メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』亀山陽平監督に取材。工作少年がアニメを描くまで

2026.2.26

#MOVIE

2025年7月から9月にかけて放送・配信され、シリーズでの総再生回数が2.5億回を超す大ヒット作となった『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』。レトロさと新しさを絶妙なバランスでブレンドした魅力的なビジュアル、軽快なテンポのナチュラルな会話、音楽と映像のマッチングなど、作品のどの要素をとっても、とにかく気持ちいい。今作は監督の亀山陽平が、脚本 / キャラクターデザインといった企画のスタート地点から、3DCGモデリングやアニメーション、編集といった実制作まですべてほぼ一人で手掛けている。魅力的な作品世界は亀山の持ち味が存分に発揮された結果だと言えるだろう。

新規パートを加えてシリーズを1本にまとめた劇場版『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』が劇場公開されるにあたり、そんな亀山監督にインタビューすることができた。作品についてはもちろん、監督のクリエイティブのルーツにあるもの、幼少期やアメリカ留学での体験などについても伺っている。また違った角度から、本作を楽しむための手がかりとしてほしい。

「かわいさ」と「リアルさ」のバランスが生む、独特のビジュアルセンス

ー『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』映画化、おめでとうございます。本作はなんと言っても、キャラクターが魅力的ですよね。この独特なビジュアルセンスは、どこから来たものなのでしょう?

亀山:ありがとうございます。ビジュアルを考えるときに一番大事にしているのは、「リアルなもの」と「リアルじゃないもの」のバランスです。ある程度派手さや非日常的な要素がある方が目立つし、新しさもある。そうしたキャッチ力は大事なのですが、あまりにも全てが目新しいと、今度は逆に取り入る隙がなくなって、一切感情移入ができない世界観になってしまう。

だから、たとえば『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』に出てくるキャラクターであれば、体がサイボーグや強化人間といった非人間的な部分もありつつ、服装は割とリアルクローズ寄りのデザインにする。世界観にしても、宇宙空間というシュールな要素はありつつ、乗り物や建て物のデザインにはレトロな、現実でも見かけるような要素が残っている。そんなバランスで、全体をデザインするようにしています。

亀山陽平(かめやま ようへい)
1996年8月16日生まれ。3DCGアニメーション監督。2022年2月、個人制作兼卒業制作のショートアニメーション『ミルキー☆ハイウェイ』をYouTubeで公開したところ、800万回以上の再生回数を記録。その続編として2025年7月から放送・配信された全12話のショートアニメ『銀河特急 ミルキー ☆ サブウェイ』は、YouTubeで総再生数2億回を記録するなど、国内外から注目を集めている。
『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』
銀河道路交通法違反で逮捕された強化人間のチハルとサイボーグのマキナ。同じタイミングで警察に捕まった、強化人間のアカネとカナタ、サイボーグのカートとマックスらクセのあるコンビを集め、警察官・リョーコが全員に課したのは、奉仕活動として惑星間走行列車・通称”ミルキー☆サブウェイ”の清掃をすること。簡単な任務だったはずが、突如暴走し始める”ミルキー☆サブウェイ”!車内で慌てふためくメンバーたち。リョーコも同僚のアサミとともに解決に向けてあれこれするが、やがて一行は大事件に巻き込まれていくことに……!

ー実写的ではないけれども、かといって日本のアニメで主流の路線とも違う。絶妙なバランスのかわいさがあるキャラクターデザインだと思いました。「かわいい」を生み出すためにこだわっていることを教えてください。

亀山:「かわいい」はすごく繊細なバランスから生まれるものなので、一言で表すことは難しいのですが……。まず、リアルにできる部分は、できる限りリアルにするようにしています。たとえばサイボーグであるマキナの顎は思い切り金属らしい質感を出しています。そうすることで、「サイボーグの顔面である」ことが面白さに繋がると思うからです。そうやってリアルにできる部分はとことんリアルにしています。でも、キャラクターの顔すべての質感を全部リアルにさせるかというと、それは気持ち悪くなってしまう可能性が高い。「なんで気持ち悪くなるの?」とあらためて聞かれると、理由を答えられないんですけど、ある程度抽象化させて描くことは、「かわいい」を表現するために意識していることではあります。あとはもう経験ですね。

マキナ / 『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』場面写真

ー作品全体も、いわゆる深夜アニメファンから見て魅力的で、かつ、アニメにそこまで親しんでいない人でも自然と入っていけるような絶妙なバランス感を持っていると感じます。今のお話を踏まえると、これも監督が繊細にバランスを探って、調整して作り出している?

亀山:作風もそうですね。ここにはアメリカへ留学した経験が結構影響していると感じています。子どもの頃からハリウッド映画で育ってきた意識があるんですが、反面、日本のバラエティ番組も好きなんです。日本のバラエティ番組って精巧に作られた、構築されているエンタメなんですよね。台本がしっかりあった上で、収録現場のノウハウや編集の妙がさらに加わって、最終的な番組の面白い形が出来上がっている。アメリカに行ったことで、「あれは日本独自の魅力なんだな」と客観的に思えました。ハリウッド映画とバラエティ番組という、これまで触れてきたものがごった煮になった結果が、『ミルキー☆サブウェイ』になっているんだろうなと思います。

『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』場面写真

マーベル作品にリアルさを感じた理由

ー『ミルキー☆サブウェイ』は亀山監督が脚本、キャラクターデザインから3DCGのモデリング、編集などまで、映像制作に関するほぼすべての工程を一人で手掛けています。そもそも個人制作のショートムービーから始まった企画ですし、監督のクリエイティブに対する気持ちの強さには驚かされるばかりです。子どもの頃から「モノづくり」に対する志向は強かったのでしょうか?

亀山:はい。父親が中学校の技術の教員だったので、昔から実家に工具がいっぱいあったんです。そうしたモノを作りやすい環境にいたこともあって、工作をしょっちゅうやっているような子どもでした。

ー立体物が始まりなんですね。少々意外でした。絵の方は、その頃はあまり?

亀山:そうですね。保育園児の頃から、絵も描くようにはなっていました。絵はどこでも描けるので、小学校に入ると描く機会が増えていった感じです。その頃はアニメをあまり見ていなかったので、既存のキャラを描くようなことはほとんどしていなかったです。ハリウッド映画の影響で、映画の登場人物をそのまま描くわけではないんですが、写実的な人物画をずっと描いていました。

ー「ハリウッド映画で育ってきた」とも先程おっしゃっていましたが、興味を持たれたきっかけはなんだったんですか?

亀山:保育園児のときに見た『ハリー・ポッター』シリーズの影響がだいぶ大きかったです。魔法界の描写を始め、『ハリー・ポッター』シリーズの、特に初期の映像のディティールの作り込みは今見てもすごくて。あの映像にのめり込ませる力は今でも尊敬しています。

ー他にも、ご自身の原体験のように感じているものはありますか?

亀山:大きかったのは、ディズニーランドに行った経験です。やっぱり、世界観の作り込みがすごい。工作好きに繋がりましたし、「立体物を通してその世界観に入り込む」というディズニーランドの考え方には、自分がモノを作るときの発想の仕方に、すごく影響を受けています。「普段と違う世界に入り込む」ということが、とにかく小学生の頃の自分にとっての理想だったんですよね。

小学校生活の後半になってくると、レゴで遊んだりもしたんですけど、その遊び方もお城を建てて、その中で物語を構成して……と、世界観を楽しむ感じだったんです。ゲームとかもあまり得意じゃなかったので、一人でごっこ遊び的なことをずっとやっている、当時としてはちょっと珍しい小学生だったかもしれません。

ー面白いのが、ここまでのお話だと、世界観への関心が一貫して強い。でも監督の作品はキャラクターもとても立っていますよね。キャラクターに関心を持ったきっかけはあったのでしょうか?

亀山:たしかに作品の世界観が好きで、キャラクターに対してフォーカスしたことはあまりなかったですね。キャラクターを意識するようになったのは高校生以降で、きっかけはマーベル映画にはまったことです。最初は単純に「スーパーパワーってかっこいいな」くらいの入口から見始めたんですけど、あのシリーズはキャラクターの描写だったり、掛け合いだったりが魅力的で。シリーズの一番の魅力に、キャラクターの存在があると思うんです。

ー確かにマーベル映画のキャラは、どれも立ってますもんね。

亀山:マーベル作品の何がいいかというと、それぞれのキャラがまず単独で映画の主人公として生きていて、それが最終的に一本の映画の中で掛け合いをするようになることなんですよね。ストーリーの都合でキャラが作られていない。それがとてもリアルだと感じたんです。

特に『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』は、キャラクターの掛け合いでできた映画の究極で、もうとにかく収拾がつかなくなって、ひたすら喧嘩をしている(笑)。単純な「正義と悪」ではなく、それぞれのキャラクターが背負っている事情が重なる、リアルな流れが面白く描けている映画として印象に残っています。実際の人間って、そうじゃないですか。何か物語のために機能しているわけではない。だからより正確に言えば、影響は受けていますけど、「マーベル映画が好き」というよりかは、クロスオーバーものの話の構成が好きなんだと思います。

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS