映画『木挽町のあだ討ち』は、タイトルが示す通り、ひとつの仇討ちの光景から始まる。仇討ち劇と言えば、本編中にも登場する『仮名手本忠臣蔵』や、『曽我物語』が有名だ。いずれも、主君、もしくは親の仇討ち話であり、「侍の鑑」としての美談とされている。
しかしながら、本作の描くところは、「仇を討ててあっぱれ」というわかりやすい武家目線の物語ではない。本作で描かれているのは、江戸の庶民たちの人情、言い換えれば「粋」の世界である。
また、この仇討ちの成功を不審に思うある人物の登場により、物語はミステリーの様相を呈し始める。本作は「人情時代劇ミステリー」という、言わばぜいたくな作品だ。単なる古色蒼然とした仇討ちものと捉えてスルーしてしまうには、あまりにももったいない。『侍タイムスリッパー』や『SHOGUN 将軍』などヒットが続いている時代劇のさらなる起爆剤にもなり得る本作、時代劇に興味がない層にも、ぜひ観てもらいたい。その理由を、本稿で紐解いていきたいと思う。
※本記事には映画本編の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
INDEX
