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ドラマ『リブート』レビュー 特殊設定と鈴木亮平の演技で気付いた「人間性の滲み方」

2026.2.22

#MOVIE

©TBS
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数々の名作ドラマを生み出してきたTBSの看板ドラマ枠「日曜劇場」に新たな異色作が誕生した。

『リブート』(TBS系)は、初回から、主人公・早瀬陸を演じるのが人気俳優・松山ケンイチであることが作中でサプライズ発表され、しかも、鈴木亮平演じる刑事・儀堂歩に顔を変えてなりすます(=リブート)ことになるという怒涛の展開が話題となり、毎回、視聴者による考察合戦が繰り広げられている。

その後も、状況はスピーディーに変化し続け、多くの個性的な登場人物が現れながらも、裏社会の手によって次々に消されていく展開は、「ショート動画時代の連続ドラマ」を感じさせる。

『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』『マイファミリー』『ラストマン-全盲の捜査官-』(共にTBS系)など話題作を次々に生み出す脚本家・黒岩勉が構想に3年を費やした本作について、ドラマ映画ライターの古澤椋子がレビューする。

※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

考察ドラマ×ヒューマンドラマ

松山ケンイチが鈴木亮平になりすますという驚きの展開からはじまった第1話©TBS
松山ケンイチが鈴木亮平になりすますという驚きの展開からはじまった第1話©TBS

「考察」ブームに応えるように、テレビドラマでも『あなたの番です』(日本テレビ系、2019年)以降、視聴者に考察の楽しみを与えることを企図した作品が精力的に制作されている。ミスリードを生む描写を充実させたり、思わぬ設定が後半で明らかにされたりと、伏線やイースターエッグのあり方も多様化している。

日曜劇場『リブート』(TBS系)も、そんな考察ドラマに属すると言えるだろう。犯人を見つけ出す基本的なミステリー要素を軸にしながら、「顔を変えて他人になりすます=リブート」という特殊設定があることで、何が起きてもおかしくない、どの登場人物のことも信用できなくなる仕組みを作り上げている。熟練の演技巧者たちvs視聴者といった様相の考察ドラマだ。

そして、そんな枠組みのなかで、妻を殺した犯人を見つけ出したい、病気の妹を救いたいといった大切な人を想う根源的な願いが描かれているのも本作の特徴だ。大切な人のために行動する人物たちが描かれることで、途端にヒューマンドラマの空気も漂ってくる。

「裏社会監修」による裏社会描写のリアリティ

合六亘(北村有起哉)を中心とした裏社会の面々©TBS
合六亘(北村有起哉)を中心とした裏社会の面々©TBS

本作の主な舞台は、いわゆる裏社会だ。街のケーキ屋のパティシエとして穏やかな生活を送っていた早瀬陸(松山ケンイチ)は、2年半も行方不明だった妻・夏海(山口紗弥加)が白骨化遺体で見つかったことで、殺人事件と裏社会の事情に巻き込まれることになってしまう。何者かの策略により殺人事件の容疑者となった陸。警察に追われる彼を救おうとした刑事・儀堂歩(鈴木亮平)の指定した場所に行くと、そこには何者かによって刺された儀堂が。このままでは、2人を殺した罪で死刑になりかねない陸は、裏社会で夏海の後任として資金管理を行っていた幸後一香(戸田恵梨香)の手引きのもと、顔を変えて儀堂になりすます(=リブート)ことに。

夏海と一香は、表向きは経営者でありながら、裏社会のダークバンカーとして資金洗浄を行う合六亘(北村有起哉)の元で働いており、儀堂は合六に警察の情報を流して対価を受け取る悪徳刑事だった。第1話から第3話では、合六の元から消えた現金10億円を巡り、儀堂にリブートした陸や、合六の元で働く悪徳弁護士・海江田勇(酒向芳)が追い詰められる展開となった。

本作には、「裏社会監修」としてバラエティ番組『クレイジージャーニー』(TBS系)などでお馴染みのジャーナリスト・丸山ゴンザレスが参加している。経営者・合六や弁護士・海江田など、表社会で生きる一般人に偽装した裏社会の住人たちの姿や、影に潜む国際的な組織、それぞれの組織に潜入するスパイなど、現実味を感じさせる設定が随所にあり、裏社会の事情を覗き見する背徳感が味わえるのも、監修によるリアリティある設定があってこそだろう。本作は、パティシエなど市民の穏やかな生活の裏側に大きな闇が潜んでいる可能性を、設定から示唆しているのかもしれない。

リブートによる一人二役を見事にこなす鈴木亮平

儀堂になりすます陸を演じる鈴木亮平©TBS
儀堂になりすます陸を演じる鈴木亮平©TBS

リブートして儀堂として生きることになった陸。鈴木亮平は、儀堂と陸を一人二役で演じ、自分が演じている儀堂に対して、正反対の人物・陸が儀堂を無理やり真似るという複雑な芝居を見事にこなしている。

なによりも注目したいのは、鈴木が儀堂と陸を演じるときの「目」の違いだ。第1話冒頭で本物の儀堂を演じた鈴木は、瞳に暗い闇を携えているように見えた。合六に協力しながら、一香や夏海を利用して合六の金を横領する儀堂の悪の一面が、光のない黒目から漏れ出るような印象があった。一方で、陸として儀堂になりすましているとき、その瞳には常に状況への戸惑いの感情が見える。同じ鈴木の目だが、陸の目には儀堂になりすまさなければならない辛さと大きな不安が漂っている。鈴木が、瞳に宿らせる光や感情の違いを使い分けて自然に2役を演じることで、リブートという特殊設定に説得力を生んでいるのだ。

第4話では、陸と儀堂が同じ顔であることを活かし、視聴者をも騙す展開があった。儀堂が死んでいると思い込ませたことを利用したトリックで、筆者は完全に騙された。この展開により、陸vs儀堂、画面だけ見れば鈴木vs鈴木という異様な構図が実現。服装も含めて見た目はほぼ同じなのに、目の開き具合、声の抑揚、顔の筋肉の使い方だけで、別人であると認識させてしまう鈴木の演技力に、恐ろしさすら感じる。

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