宙に行く姿を見てみたいんです。だからここで諦めたくないんです」

なぜ勝ち目のない戦いにまだ足掻くのか。竜馬からそう問われた第9話で、薫はこう答えている。東大卒の自分と同等、あるいはそれ以上の高い能力を秘めたいろはも、いずれは薫が受けたような理不尽にぶつかる日が来るだろう。社会の足並みに合わせることが苦手で、なおかつ親が有名人という特殊な環境で育つ彼女であれば、尚更だ。だからこそ、いろはが進む道が少しでも良くなるように、薫は自分の能力を使おうとしたのだと思う。

それはある意味、いろはの成功によって、薫が叶えられなかった自己実現を果たそうとしているようにも見える。しかし、私はそこにもっと純粋な薫の「祈り」を感じるのだ。いろはがこれから生きてゆく社会が、彼女の能力を正当に尊重する真っ当な場所であってほしいという思いが、薫の背中を押したのではないだろうか。

茉海恵が歩んできた過酷な過去を想像する

第1話で薫に自らの学歴コンプレックスを打ち明けていた茉海恵©TBS
第1話で薫に自らの学歴コンプレックスを打ち明けていた茉海恵©TBS

一方の茉海恵に感じるのは、どれほど成功者になっても拭いきれない「学歴コンプレックス」だ。高校を3カ月で中退しながらも、一代で成功を築き上げた茉海恵の過去は、物語の核に関わる部分であるものの、詳しくは語られてこなかった。だが、第1話での薫とのやり取りの中に、すでに根深い学歴コンプレックスを感じた瞬間があったのだ。

茉海恵「あたしにはこの道しかなかった。勉強も苦手だったし」

薫「勉強ができるからって、いい人生を送れるってわけでもないですよ」

茉海恵「それは東大に行った人が言えること。あたしが東大に行けてたら、いまより良い人生だったと思ってる」

極め付けは、当時交際していた慎吾が、茉海恵の写真を見せた親から投げかけられたという「苦労が染みついた顔してるって」という一言。茉海恵の壮絶な回想シーンをわざわざ挿入せずとも、このたった一言で、彼女がどれほど過酷な道を歩んできたかを浮かび上がらせると同時に、彼女が積み重ねてきた努力のすべてを否定してしまうテクニカルなセリフだ。……となると、やっぱり悪いのは慎吾なのでは? (許せないッッッ!!!)

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