2025年7月から9月にかけて放送・配信され、シリーズでの総再生回数が2.5億回を超す大ヒット作となった『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』。レトロさと新しさを絶妙なバランスでブレンドした魅力的なビジュアル、軽快なテンポのナチュラルな会話、音楽と映像のマッチングなど、作品のどの要素をとっても、とにかく気持ちいい。今作は監督の亀山陽平が、脚本 / キャラクターデザインといった企画のスタート地点から、3DCGモデリングやアニメーション、編集といった実制作まですべてほぼ一人で手掛けている。魅力的な作品世界は亀山の持ち味が存分に発揮された結果だと言えるだろう。
新規パートを加えてシリーズを1本にまとめた劇場版『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』が劇場公開されるにあたり、そんな亀山監督にインタビューすることができた。作品についてはもちろん、監督のクリエイティブのルーツにあるもの、幼少期やアメリカ留学での体験などについても伺っている。また違った角度から、本作を楽しむための手がかりとしてほしい。
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「かわいさ」と「リアルさ」のバランスが生む、独特のビジュアルセンス
ー『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』映画化、おめでとうございます。本作はなんと言っても、キャラクターが魅力的ですよね。この独特なビジュアルセンスは、どこから来たものなのでしょう?
亀山:ありがとうございます。ビジュアルを考えるときに一番大事にしているのは、「リアルなもの」と「リアルじゃないもの」のバランスです。ある程度派手さや非日常的な要素がある方が目立つし、新しさもある。そうしたキャッチ力は大事なのですが、あまりにも全てが目新しいと、今度は逆に取り入る隙がなくなって、一切感情移入ができない世界観になってしまう。
だから、たとえば『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』に出てくるキャラクターであれば、体がサイボーグや強化人間といった非人間的な部分もありつつ、服装は割とリアルクローズ寄りのデザインにする。世界観にしても、宇宙空間というシュールな要素はありつつ、乗り物や建て物のデザインにはレトロな、現実でも見かけるような要素が残っている。そんなバランスで、全体をデザインするようにしています。

1996年8月16日生まれ。3DCGアニメーション監督。2022年2月、個人制作兼卒業制作のショートアニメーション『ミルキー☆ハイウェイ』をYouTubeで公開したところ、800万回以上の再生回数を記録。その続編として2025年7月から放送・配信された全12話のショートアニメ『銀河特急 ミルキー ☆ サブウェイ』は、YouTubeで総再生数2億回を記録するなど、国内外から注目を集めている。

銀河道路交通法違反で逮捕された強化人間のチハルとサイボーグのマキナ。同じタイミングで警察に捕まった、強化人間のアカネとカナタ、サイボーグのカートとマックスらクセのあるコンビを集め、警察官・リョーコが全員に課したのは、奉仕活動として惑星間走行列車・通称”ミルキー☆サブウェイ”の清掃をすること。簡単な任務だったはずが、突如暴走し始める”ミルキー☆サブウェイ”!車内で慌てふためくメンバーたち。リョーコも同僚のアサミとともに解決に向けてあれこれするが、やがて一行は大事件に巻き込まれていくことに……!
ー実写的ではないけれども、かといって日本のアニメで主流の路線とも違う。絶妙なバランスのかわいさがあるキャラクターデザインだと思いました。「かわいい」を生み出すためにこだわっていることを教えてください。
亀山:「かわいい」はすごく繊細なバランスから生まれるものなので、一言で表すことは難しいのですが……。まず、リアルにできる部分は、できる限りリアルにするようにしています。たとえばサイボーグであるマキナの顎は思い切り金属らしい質感を出しています。そうすることで、「サイボーグの顔面である」ことが面白さに繋がると思うからです。そうやってリアルにできる部分はとことんリアルにしています。でも、キャラクターの顔すべての質感を全部リアルにさせるかというと、それは気持ち悪くなってしまう可能性が高い。「なんで気持ち悪くなるの?」とあらためて聞かれると、理由を答えられないんですけど、ある程度抽象化させて描くことは、「かわいい」を表現するために意識していることではあります。あとはもう経験ですね。

ー作品全体も、いわゆる深夜アニメファンから見て魅力的で、かつ、アニメにそこまで親しんでいない人でも自然と入っていけるような絶妙なバランス感を持っていると感じます。今のお話を踏まえると、これも監督が繊細にバランスを探って、調整して作り出している?
亀山:作風もそうですね。ここにはアメリカへ留学した経験が結構影響していると感じています。子どもの頃からハリウッド映画で育ってきた意識があるんですが、反面、日本のバラエティ番組も好きなんです。日本のバラエティ番組って精巧に作られた、構築されているエンタメなんですよね。台本がしっかりあった上で、収録現場のノウハウや編集の妙がさらに加わって、最終的な番組の面白い形が出来上がっている。アメリカに行ったことで、「あれは日本独自の魅力なんだな」と客観的に思えました。ハリウッド映画とバラエティ番組という、これまで触れてきたものがごった煮になった結果が、『ミルキー☆サブウェイ』になっているんだろうなと思います。
