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「外の世界」をずっと示していた、母からの絵手紙

そして、第8話=最終回の予告編では、洋輔自身が西ヶ谷温泉から出て行くことが示唆される。さらに、これまで絵手紙を通してしかその存在を表さなかった、世界を旅する洋輔の母・恵美(原田美枝子)も登場するようだ。思えば、これまでの全話を通して、常に「西ヶ谷温泉の外の世界」の存在を圧倒的に示していたのは、「ゆらぎや」のポストに届く、世界を旅する洋輔の母からの絵手紙だった。
第6話において、印象的なシークエンスがあった。モンゴルの夜空の美しさについて書かれた母の手紙を読みながら、洋輔は空を飛んでいる飛行機を眺める。その次のショットでは、公園のベンチでサンドイッチを食べながら飛行体を目で追う男性が映し出される。その飛行体は、リュックに仕込んだロケット装置で空を飛ぶ洋輔なのであった。「飛行体を目で追っていた主人公が、次のショットで飛行体そのものになって空を飛んでいる」という自由な展開は、いかにも本作らしい。一方でこのシーンが持つ意味は、奇妙で可笑しい本作の世界観のあらわれだけではないだろう。つまり、洋輔は、「よくも悪くもずっとここにいたくなってしまう」から、あるいは、不在の父の代わりに「探偵さん」としての役割を果たすためにこの町にいるだけで、行こうと思えばどこにでも行けるのである。リュックに仕込んだロケット装置に燃料がしっかり装備されている限り。