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人々で賑わう公共空間で表現の限界へ。渋谷らしさが光る「待つ」ハチ公を「探す」挑戦
ー今年のプログラムで、特にお二人が注目されているものはなんですか?
宮本:私が注目しているのは、ハチ公前広場でのプロジェクトですね。ハチ公は世界中から人々が集まる象徴的な場所ですが、今回は「待つハチ公」を、参加者がデジタルとフィジカルを組み合わせて「探す」という体験を創り出そうとしています。
久納:クリエイターが表現したいことと、大勢の人が行き交う渋谷の安全ルール。そのバランスをどう取っていくのか。これは、街との橋渡しをしてくれる事務局の方々の助けがあって初めて成立する、非常に際どい実験なんです。
宮本:ハチ公前広場というのは、渋谷の中でも最も安全性が問われる場所のひとつです。いかに作品としての視認性やクオリティを担保しつつ、安全に楽しんでもらえる体験を構築するか。まさに今、最終調整を行っている真っ最中です。

2/13~15 11:00-19:00 渋谷駅ハチ公前広場にて開催
久納:これは「渋谷らしさ」が光るプロジェクトですよね。ハチ公というナラティブを自分たちのクリエイションに取り込む。こういうプロジェクトが実現に向けて動いていること自体が、DIGらしいなと思います。
宮本:元々、渋谷区として「スタートアップのエコシステムを作ろう」という取り組みがあり、そこで挙がってきた課題が「不完全なものを許容する」ということでした。日本人は完璧主義で、少しでも欠けているものがあると「嫌だな」と思ってしまいがちです。でも、それでは新しいイノベーションは生まれない。わからないもの、不完全なものに対して少しだけ寛容になって、一緒に楽しんで見守る。そんな文化を育むことが、『DIG SHIBUYA』の始まりでもあったんです。
久納:イノベーションは最初から完成形として現れるわけではないですからね。その「途中」をみんなで面白がれるかどうか。一人のクリエイターが固めたものを出すのではなく、社会に出してみて、みんなで練り上げながらその意味を考えていく。そういう場でありたいです。

ー観客が参加して初めて、3日間の会期を通じて作品が完成していくようなイメージでしょうか。
宮本:まさにその通りです。それを象徴するのが、今回私たちが力を入れている、公園通りを劇場化するプロジェクト『DIG SHIBUYA THEATRON(テアトロン)』です。建築家の津川恵理(ALTEMY)さんの作品が路上に設置されますが、それは椅子やベンチといった既存の家具とは異なる、捉えどころのない不思議なオブジェです。それを街の人たちがどう使いこなすのか。腰掛けるのか、避けて通るのか、あるいは何か新しい遊びを見つけるのか。その予測不能な反応自体が、このプロジェクトの核になります。

2026年2月14日(土)14時〜17時(予定)。かつて至る所が劇場の街だった「渋谷」を懐かしみ、渋谷のメインストリートである公園通りが、1日限定で「屋外都市劇場=テアトロン」に。交通を一部規制し、都市を鑑賞する場である「テアトロン」を設置することで、街ゆく人々はそのまま観客となり、パフォーマンスや展示を360度から見渡すことができる。そして「街全体が舞台」へと変貌する。
久納:そこを通りかかった人が、いつの間にか「劇場のアクター」に見えてくるような感覚ですね。自分はただの観客として歩いていたつもりなのに、実は舞台の一部になっていた。そんな、日常と非日常の境界が曖昧になる瞬間が生まれることを楽しみにしています。