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人類のスピードの更新が、新しいグルーヴとジャンルを生んできたのではないか
─濱野さんは作品を作る上で明確にリファレンスを置き、文脈を踏まえた曲作りをしているじゃないですか。そうした過去の作品を取り込んだ上で、なおも「戦わない」というスタンスを取るために、どのような点を意識しているのでしょうか?
濱野:前提として、日本のバンドをリファレンスに置かないようにはしていますね。その上で、僕がずっと好きだったのは、何から影響を受けたのか全くわからないような音楽だったんです。
それで10代の頃、そういう人になるためにどうするべきか考えてみたんですよね。多分、それは音楽の聴き方を変えることなんです。どの音がどういうトーンで、どういうリズムで、それがどういう旋律で鳴っていて……その中で「なぜ自分はこれが好きなのか?」というのをずっと考えるんです。
そうすると、その曲をその曲たらしめてる要素がわかる。それを抽出して自分の体とか精神に落とし込んで曲を作ると、新しいものができるんですよね。そういうことをずっとやっています。

─そうしたポイントはバンドに落とし込む際にメンバーとどの程度共有するんですか?
濱野:できるだけ伝えますね。
久富:今回のアルバムではタイム感の話をよくしました。曲を印象付けるグルーヴの間があって、それを意識しました。
濱野:1曲ごとに「乗り物」を決めてね。
─乗り物?
濱野:乗り物の更新って人類のスピードの更新じゃないですか。スピードが更新されるたびに新しいグルーヴが生まれて、ジャンルも生まれてきたと思うんです。カントリーもロカビリーも、馬とかハーレーとか移動のスピード、グルーヴと関係があると思ってて。
─アルバムの1曲目“Get Back”は排気音から始まりますね。
濱野:“Get Back”のイメージとしてはバイクのグルーヴなんです。でも、ギターはケルトチューニング(※)で。それって誰もやってないじゃないですか。
※アイルランドの伝統音楽で使用される変則チューニング
─チューニングはケルト風だけど、世界観やグルーヴは映画の『イージー・ライダー』のようなアメリカの景色が元になっているというか。しかも明確なアンセムですよね。
濱野:スタッフの人たちとシングルにする曲を決めた時、「絶対これでしょ」と言ってもらえました。
─<Get back to the morning>と歌われていますが、どういうイメージだったのでしょうか?
濱野:失った経験から<Get back>と歌ってるんです。失ったことによって人生の天井が見えて、それで苦しむかもしれない。けど、また何にも知らないような朝が来る。だからあの頃の朝を迎えていた自分を取り戻そうという、そういうことです。
