INDEX
劇場未公開が悔やまれる、配信オンリーや限定公開の作品たち
―先に話題に上がった『アフター・ザ・ハント』もそうですが、配信直行や、限定的な劇場公開になる作品が増えましたね。長内さんのベストに入っている『ロスト・バス』や『トレイン・ドリームズ』『フランケンシュタイン』などもそうです。
長内:どれも面白い作品ばかりなのですが、配信作品はあっという間に情報の波に埋もれてしまうのが実にもったいない。
木津:本当にそうですね。『アフター・ザ・ハント』が急に配信されたときは驚きました。もちろん集客の難しさや権利関係など業界の複雑な事情はあるのでしょうけどね。
特に『トレイン・ドリームズ』(クリント・ベントレー監督)は映画館でやってほしかった。テレンス・マリックをそのままやりすぎているとも言えますが(笑)、映画館の暗闇の中で、瞑想的な体験ができるような作品です。これが埋もれてしまうのは映画文化にとっても大きな損失だと思います。
長内:作品のスペックがフルで生きる劇場という環境が必要ですよね。『ロスト・バス』(ポール・グリーングラス監督)も、うちの自宅ならスピーカーがあるからまだしも、スマホで見るにはあまりにもったいない音響と迫力を持った映画ですから。
木津:そうか。今はテレビですらなく、スマホで映画を見る層も多いですもんね。『ロスト・バス』について、自分は少し「アトラクション化しすぎではないか」と感じる部分があったのですが、それも自宅で見たせいかもしれません。映画館の巨大なスクリーンと音響で観れば、そのストーリーテリングの迫力をもっと素直に受け止められた可能性がある。視聴環境によって作品の受け止め方が変わってしまうのは、現在の大きな課題ですね。
長内:そうだと思います。配信作品は一度リリースされると、二度と劇場にかからない可能性が高い。クラシック映画のリバイバル上映で、ソフトとかで見ていた作品を「劇場で観ると、こんなに素晴らしい映画だったんだ!」と再発見するような喜びが、配信映画では得られにくいのが現状ですね。
木津:Netflix製作『フランケンシュタイン』(ギレルモ・デル・トロ監督)に関して、長内さんの感想も聞きたいです。正直、「いつものデル・トロ印の平均的な作品」という以上の感想を持てませんでした。

長内:デル・トロが長年温めてきた企画であるという気迫を感じました。ただ、尺が足りない。あと20分長ければ、より深いストーリーテリングができたのではないか。完全な映画ではないかもしれませんが、彼の「私的なフランケンシュタイン」への思い入れは十分に伝わってきました。
木津:大物監督になった彼が、自分を育ててくれた古典モンスター映画をやりたかった、というパーソナルな側面はたしかによかったですね。
長内:あと、中盤、盲目の老人との対話から怪物が人間性を獲得し、世界の真理を知っていく描写には凄みを感じました。
木津:同じNetflix作品では限定公開でも『ハウス・オブ・ダイナマイト』(キャスリン・ビグロー監督)は劇場で観られてよかったなと思いました。今の洋画ファンは、シリアスで真面目なテーマを求める傾向にあるのかもしれません。だから、自分が劇場で観たかった『裸の銃(ガン)を持つ男』(アキバ・シェイファー監督)みたいなくだらない作品は劇場でかからないのかな、と(笑)。