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自分を作り上げた「とにかくやってみよう!」というマインド
―改めてなんですけど、2022年に『Time Won’t Stop』をリリースした頃から現在までを振り返ると、自分はどのように歩んできたなと感じますか?
和久井:今となっては「なるようになっているな」という感じなんです。大学を卒業したのがコロナ禍だったし、当時は将来について「どうしよう……」と思いつつも「なんとかなるっしょ」という気持ちも同時に自分の中にあって。実際になんとかなって2022年に「ソロ名義で自分の活動をやる」と決めたんですけど、その頃、いろんなコミュニティに出入りするようになった影響もあって、ミュージシャンの知り合いも増えたんですよね。それが次に繋がって、2023年はとにかくいろんな方と音楽をやったし、作家というよりはプレイヤーとしてがむしゃらに生きていました。インプロ(即興演奏)もやるし、サポートもやるし、自分のライブもたまにやるし、っていう感じで。
ただ、サポート活動は徐々に安定していったし、楽しかったんですけど、どんどんそっちがメインになって、他の時間がなくなってしまうのがマズいと思い始めて。それと同時に、そもそもの自分の作曲家としての夢を思い出し始めたんですよね。元々、私は映画音楽の作曲家になりたいと思っていたんです。

―そうだったんですね。
和久井:昔から坂本龍一や加古隆のような人に惹かれる傾向があって。とりあえず人が頼んでくれるから「サポートでピアノを弾きます」っていう活動をやっていたんですけど、やっぱり自分で作りたい、映像に音楽を付けたい、という気持ちはあって。で、面白いことに、そう思っていると自然とそういう仕事が来るんです。ちょっとずつCMの音楽を頼まれるようになったりし始めた。それが2024年ですね。
そのあと、テレビ番組のアレンジを頼まれるようになったのも大きかったです。『Sound Inn S』(BS-TBS)という番組なんですけど、今どき珍しく、生オーケストラ、生バンド、全部生で収録するっていう豪華なコンセプトの番組なんです。今まではその番組にピアニストとして出ていたけど、アレンジャーとして呼ばれることになって。大編成の曲を書く経験なんてそれまでほとんどなかったけど、やってみると「これも楽しい!」と思えたんです。それからアレンジャーや音楽をプロデュースすることにも興味が出てきた。それが2024年から2025年くらい。振り返ると本当にいろんなことがあったなと思います。
―映画音楽を作ることに対しては、今も強い思いがありますか?
和久井:そうですね。映画がすごく好きなので。いい映画にはいい音楽が付いていることが多い気がするし、あと、ひとつのものをチームで作ることに対しての憧れもあります。小学生とか中学生の頃を振り返っても、私は団体で何かを作ることが好きだったんです。過去を振り返って「孤独だった」とか「ひとりぼっちだった」と言うミュージシャンも多いと思うけど、私は運動会とか文化祭が好きな学生で(笑)。ひとつの作品をギュッとみんなでひとつの方向を向いて作るって、すごく美しいことだなと思う。

―今の時代は特に、多くの人でひとつのものを作ることはすごく尊い行為のような気がしますね。ちなみに最近、好きだった映画の音楽はありますか?
和久井:この間観た『センチメンタル・バリュー』という映画があって。音楽をハニャ・ラニさんという方が手掛けているんですけど、その人もピアニストだけどシンセサイザーやライブループを使って演奏する人なんです。そのハニャ・ラニさんが作る音楽が映画の作品に溶け込んでいる感じがして、すごくいいなと思いました。あと、ずっと大好きなのは『ラスト・エンペラー』。あの映画の坂本龍一が手掛けた音楽も大好きです。他にも、武満徹が手掛けた黒澤明映画の音楽とか、影響は受けていますね。