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『人は見た目じゃないと思ってた。』『終のひと』……まだまだある2026年冬期の注目作
—ここまで今期の注目作についていろいろ伺ってきましたが、まだ名前が出ていないけれどぜひ話しておきたい、という作品があれば、ご紹介いただけますか?
明日菜子:私は『人は見た目じゃないと思ってた。』を挙げたいです。タイトルの通り、ルッキズムについてのドラマです。ルッキズムは時々ドラマのモチーフとして扱われることもありますが、大抵は女性視点の話になるので、まず、若い男の人が主人公っていうのが珍しいなと思いました。
明日菜子:主人公は野球一筋で生きてきて、オシャレとは程遠い世界に居たんですが、ある日突然、ファッション誌の編集部に配属されるんですね。この主人公がとにかく自意識が強い(笑)。オシャレに興味がないというか、オシャレをする自分が恥ずかしいんです。ホモソーシャルの中で生きてきたから、オシャレをしたらイジられるんじゃないかと思っている節があるんですよ。この自意識の強い若者像っていうのが、すごくリアルだなと思いました。
この作品の良いところは、ルッキズムという比較的新しい概念に対して、作品自体も手探りなんですね。このテーマに対する正解は完全に決まってないかもしれないけど、最終回に向かって、世間の空気を感じながら物語を作っていくことは、テレビドラマだからこそできることだと思いました。最終回は、初見では驚かされたんですよ。でも、ルッキズムという概念に対する折り合いの付け方やバランスが絶妙で、このエピソードではないと描けなかったとは思います。良い最終回でした!
北村:私も見ていて、最終回はすごく衝撃でした。最終回でこの作品に対しての見方や考え方が変わりました。
明日菜子:最終回は、主人公のメンターである剛力彩芽さんにスポットが当たるんです。この物語の中心はオシャレや着飾ることが好きな人たちですが、一方でルッキズムに苦しめられている人もいる。単純に「オシャレするのがいいよ!変わろうよ !」という方向にエンパワーメントする物語で終わらなかったのが良かったです。
—では続いて、北村さん、いかがでしょうか。
北村:ベストにも挙げましたが、葬儀業界を舞台にしたヒューマンドラマ『終のひと』に注目しました。私自身が葬儀業界で仕事をしていた経験があるのですが、すごく細部までリアルに作り込まれていると思いました。使われてる小道具、仏具なども本物なのが、見て分かるんです。
北村:あと、柿澤勇人さんが演じる葬儀屋の社長さんが「自分で全部やる」んですね。人数が少ない会社だと、社長が自ら、例えば故人の方のお着替えさせる儀式までやったりすることが実際にあるんです。そういう中小の葬儀業界あるあるのような、これどうやって取材したんだろう? と思わせるリアリティがすごかったです。しっかり取材を重ねられている点に信頼が置けて、ずっと見ています。
明日菜子:昨年、綾瀬はるかさん主演の『ひとりでしにたい』(NHK総合)もありましたが、人の生死に関わる作品は今後も増えていくのかなと本作を見ても思いました。特に印象に残ったのは、凶悪犯の葬儀をする回ですね。たとえば、医療ドラマで凶悪犯が緊急搬送されて、医師たちが救うかどうかを葛藤するみたいな場面は結構見たことがあるんですけど、葬儀屋さんのパターンは初めて見ました。葬儀屋さんの場合は、すべてが終わっているからこそ、誰に対してもフラットな感情で向き合おうとするんですよね。そうした死生観って、もしかしたら葬儀屋に務められている方特有なのかもしれないと、印象に残りました。