いまや世界中に熱狂をもたらすグループとなった新しい学校のリーダーズ。日本のみならず、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、各国でたくさんのファンがそのライブを待ち望んでいる。結成10周年を迎える2025年7月19日(土)には自身最大規模の会場となる幕張メッセ9-11ホールにて記念公演『宣誓 ~個性や自由ではみ出し10年~』が開催される。
状況はガラリと変わった。しかし小さなライブハウスのステージに立っていた頃から、新しい学校のリーダーズが掲げるテーマは何ひとつ変わっていない。それが「個性と自由ではみ出していく」。
7月16日(水)にリリースされたベストアルバム『新しい学校のすゝめ』には、結成当初からライブのみで披露されてきた初期の代表曲“宮尾”が初音源化され収録される。<窮屈なルールは はみ出せばいいじゃない。>と歌うこの曲は、まさにその証明だ。
新しい学校のリーダーズは、なぜ変わらないまま、ここまで突き進んできたのか? 10年間のターニングポイントを振り返りつつ、「はみ出す」という言葉の内実について、改めて語り合ってもらった。
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新しい学校のリーダーズの「はみ出し」の原点
―新しい学校のリーダーズの「個性と自由ではみ出していく」というテーマは、デビュー以来ずっと変わってないですよね。でもキャリアを重ねて環境が変わっていくとともに、その中身や視点が変わってきたんじゃないかと思っています。今回の取材はそういうことを軸に10周年を振り返っていきたいと思ってます。
MIZYU:ありがとうございます。よろしくお願いします。

―まず、そもそもなぜこのテーマをずっと変わらずに掲げてきたんでしょう?
RIN:4人が楽しいと思うことが、結局「個性と自由ではみ出していく」というテーマに最終的に行き着いてしまうんです。信念であり、向かった先にどうしてもこのテーマがあるという感覚もありますね。
MIZYU:初ライブよりも前に「こういうライブをしよう」とか「セーラー服でそれぞれの個性を出していこう」とか話していたんですけれど、それが偶然うまくいったんでしょうね。ときが経っても、その枠組みを楽しめているし、そのテーマにマッチする4人でいられているんです。

MIZYU:新しい刺激や出会いがあったときにも、自分たちの芯にあるコンセプトをどうやってかけ算していこうか考えるようになりました。それで説得力や可能性が広がっていったんじゃないかと思います。このコンセプトはどんどん深みが出ているし、愛せているし、心から自分たちの言葉になっていく日々が10年ずっと続いているなと思います。
KANON:「はみ出す」というのは、結成当初は自分の内から出ているものというより、活動していくうちに自分たちのことを噛み砕いて、「本当にやりたいことって何だろう?」みたいな会話を4人で重ねてできたものです。
振り付けを作ったり、ライブをしたり、こういうインタビューがあったり、一つひとつの全ての細かい事柄を4人で一緒に共にしていくうちに、「はみ出していく」とか「個性と自由」とか、そういうもともと置いていた言葉に自分がどんどん深掘りしていく感覚があって。芯から自分たちの言葉になっていった。それを心から4人で楽しんでいるという感じですね。

SUZUKA:新しい学校のリーダーズという存在や、セーラー服を着ていること、「青春」とか「個性と自由ではみ出していく」というテーマは、クリエイティブの可能性がすごくたくさん秘められていると思うんです。だからこそ続けられてきているし、これからもまだまだ新しいものが生まれるんだろうなと思います。
―今回のベストアルバム『新しい学校のすゝめ』では結成当初からライブでやっていた“宮尾”が初めて音源化されますよね。このことにもすごく大きな意味があると思うんです。この曲はいまのリーダーズにとって、どういう位置づけでしょうか。
SUZUKA:ベストアルバムの収録曲を決める投票をファンの方たちからしてもらったんです。そしたら“宮尾”が一番多かったんですよ。リーダーズのテーマ性、どこか斜め上を行くような姿勢が伝わりやすい曲なんだと思いますね。
今回のベストアルバムの“宮尾”は曲調もバンドサウンドになって歌割りもリニューアルした新しいバージョンで収録されるんですけれど、私たち自身も「言っていること変わってないな」って思いますし。

MIZYU:当時、サビの一番メッセージ性の強い部分は全員では歌ってなかったんです。でも今回は全員で歌っていて。4人で歩んできた道のりを4人で声に乗せて届けられるのはすごく意味のあることだなと思います。
RIN:この曲の歌詞は「子どもから見た大人」みたいな部分を歌っているんですけれど、実際に中高生だった私たちが歌っていたのと、20歳を超えて大人になった私たち、この先もっと大人になっていく私たちが歌うのとでは、歌詞の意味も違って感じられるなと歌いながら思っていました。

KANON:当時は私たちの「はみ出していきたい」という気持ちを最大限に尖った形で伝えた楽曲だったんですけれど、リニューアルしたバージョンは、いまの私たちにフィットした表現になっていて。言っていることは本当に変わっていないし、ちゃんと芯にあるもので、少しエモい気持ちもあって。この曲自体にも深みが出たなと思います。
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世界進出を勢いづけた「88rising」との契約、マニー・マークとの共同制作
―この10年間を振り返っての一番大きな変化は海外での活動が増えたことだと思います。「88rising」との契約を発表したのが2020年11月、「ATARASHII GAKKO!」名義での世界デビューが2021年1月でしたが、変化を実感したのはいつ頃でしたか?
MIZYU:世界デビューと言っても、最初はネット上でのことだったので。「コメント欄が英語だな」というくらいで、あまり実感が湧かない感じだったんです。でも、2021年の3月に4人とマネージャーさんの5人で初めてアメリカに行って、2か月半の共同生活を送って。そこでプロデューサーのマニー・マークさんと出会ってひとつのEPを完成させた。そこで視野がすごく広がりました。
MIZYU:自分たちの音楽やパフォーマンス、チームで過ごすことの価値観とか、可能性が思っていたよりもはるかに無限大で自由だと感じたので。それが世界を感じた一歩目だったかもしれないです。
―マニー・マークとの共同制作はどういう刺激がありましたか?
RIN:音楽に対する向き合い方が変わりました。私たちはそれまで曲作りをイチからしたことがなかったんですけれど、そこに携わらせてくれて。「一緒に作ろう」という流れになったところから、右も左もわからないし、英語もそんなに上手に喋れない状態の私たちに、「何が楽しいと思う?」という感覚を、体感ですべて伝えてくれて。
音楽は本当にすぐそばにあって、楽しめば日常生活の何でも音楽になるということを、暮らしながら過ごしながら教えてくれたんです。あの経験があったことで、音楽に対する向き合い方も、そこから生まれる振り付けへのエネルギーも、大きく変わったと思います。

―マニー・マークとの出会いでクリエイティブのあり方も変わったわけですね。
SUZUKA:私たちにはその前からずっと4人のクリエイターとしての感覚、自己プロデュースの感覚があって。振り付けを作っているだけじゃない、自分たちで生み出したもの、集まってできあがったものという感じだったんです。
そこからマニー・マークと出会い、もっと刺激的でもっと自由なものを知りたいと思うようになりました。個人的には、もっと狂いたい、もっと宇宙的な感覚でぶっ飛びたいという感覚があって。それをマニー・マークが教えてくれた気がします。
―2021年11月にアメリカ・ロサンゼルスで開催された88rising主催の音楽フェス『Head In the Clouds』が海外での初ライブでした。そこからの手応えはどうでしたか?
MIZYU:初めての海外ライブから手応えはありました。そのときの新曲の“NAINAINAI”も持っていきましたし、それまで日本でやり込んできた必殺パフォーマンスも、いつも通り持っていったんです。
そのときに、日本語の歌詞で、意味が聞き取れているわけではないはずなのに、初めて見た方々がすごく感情的にリアクションしてくださって。それが自分たちの自信になりました。やってきたことが間違っていなかったと思ったし、世界に通用するかもしれないという、新しいフェーズへの希望を持てたライブでした。
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“オトナブルー”のTikTokバズ、“Tokyo Calling”の海外でのスマッシュヒット
―2023年に“オトナブルー”がTikTokでバズってリーダーズはブレイクしたわけですが、その頃って、すごく面白い状況にあったと思うんです。海外では88risingやマニー・マークの文脈もあって、ヒップホップ的なサウンドの曲がウケている。一方で日本では少し前にリリースしていた曲が時間差でウケている。不思議なブレイクだったと思うんですが、あの頃は振り返って、いかがでしたか?
RIN:2023年に“オトナブルー”で日本でも知っていただく機会が増えて、そのおかげでいろんな方の興味の入り口が本当に広がったんです。そこから出会った私たちのファンもたくさんいると思っています。ただ、その入り口から奥に行くまでには、まだ知られていない部分もあると感じていて。
そこのギャップはやはり海外と日本でも感じます。例えば夏フェスなどでは“オトナブルー”を知ったことをきっかけに観にきてくれた人たちが、「こんなに踊るの?」「こんなに激しかったの?」「なんだこの熱量は?」という衝撃を受けてくれたんだなというのを実感するし。そのたびに、まだまだ伝えなければいけないことがたくさんあるし、入り口を広げるって本当に大事だなっていまだに感じています。
―TikTokでバズるとその1曲ですぐに消費されてしまう傾向がありますよね。でもリーダーズはそうならなかった。2023年はむしろ“Tokyo Calling”が海外で盛り上がっている時期で。そういう説得力があったのは振り返ると大きかったんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか?
SUZUKA:そうだと思います。TikTokで“オトナブルー”の首振りダンスがバズっただけだったら、本当に消費されて終わりそうなものですけれど。でも、私たちはそれをあくまできっかけとしてしか見てなくて。いいきっかけができたなと思っていたんです。
“オトナブルー”はすごくポップな曲なんですよね。やはりそれだけだと、ひねくれている自分たちが満足できないというか。ずっと笑顔を振りまいているだけじゃいられない、睨みつけたくなるみたいな感覚にもなってくるんです。
でも、その欲求を満たしてくれたのが“Tokyo Calling”だった。その同時進行は、私たちの精神的にすごく良かったですね。唯一無二のストーリーを描いているんだなという、いい意味で誇らしく、現場でも気持ちよくいられました。
―“Tokyo Calling”は海外のステージでも、いまも必殺技のような曲になっている。
MIZYU:お客さんの熱量がすごいです。イントロの重低音から、メラメラと炎が燃え上がるようにお客さんがたぎってくるんです。なので、やりがいがあります。伝わっているんだなと感じます。
去年メキシコでワンマンライブをさせていただいたときは8,000人規模だったんですけれど、その全員が“Tokyo Calling”を歌っていて。しかもキャッチーな部分だけでなく、しっかり細かいところまで一緒に歌っていて。エネルギーがすごくて、ひとつの宇宙ができていて、人生で見たことない光景を見ました。